トピックス


2006_ワールドカップ日記・・様々な(ポジネガの)ポイントはあったけれど、全体的には日本にとって大きな自信ファクターになったはず(ドイツ対日本、2-2)・・(2006年5月30日、火曜日)

フ〜〜ッ。いまやっとホテルに到着。2500時を回ったところです。試合が終わり、監督会見が終了したのが2330時。その後、友人の著名ドイツ人フリーランスジャーナリスト、グレゴール・デリックスと話し込み、そして、後藤健生さんなど日本人ジャーナリストの方々を乗せてケルンへ向かう途中でラジオの朝番組でしゃべったりなどしていた次第なのです(アウトバーンのパーキングエリアにクルマを止めて携帯電話でレポート)。

 ということで、この試合については、例によって、ランダムな短い文章を書き継ぐっちゅう形式にします。その方が、アタマが疲れないですからね。まあ、読みにくいかもしれないけれど、ご容赦。でもまず、グレゴール・デリックスのコメントから紹介しましょう。

 「日本は、戦術的に素晴らしいサッカーを展開したと思うよ・・特に、宮本が良かった・・危ないところに常にいて効果的なカバーリングをしていた・・中村俊輔のクリエイティブプレーも良かった・・トーマス・ロシツキー(チェコ代表のスター中盤選手)のようなプレーを展開したと思うよ・・もちろん中田英寿も守備的ハーフとして素晴らしいプレーを魅せつづけた・・また川口の飛び出しも良かった・・でもこの試合では、とにかく高原が最高の出来だったよな・・ブンデスリーガじゃ消化不良だったから・・この試合じゃ、そこでは表現できなかった決定力を見せつけたということだよな・・」。

 そこまで聞いて、こんな質問をしてみました。「ところで他のドイツ人ジャーナリスト連中の反応はどうだった?」。それに対してグレゴールは、間髪を入れずに「そりゃ、ショッキングな出来事だったよな・・ヤツら、口々に、日本代表のハイレベルなサッカーに対して驚きの声を上げていたよ・・とにかくヤツらは、日本がこれほどやるとは思っていなかったのさ・・」。ところで、グレゴール・デリックスとの「The 対談」の記事は「こちら」をご参照あれ。

 さてここからは、印象コンテンツをランダムに書き継ぎますので・・。

 この試合には、いくつかのポイントがあった・・まず第一が、(日本を甘く見ている)ドイツが、美しく勝利しようとしたこと・・人とボールを動かすなかで決定的スペースを突いていこうというクリエイティブなサッカーをイメージするドイツ・・そう、数日前のルクセンブルク戦のように・・でも日本は、やっぱり、ルクセンブルクの比ではなかった・・素早く、広くボールを動かしながらスルーパスで決定的スペースを突こうとするドイツ・・でも、日本の守備ブロックは甘くない・・ボールがないところでの勝負所を「正確にイメージ」しつづける日本選手たち・・そのイメージが有機的に連鎖しつづける・・だから、ドイツの中央突破は、ことごとく抑えられてしまう・・そして徐々に、ドイツのサッカーが停滞していく・・たしかに押してはいるけれど、仕掛けの勢いが殺がれ、実効レベルも減退していく・・

 ・・そんな流れのなかで、日本が、カウンターから決定機を作り出す・・前半13分のカウンターシーン・・最後は、後方から全力疾走で抜け出してパスを受け、完璧なフリーシュートを放った中田英寿・・レーマンの経験豊富なセービングで、かろうじて弾かれてしまったけれど、まさに中田英寿のリスクチャレンジのイメージが実を結んだシュートチャンスだった・・その後の16分、カウンターから、今度は中村、柳沢とボールがわたり、最後はダイレクトシュート・・これもまた決定的なカタチだった・・押してはいるけれど、チャンスを作り出せずに停滞サッカーに陥っていくドイツ・・それに対し、守備での安定によって確信レベルを深めた日本代表が、元気なカウンターを仕掛けていく・・そんな構図がつづく・・

 ・・とにかく、中田英寿の存在感が光り輝いている・・リスクを恐れずに極限まで闘う姿勢を前面押し出す中田・・ミヒャエル・バラックやフリングスといったインターナショナルクラス選手たちとの競り合いシーンが、中田英寿のクオリティーの高さを証明していた・・彼が提示しつづける、リスクチャレンジ志向を絶対的なベースにした「バランス感覚」こそが、今大会に臨む日本代表のチーム戦術的な(志向性の)基盤になるべき・・

 そんな立派なサッカーを展開していた日本だけれど、前半21分には、バラックに決定的チャンスを与えてしまう・・このシーンでは、中村俊輔がマークに付き切れなかった・・また、左からの高いクロスボールを競り合ったクローゼと中沢だったけれど、最後はクローゼが「アタマ一つ」勝ってしまう・・そのシーンには、まさに鳥肌が立った・・これこそが世界の高さなのだ・・そして41分、右サイドで、シュナイダーとクローゼ(だったと思うけれど)による単純ワンツーで、アレックスが置き去りにされて決定的ピンチを迎えるといったシーンもあった・・腹が立った・・でも、それによってアレックスは学習し、もう二度と「ぬるま湯マーク」はしなくなった(後半での彼のマーキングは何倍も忠実でダイナミックなモノになった!)・・また前半ロスタイムには、坪井のマークが甘く、ドリブルで突っかけるシュヴァインシュタイガーから、クローゼ(ポドルスキーだったかも)への決定的タテパスを通され、シュートまで行かれてしまう・・

 ・・これらのピンチのシーンを観ながら、私はこんなことを思っていた・・こんな立派なサッカーが出来ているのに、一瞬の気の緩みが墓穴を掘ってしまう(まあツキで逃れたけれど)・・その「勝負の構図」が分かっているか・・それこそが「勝者のメンタリティー」の絶対的な基盤なのだ・・こんな良いサッカーができているのに、結局は惜敗・・もうそんなコトは観たくもない・・とにかく、それもまた世界との「僅差」の本質の一つなのだ・・

 ・・後半も同じような展開がつづく・・押し上げるドイツ・・カウンターでチャンスを作り出す日本・・そのなかで生まれた先制ゴール・・後半11分・・素晴らしいスルーパスが通り、高原が落ち着いて先制ゴールを決める・・相手が世界のGKレーマンだったから、大変な自信になったことだろう・・そこで、代わったばかりのノヴォトニーがオフサイドをクレームしていたけれど、まさにラインコントロールのミスだった・・そして、高原の個人技が光り輝いた素晴らしい二点目・・「あの」ドイツに、それも彼らのホームで「0-2」というリードを奪う・・素晴らしい・・とにかくここからは、このまま勝ち切れるかというのが唯一のテーマになる・・でも結局は・・

 ・・ホームで、それも日本を相手に「0-2」のリードを許す・・それはドイツチームにとっては屈辱以外の何ものでもない・・前への勢いが倍加するドイツ・・ただここで、ちょっとドイツの仕掛けの流れが変わってくる・・覚醒したドイツが、思い出したように、シンプルな仕掛けもミックスしはじめたのだ・・そう、ハイボール・・ドイツが挙げた二点ともセットプレーからだったけれど、とにかく、その瞬間の迫力は、まさに世界一だった・・そのシーンを観ながら、やはり日本は、ハイボール対策をもっと徹底しなければならないと思った・・

 そのことに対してジーコも、「とにかく流れのなかでハイボールを上げさせないようにすることと、ペナルティー周辺ではファールをしないというテーマをより徹底させなければ・・」と言っていた・・まあ、とはいっても、やはり上げられてしまう・・だからこそ、なかでの対応イメージの強化が重要になってくる・・そう、徹底したイメージトレーニング・・たしかにオーストラリアのクロス攻撃は、ドイツほどの迫力はない・・それでも・・

 ・・さて、同点・・ただ、ここから日本が、この試合のなかでしっかりと学習し成長したところを魅せてくれた・・彼らが勝ち越しゴールを奪いに、果敢に攻めはじめたのだ・・そしてゲームが、ガチンコ勝負といった様相を呈してくる・・素晴らしい拮抗マッチ・・そんなゲーム展開のなかで、日本が、しっかりとチャンスを作り出したのだ・・

 ・・後半37分・・中田が放ったスルーパスからの大黒のシュート・・後半40分・・右サイドで中村が「魔法」プレーから逆ポストスペースへ正確なクロスを送り込む・・そして中田のヘディングでの折り返し・・最後は、例によって大黒が突っ込んでいた・・素晴らしい・・その時間帯こそ、このゲームのなかで、もっとも貴重な学習コンテンツだったに違いない・・

 ・・ところで、ドイツの守備ブロックは、ちょっと「間スペース」を突かれ過ぎ・・ユルゲン・クリンズマン監督も、「たしかにそうだ・・ちょっとポジショニングのミスが目立ちすぎた・・前へ重心が掛かりすぎていたという側面もあるし、攻撃から守備への切り替えが遅れすぎたという側面もある・・」と反省しきり・・

 ポイントはそんなところだけれど、とにかくこの試合は、日本代表にとって素晴らしい学習機会になったはずです。守備の安定とリスクチャレンジという背反するテーマに関する「バランス感覚」を確認できたという意味でも、貴重なテストマッチだったに違いない。オーストラリア戦への期待は高まるけれど、やはりハイボールの対処という不安はぬぐえなかったですよね。たしかにドイツのクロス攻撃は世界一の迫力と実効レベルではあるけれど、その攻撃に対して、何度も「同じように」押され気味だったという事実こそが私を不安にさせるのですよ。そこに、何らかの進歩が感じられなかったことに不安がつのるのですよ。

 最後にポイントを整理しておきましょう。一つは、ドイツのアロガントなプレー姿勢と、それをしっかりと安定して受け止め、蜂の一刺しを何度も繰り出していった日本。二つめは、日本が、その仕掛けを実際のゴールにつなげたこと(高原のブレイクスルー!?)。三つ目が、ドイツの吹っ切れたハイボール攻撃と、日本の対処の甘さ。そして四つ目が、同点になってからの、確信レベルの深化を感じさせる(一つのゲームのなかでの成長!)日本代表の、勝負への積極的な仕掛け姿勢。個人に関しては、グレゴールの意見にアグリーでした。ということで、今日はここまでにします。まだまだポイントはあるので、気が向いたらまた書きます。では・・。

 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]