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06_男女の全日本大学選手権決勝・・レベルなりの戦術的見所があったから軽くレポートしておくことにします・・(2006年1月15日、日曜日)

全日本大学選手権決勝の第一試合は、東京女子体育大学と早稲田大学との間で争われた女子の決勝です。「2-1」で早稲田が初優勝を遂げたこの勝負マッチのテーマは、戦術的な意図と意志という勝因。要は、優勝した早稲田が誇示しつづけた、チーム一体となった攻守にわたる組織プレーのことです。

 まず何といってもディフェンス。チェイス&チェック(守備の起点プレー)、その周りで展開されるマーキング、インターセプト狙い、協力プレスへのアクション等々、ボールを奪い返す戦術プレーが有機的に連鎖しつづけます。要は、ボール絡みのプレーとボールがないところでの忠実ディフェンスが非常に効果的にリンクしつづけたということです。そんな高い守備意識が、次の攻撃でポジティブに機能しないはずがない。要は、早稲田の方が、格段にボールがないところでの動き(フリーランニング・・パスレシーブアクション)が忠実で、勢いがあったということです。だからこそ、攻撃でうまくスペースを活用できた。スペース活用の量と質こそが「コレクティブサッカー(組織サッカー)」の醍醐味ですからね。私は舌鼓を打っていましたよ。対する東京女子体育大学の場合は、個々のプレーがうまく連携しない。局面では高いレベルを感じさせてくれるのだけれど、そんな個々のプレーがブツ切りだから「シナジー効果(相乗効果)」を発揮させられないといったところでしょうかネ。

 それでもサッカーだからね、実際の勝負プロセスが、そんな「実質的なサッカー内容」と高い確率で同期するわけではないことは皆さんもご存じの通りです。何度も、スペースをうまく活用し、両サイドからのクロスやスルーパスなどを駆使した中央突破で美しいチャンスを作り出す早稲田。でもそれがゴールに結びつかない。対する東京女子体育大学は、たまに繰り出すカウンターが決まりかけたり、ロングシュートがバーを直撃したりする。そんなシーンを観ながら、「まあ、これがサッカーっちゅうことだよな・・全体的なサッカーレベルが低いこともあって、最終勝負シーンをゴールに結びつける確立はかなり減退するということか・・うまくいきそうな仕掛けのプレーでも、最後はパワーで抑えられてしまうしな・・そんな早稲田に対して、東京女子体育大学は、大味だけれど、チャンスメイクという視点では互角に近い・・これは、例によって、内容と結果が乖離するという低レベルサッカーの典型マッチになるのかもしれない・・」なんて、ちょっと気落ちしていた湯浅なのですよ。でも最後は、延長PKで早稲田が逃げ切ります。そんな結果に、ちょっと胸をなで下ろしていた湯浅でした。

 さて駒澤大学と順天堂大学が激突した男子決勝。まあ、全体的なレベルは、「J2の相似小型」といったところですかね。全体的なゲーム内容も、人数をかけて組織的に仕掛けるというリスクチャレンジが目立たない(そして守備を固める)という典型的なファイナルマッチということになりました。そんなこともあって、一発ロングパスが多く飛び交いましたね。それがうまいキッカケ作りになったらサポートしよう・・ってなイメージ。もちろん何人かの選手たちは、確実に「上のレベル」でも通用するパフォーマンスを魅せてくれましたがネ・・。

 さてこの試合でのポイント。それは、何といっても前半43分の退場劇とその後のゲーム展開でしょう。優勝候補である駒澤大学の選手が二枚目のイエローカードを受けて退場になったのですよ。これ以上ないという落胆の表情を浮かべてグラウンドを後にするその選手を見ながら、誰もが「流れは順天堂に傾いた」と思ったに違いありません。でも実際は・・。

 私は、後半の立ち上がりの展開を観ながら自分の目を疑っていましたよ。数的に優位の順天堂が、まったくそのアドバンテージを活用できていない・・いや、それを活用しようとする意志そのものが感じられないのですからね。逆にそのことが心理的にネガティブに作用しているとまで感じられましたよ(全体的な気の緩みと、守備での譲り合いといったイージーマインド等々)。

 私は、数的に優位になったら、まず何といっても、少なくとも一人のミッドフィールダーに、「もっと積極的に前でボール奪取勝負を仕掛ける」ことを指示します。もちろん強烈な刺激を伴った指示を「ぶつける」のですよ。そんな「刺激」がなければ、その指示が実際の行動に現れることは決してありませんからね。そして同時に、中盤のバランサー(多くはインテリジェントリーダー)に対して、チーム全体の前へのエネルギーが安定するまで「より気をつけて前後のバランス取るように」と指示するのです。選手たちのチーム内タスクに応じて指示内容を変えるというバランス感覚・・っちゅうわけです。だからこそ、監督の意志をグラウンド上に投影するエクステンションハンドとしての「チームリーダー」を育てることが監督の大事な仕事なのです。

 さて、数的に優位に立ったチームは、より前でディフェンス勝負を仕掛けていくべきだという視点ですが、その骨子は、ボールを奪い返したら、「そこ」から攻撃が始まるという事実にあります。当然、仕掛けの人数は増えるし、勢いも増すというわけです。だからこそ「積極的に前で勝負しろ!」というイメージを与えるのですよ。要は、数的に優位なチームは、その優位性を、実際のゲーム内容に反映させるためには、まず自ら「仕掛けていく」ことが必要になるということです。もちろん「前へ仕掛けていく」のと同時に、数的に優位だからこそ、ボールを奪われた後のディフェンス参加に対する意識をより高揚させる必要もありますがね。それがあってはじめて、数的に優位な展開を、自分たち主体で活用できるというわけです。

 でも順天堂は、やり方をまったく変えなかった(変えることが出来なかった?!)。駒澤大学の攻めが2人しかいないにもかかわらず、最終守備ブロックに「6人」残っているなんていうバカげたシーンを何度目撃したことか。そして人数がたくさんいるからこその「イージーゴーイングマインド」がチームを蝕んでいく・・。駒澤大学が挙げた二点目のシーンは、まさにその典型でしたよ。順天堂のディフェンダーがミスをしてボールを奪われるかもしれないのに、周りの4人の順天堂ディフェンダーたちは、足を止めた高みの見物ですからネ。

 まあ、駒澤大学の勝利は、さまざまな視点で「順当」だったということです。ということで、男女の決勝は、先日の高校選手権の決勝と同様に、両マッチともに「内容と結果」が一致するという精神衛生上好ましいストーリーに収まったという次第でした。

 さてこれから、ヨーロッパの日本人のビデオを見はじめることにします。中村俊輔、中田英寿、そして稲本潤一。アップは明日の月曜日ですかネ。




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