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2006_ワールドカップ日記・・クロアチアとオーストラリア・・(2006年6月8日、木曜日)

クロアチアは、このスペインとのテストマッチでベストメンバーを組んだらしい。最終ラインは、ロベルト・コバチとシムニッチのセンターバックコンビに、右にシミッチ、左にバビッチが入る。トゥドールとニコ・コバチの守備的ハーフコンビ。イェルコ・レコが右サイドの上がり目ハーフ。そしてプルショ、クラスニッチ、ニコ・クラニチャールが最前線コンビになる。

 この試合でも、ニコ・クラニチャールのパッシブな活動性ばかりが目立ちつづけます。守備(汗かきの起点プレー)をしない。攻撃でもボールがないところでの動きがいい加減。コンビネーションをやろうにも、パスを出したら足を止めてボールの行方を目で追うんだからね、もうなにをかいわんやです。とはいっても、ボールを持ったら才能の片鱗を感じさせてくれる。才能は一流。でも組織プレーに対するイメージのレベルは高くはありません。

 まあ日本にとっては、基本的には、彼が出場してくれた方がチャンスが増えるということなんだけれど、とはいっても、たまに、本当に希に、ボールがないとろでの鋭い動きがツボにはまることがあるんですよ。この試合でも、一本だけ、ファーサイドのスペースへ鋭く動いてヘディングシュートを放ったシーンがあった。その動きはもちろん感覚ベースだけれど、本当に才能の高さを感じさせてくれました。

 まあ、しっかりとマークしていればまったく問題ないし、彼がいることで、クロアチア全体の守備パフォーマンスや仕掛けの広がりは確実に制限されることも事実。とはいっても、チームメイトたちの脳裏に、「彼のプレースタイル」に対するイメージも確実にインプットされているだろうからコトは複雑。プルショなどは、ニコ・クラニチャールが動かないことを大前提に、その「邪魔な石」をうまく活用してフリーランニングしちゃったりするからね。もちろんニコ・クラニチャールがボールを持ったら危険だけれど、しっかりとマークし、彼がボールを持ったときには確実なプレスが掛かっていれば、まったく問題ない。

 それにしてもクロアチアの守備ブロックは堅い。とにかく、守備的ハーフのトゥドールとニコ・コバチ、そしてイェルコ・レコによる中盤での「汗かき起点プレー」が素晴らしく機能していると感じますよ。それに、最終ラインも強い。それぞれの選手たちの1対1での勝負強さは言うまでもないけれど、そのバックボーンに、「予測ポジショニング」がうまく機能していることがある。だからこそ、良い体勢でボール奪取勝負に入っていけるのです。そして、その「予測ポジショニング」をうまく機能させているのが、中盤での「汗かき起点プレー」。要は、前後左右のディフェンスイメージが、しっかりと有機的に連鎖しつづけているということです。何かまた一般的な表現になってしまった。でも、やはり基本が一番大事だからね。

 堅い守備ブロックのクロアチア。それに対しては、「あの」スペインでさえもほとんどチャンスらしいチャンスを作り出せない。クロアチアが一点リードした状態での彼らの守備に目を凝らしていたのですが、とにかく一人ひとりが、まったく気持ちに空白ができることなく(まったくボールウォッチャーになど陥ることなく!)、流れのなかで効果的な仕事をこなしていくのです。それも、スペインは、二人目、三人目がしっかりと動いているにもかかわらず、まったくフリーな選手が出てこない(クロアチア選手たちの、ボールがないところでの忠実なマーキング!)。いや、本当に素晴らしい。

 結局ロスタイムのフェルナンド・トーレスのゴールで負けちゃったけれど、クロアチアは、確実に結果以上の「内容」を誇示していたと思っていた湯浅なのです。さて次はオーストラリア。

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 あっ・・と、昨日のコラムで、オーストラリアがルクセンブルクと対戦するなどと間違ったことを書いてしまいました。スミマセン、本当はリヒテンシュタインでした。ということで、オーストラリアについても簡単にレポートしておきます。

 この試合での中心テーマは、何といってもキューウェルの復帰。結論からすれば、ケガ明けで、まったくまともなプレーが出来ていなかったということになります。もちろん局面では「光る」けれど、その輝きが持続しない。ボールがないところでは、しっかりとしたイメージで動くけれど、ボールと相手が絡んできたときは、すぐに「逃げパス」を出すのですよ。まあ仕方ないよね。彼も、ワールドカップ初戦で先発を張りたいだろうからね。でも、この試合でのプレー姿勢を観ていたら、本当に日本戦の先発で使えるのか疑問です。もちろん「そこ」で完全復活を果たすのかもしれないけれどね。

 とにかく彼がいれば、最前線での「仕掛けの変化」に、ドリブル勝負やタメなどの個人勝負ファクターもミックスさせていけるから大きい。ヒディンクの判断を、興味深く観察したいと思います。もちろん十分な情報がなければ、例によっての仮説になってしまうけれど、ただこの日のプレー内容というバックグラウンド要素はあるから、より深く踏み込んだ次元で仮説を立てることができる。さて・・

 この試合でもう一つ気づいたポイントがあります。それは、オーストラリア守備ブロックの不安定さ。それには、私がもっとも警戒する「オーストラリアのボランチ」グレッラが最後まで出場しなかたったことが大きく影響していると思います。彼がいれば、最終ラインも、ボールの奪い処についてより具体的で効果的なイメージを描くことができたはずですからね。この試合ではスココ(後半になってからはエマートンも)守備的ハーフのポジションに入ったけれど、どうも相手の攻撃を「上手く」コントロールできていたとは言い難いと感じていました。要は、「守備の起点の演出」と「次の攻撃でのゲームメイク」の両方で物足りなさを感じていたのですよ。

 とはいっても、この試合を通し、オーストラリア守備ブロックの弱点がより鮮明に見えてきたことも事実です。グレッラという中盤守備のリーダーがいなかったことで、逆に、弱点に関する分析が強化された!? まあ、そういうことなんだろうね。それは、素早く、広い人とボールの動きに対して、彼らの(イメージ的な)対処が十分に機能しないということです。要は、素早く、そして広くボールを動かせば、より効果的に(組織パスによって)決定的スペースを突いていける可能性が高まるということです。オーストラリアにとっては、日本が仕掛ける素早い組織プレーリズムは、かなりハイレベルなモノのはずですからね。それに日本人の「俊敏さ」も、彼らにとっては脅威だと思いますよ。日本でプレーしていたポポビッチは、そのことをよく知っているはずです。

 まあ、とはいっても、やはり、シンプルにサイドへ開いてクロスを送り込むという仕掛けを繰り返すオーストラリアの攻撃は脅威ですよ。そこには、チーム内での確固たるイメージの共有があると感じます。特に、キューウェルに代わって出場したケネディー(勝ち越しゴールを決めた)のヘディングシュートは次元を超えていましたよ。とにかく「高い」、とにかく「タイミング」が良い。まさにワールドクラスです。また、アロイージの高さや、ビドゥーカのポストプレーでの二列目、三列目選手たちの飛び出しも脅威です。

 とにかく日本代表は、様々な視点の「イメージトレーニング」を徹底しなければいけません。ビジュアル・トレーニングの鬼、ヒディングを超えるくらいにね。
 



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