トピックス


06_ヨーロッパの日本人・・今節は、中田英寿と稲本潤一・・(2006年2月12日、日曜日)

ファイェをセンターにするトリプルボランチの一角で先発した中田英寿(もう一人のボランチパートナーはノーラン)。どんどん「フォーム」を高揚させていると感じます。フォームの定義ですが、物理的なことや心理・精神的なものなど、すべてのファクターを総称した「調子」のこと。

 忠実でクリエイティブな実効ディフェンスを強く意識する姿勢でゲームに入っていく中田英寿。そのこともあるのか、この試合では、立ち上がりから、攻撃でも比較的高い存在感を示せています。まあそれには、ノーランにしてもファイェにしても、イヴァン・カンポやファディガと違い、「そこ」が中心になって大きな(一発勝負に過ぎる?!)ゲームメイクを演出するというタイプじゃないこともありそう・・。だから、よく動く中田にも、シンプルなタイミングで、より頻繁にボールが回ってくるというわけです。

 それこそ、中田が得意とするコンビネーション・イメージ(組織プレーリズム)。前半12分の先制ゴールシーンじゃ、うまいタイミングで押し上げ、フリーでガードナーからのタテパスを受けた中田が、素早く振り向いて送り込んだ「タテへのスペースパス」がキッカケになったし、その数分前には、ダイレクトのパス交換から同じ左サイドのタテスペースへ素晴らしいパスを通したりと、しっかりとチャンスメイクもこなしています。また一発勝負ロングパスや効果的なサイドチェンジパスを飛ばすなど、彼が中心になった大きな展開も頻繁にみられるようになっています。いいね、なかなかの存在感。とはいっても、ボルトンのチーム戦術として、中盤でしっかりと人とボールを動かすような組織コンビネーションを基盤にゲームを演出するというイメージは希薄だけれどね・・。どうも、「トントン&ド〜ン」という単調な仕掛けリズムに陥ったり、個人勝負を全面に押し出し「過ぎる」イメージのボルトンなのですよ。

 そんななかでも中田英寿は、中盤ディフェンスでの、ボールへの忠実な抑え(守備の起点プレー)やカバーリングなどの穴埋めタスクをしっかりとこなしながら、攻撃でのボールの動きをリードする頻度をステップバイステップで高揚させている。さて、アフリカ組が戻ってくるこれから、彼のチャレンジがどのような展開をみせるのか。興味が尽きないところです。

----------------

 さて、稲本潤一。この試合でも高い自由度を与えられました。あっと・・要は、右サイドの上がり気味ハーフという基本ポジションでゲームに入っていったということです。このことについては、前回レポートを参照してください。

 そのレポートで書いたように、前回のゲームでは無為な様子見シーンばかりが目立つなど、その高い自由度をうまく活用できていなかったという印象の方が強かったけれど、この試合(古巣フルアムとのアウェーゲーム)では着実な発展を遂げていると感じさせてくれました。高い守備意識をベースに、攻守にわたって(その目的を達成するための)プレーの実効レベルが向上しているのですよ。決して右サイドに「張り付き過ぎる」ことなく、より自由に動き回って、効果的にボールに絡んでいくのです。

 もっと自由に、そしてもっと柔軟に「仕事を探しつづける姿勢」が大事。戦術的な「ポジショニング&タスク」に気を取られ過ぎたら、確実に「無為な様子見シーン」ばかりが目立ってしまうのも道理ですからね。この試合では、前回の反省がうまく活かされていると感じます。とはいっても、味方とのポジショニングバランスを無視したメチャクチャな動きでは決してない。右サイドゾーンでの、より積極的な守備参加をベースに、縦横無尽に、攻守の目的を達成するために効果的な仕事とポジショニングを探し続ける稲本潤一(プレーイメージの積極的な具現化!)。考えつづけている(イメージ描写作業を絶やさない)からこそ、味方とのポジショニングバランスをうまく取りながら、攻守にわたって効果的にボールに絡んでいけるというわけです。ミスもあるけれど、効果的なボール絡みシーンの頻度が高いから、全体的な印象は(彼自身が体感している内容自体も?!)ポジティブそのものです。

 とはいっても、三点目の失点シーンでは、完全にボールウォッチャーになってしまい、ゴールを決めたラジンスキーの動きをまったく関知せずにフリーで走り込ませてしまうという失態を演じてしまった。稲本は、自分の背後に味方のアルブレヒトセンがいることをイメージしていたのかもしれないけれど、その確認の動作もなかったからね・・。まあ、発展のための学習材料にして欲しい。私が言いたいのは、日本代表での稲本には、ボールがないところでの確実な汗かきマーキング(走り込む相手を最後の最後までマークしつづける等)までも期待されるということです。そんなクリエイティブ守備に対する感覚が「鈍って」きたら大変だと思うのですよ。だからこそ、ウエストブロムでは、彼にセンターハーフをやって欲しいと思うわけです。そのポジションこそが、最終ラインとのマーキング調整(ボール奪取勝負コンビネーション)に対する感覚を鋭く研ぎ澄ませるところですからね。

 それにしてもフルアムはたくさんゴールを決めたよね。ゲーム自体は、決して、こんな点差がつくような内容じゃなかったから、大変に希な「サッカー的現象」を目撃してしまったという印象を持っていた湯浅でした。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]