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- 2006_ワールドカップ日記・・このドラマチックな勝利には、どんな意味があるのだろうか(ドイツ対ポーランド、1-0)・・(2006年6月14日、水曜日)
- それにしても、ものすごいポーランドの気迫でした。最後の最後までまったく衰えない忠実でダイナミックなディフェンス。そして攻撃では、スペースへ飛び出していくボールがないところでの全力プレー。もちろんポーランドは、第一戦を落としていることで後がないということもあるけれど、その吹っ切れた全力サッカーは、感動的でさえありました。テストマッチでの惨憺たる内容からは、まったく想像も出来ないイメチェン。やはりテストマッチと本番はまったく別物だということです。
たしかにポーランドは負けたし、後半にはシュートチャンスの量と質でもドイツに圧倒されたけれど、それでも、この試合でボーランドが魅せた「限界まで闘う強烈な意志」には、サッカーの本質的な魅力が内包されていると感じていた湯浅だったのです。限界まで闘う強烈な意志。それは、攻守にわたる「主体的な意図」が詰め込まれた全力ダッシュとしてグラウンド上に現れてくる。私は、この試合でポーランド選手たちが魅せた本物の闘う意志に対して心からの拍手を送っていました。
そんな気迫のサッカーに、立ち上がりのドイツは、うまくゲームを組み立てることが出来ません。ボールは動くけれど、抜かれても、抜かれても全力で追い掛けてくるポーランド選手たちのダイナミックなディフェンスに、ドイツのプレッシングサッカーが完全に呑み込まれてしまったのですよ。最初のシュートもポーランドに打たれてしまったし。さて・・
とはいっても、たしかに嫌な立ち上がりだったけれど、徐々にドイツも自分たちのペースを取り戻していくのです。ポーランドの徹底ディフェンスに押され気味だから、そんなにスムーズに展開できるわけではないけれど、シンプルにボールをつなぐことで、徐々にスペースを活用できるようになっていくドイツ。
そしてクローゼが、バラックのスルーパスに抜け出して決定的なシュートを打ったり、ラームからのクロスにフリーのヘディングシュートを放ったり。また前半のロスタイムには、ラームとシュヴァインシュタイガーのコンビネーションから抜け出したポドルスキーが、まさに100パーセントというシュートチャンスを得たというシーンもあった。ポドルスキーは、それ以外にも、ラームからのタテパスを受け、マークの相手を背負いながらも素早く振り向いて強烈なシュートを打ったというシーンもありました。才能にあふれるポドルスキーは、もしかしたらこの大会で本物の「ブレイクスルー」を果たすかもしれない。期待しましょう。
そして後半。たしかに何本かの良いチャンスは作り出したけれど、オドンコールとノイビルが入ってからは、チャンスの量と質も倍増という展開になっていきます。ユルゲン・クリンズマン監督の采配がピタリとはまったということです。結局、この二人が決勝ゴールを演出したのだからね。またオドンコールが入ったことで、シュナイダーが右サイドバックへ下がったのだけれど、そこから、殊のほか実効レベルの高いパスが前線へ送り込まれていましたよ。彼の右サイドバックについてはネガティブな評価の方が先行しているようだけれど、私は決してそんなことはないと思っています。
ただ、ラームがペナルティーエリア内へ切れ込んで放ったフリーシュートシーンや、二回もバーにブチ当たるシーンが飛び出したりするなど、この日のドイツは、本当にゴールから見放されていたのですよ。これは今日はダメかもしれない・・前半から、あれほどの決定的チャンスを作り出しているのに決められないのだから・・彼等はシュート決定力の高さでは定評があるのに・・とにかくツキに見放されている・・。
そしてロスタイム。もうほとんど諦めかけていたところに歓喜の瞬間が訪れるのです。シュナイダーから、右サイドのオドンコールの前方スペースにタテパスが出る・・パスを受けるポイントには三人のポーランド選手が全力で寄せてきている・・そして、そんな状況をポーランドゴール前で観察していたノイビルが、オドンコールがボールの触る直前に「爆発」する・・彼をマークする二人のポーランド選手がボールウォッチャーになった瞬間を狙い、ポーランドGKの眼前スペースへ全力ダッシュをスタートした・・そして、ここしかないというポイントへ向けて、オドンコールから、浮き球の鋭いラストクロスが飛んだ・・ってな具合。
この決勝ゴールのシーンでは、オドンコールがボールを止めたら確実に潰されるという「状況」がキーポイントでした。だからこそ、ノイビルは、ダイレクトで送り込まれるクロスをイメージして飛び出したのですよ。そしてそれが、オドンコールからのラストクロスを「呼び込んだ」。まさに、有機的なイメージ連鎖といったところ。勝負はボールがないとろこで決まるってな具合です。また、スペースをうまく活用できた方が勝利を収める・・とも言える。フムフム・・
この試合でのドイツの守備ラインは、早めの「ブレイク」でマンマークに移行していました。また、フリングスとバラックによる、相手攻撃の中盤での「抑え」もうまく機能していたしね。やはり、フラットライン守備では、中盤でのディフェンスが「全て」なのですよ。そこが機能してはじめて、最終ラインも、効果的な勝負イメージを固められますからね。
さて、劇的な勝利を収めたドイツ代表。スタジアムは、これ以上ないという興奮に包まれていました。プレスセンターでは、パブリックビューイングでの興奮を伝えるテレビリポートが流されていたしね。ドイツ全土が、この勝利に酔っているという具合でしょう。
このところ、とにかくドイツの国旗が目立ちまくっています。自動車に旗を立てるだけじゃなく、自宅の窓などにドイツ国旗を掲げる人も多い。先日も書いたけれど、このような、ナショナリスティック(国家主義的)ともとられかねない行動には、普段ドイツ人は少し遠慮がちなのですよ(過去の負の遺産)。でもキッカケがワールドカップだからね。だから、大手を振って旗を掲げられるというわけです。
ドイツ全土から放散されつづける、ドイツ人として誇りに思えること(アイデンティティー強化)に対する期待というスピリチュアルエネルギー。ドイツ代表の選手たちが、「それ」を体感しないはずがありません。そして、今日のポーランドとの「ドラマチックな試合」が、そのエネルギーを増幅させる。
たしかにドイツ代表チームは、個の能力レベルでは他の列強には明らかに劣っています。ただサッカーは本物のチームゲームだし、本物の心理ゲームでもある。とにかくこのゲームには、ドイツ全土を一丸にするくらいのコンテンツがあったと感じています。そしてスピリチュアルエネルギーのレベルが増幅しつづける。さて・・
まだドルトムントのプレスセンターで書いているのだけれど、どうも朦朧(もうろう)としてきた。ということで、このまま推敲なしでアップしちゃいます。例によって乱筆に乱文、スミマセン。
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