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06_ジーコジャパン(80)・・うまくペースアップ出来なかった立ち上がり・・そして相変わらずの決定力不足・・(日本vsスコットランド、0-0)・・(2006年5月13日、土曜日)

「スコットランドが、引き気味の体勢からカウンターを狙ってくるのは分かっていた・・」。ジーコ監督が、記者会見でそう言っていました。ということで、この試合については、完璧にスコットランドの術中にはまった立ち上がりの23分間という「現象」を最初のテーマにしましょう。

 要は、「分かっていたならば、選手たちに、何らかの具体的な対策イメージを与えておかなければならなかったのではありませんか・・? 今日の試合は、キリンカップ優勝を目指して、スコットランドに3点差以上で勝利することだったんでしょう・・?!」という疑問です。スコットランドは、9人で守り、そこから素早くタテへ攻め上がってくる。それも、サイドからのクロスという明確なイメージをベースにして・・。だから、中央ゾーンでのフィニッシャーが、スペースをうまく使えるのも道理だよね。クロスを待つスコットランド選手が、最後のタイミングで何らかの決定的な動きを入れるなど、明確に「スポット勝負」をイメージしていたからネ。一度バックステップし、そこから日本選手の「眼前スペース」へ身体一つ押し入れることで勝負したり、最初から全力でニアポストスペースへ決定的奪取を仕掛けたり。まさに、イメージシンクロ最終(ピンポイント)勝負。それに対して、日本のクロス攻撃では、センタープレイヤー達に、まったくといっていいほど動きがなかった。あっと・・そのテーマは、後で。

 とにかく、効果的なサッカーを展開するスコットランドに対し、立ち上がり23分間の日本代表は、まさに「アタマが空っぽ状態のサッカー」なのですよ。ボールを持っても、リスキーなタテパスを入れるのではなく、ポゼッションの(逃げの)ヨコパスをつないで足を止めちゃう。そして徐々に、ボールのないところでの動きが鈍重になることで、組織プレーの(人とボールの動きの)ダイナミズムが減退していく。もちろんそれは、スコットランド守備ブロックの思うつぼ。何せ、彼らの「眼前で」、ヨコパスをつないだり、ミエミエのタテパスを鈍重なタイミングで送り込むという愚行を繰り返す日本代表なんだからネ。

 「いい加減にしろよ・・相手が守備ブロックを固めてくることは分かり切っていたんだから、アーリークロスを決定的スペースへ送り込むとか、ロングシュートをぶちかますとか、仕掛けに変化をつけなきゃ、この寸詰まり状況を打開することなんてできるはずがない・・」なんて、とにかくアタマにきていた湯浅だったのです。そして、そんなタイミングで、加地のスーパードリブル&鬼神のロングシュートが飛び出したわけです。凄かったよネ。思わず、「それだ!!」なんて声が出ちゃいましたよ。

 ドリブル勝負から思い切りよいキャノンシュートを放った加地。彼もまた、日本の寸詰まり攻撃に対してアタマにきていたはず。こんなんじゃダメだ・・オレが何とかしてやる!! 彼は、新天地ガンバでも、どんどんと発展しています。やはり環境を変えることも、ステップアップのためには必要だよね。もちろん、逆に「それ」がネガティブに作用するケースも多いわけだけれど・・。まあ、結局最後は、本人のインテリジェンスベースの自覚次第ということです。加地は、フォーバックでも、しっかりとオーバーラップを魅せていましたよ。もちろん、福西の効果的なバックアップがあってこそだけれどネ・・。

 とにかく日本代表は、加地の怒りのロングシュートという「刺激」によって、やっと「仕掛けマインド」が覚醒していくのですよ。そんな、マインド・デヴェロップメント(意識の活性化)プロセスを体感しながら、「だらしないね・・ホントに・・もっと、ジェネラルに効果が発揮されるようなシンプルな刺激を繰り出せないものかネ・・なんて思っていた次第。別に斜に構えているわけじゃないけれど、とにかく「そこ」までに、あまりに長い時間が掛かりすぎたと不満タラタラの湯浅でしたからね。

 刺激・・。例えば、「何やってんだ!・・もっと闘え!・・もっと走れ!」といった叱咤だけじゃなく(怒鳴った本人がまず率先して闘わざるを得なくなるから、セルフモティベーションの変形?!)、一目見ただけでチームメイト達が触発されるような爆発的なリスクチャレンジプレーとか、もっともっと、チーム内での主体的な自己主張がぶつかり合うような雰囲気を醸成しなければならないと思うのですよ。そう、常に「緊張の剣が峰」を渡りつづけて成功したフィリップ・トルシエ時代の日本代表のようにネ・・。

 そして活性化した日本代表は、ぬるま湯状態でボールをキープするのではなく、ボールを持ったら常に前へ仕掛けていくようになります。それまで、後方でパスを受け、それをこねくり回すことでベースダウンさせていた小野伸二も、シンプルなタイミングで、リスキーなタテパスをバンバン繰り出すようになったしね。そして小野を中心に、危険な仕掛けがつづき、小笠原や久保が、可能性を感じさせるシュートを放つ。そのハイライトが、前半43分に小野が魅せたトリッキーなボールコントロールとシュートでした。誰もがゴールを信じて疑わなかったシーン。いや、素晴らしかった。

 また後半7分にも、小野からの仕掛けのタテ(スルー)パスを受けた遠藤が、そのままでドリブルで突破してグラウンダーのラストクロスを送り込むというチャンスメイクシーンがありました。たぶんそれは、前述した小野のトリッキーシュートと並び、この試合でもっとも大きな可能性を感じさせてくれたチャンスでしたね。

 全体的な印象としては、たしかにゲームを牛耳ってはいるけれど、最終勝負シーンでの「確信度」は相変わらず低いと言わざるを得なかった日本代表。いくらチャンスになりかけても、それが絶対に「ゴールにつながる」というイメージが湧いてこないのですよ。決定力という魔物との対峙・・。それこそが「世界との最後の僅差」と呼ばれるモノの本質だったりして・・。
 さてこれからの日本代表は、メンバー発表、国内合宿、そして決戦の地での合宿と、最終準備としてのドイツ戦、マルタ戦・・ってなスケジュールになります。私は、20日にはドイツへ行く予定なのですが、その前にやることが山積み。アタマが痛い。

 



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