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2006_ワールドカップ日記・・湯浅の典型的な行動パターン・・そして、この日行われた3試合のマッチレポート・・(2006年6月17日、土曜日)

どうも皆さん。ちょっと試合のことばかりだと記事が退屈になってしまうかもしれないから、今日は、私の行動パターンの一端を紹介することから入りましょうかね。

 要は、スタジアム観戦のスケジュール(開催都市への移動)と、東京新聞やNHKデジタル文字放送&ホームページ、またラジオ出演などの仕事スケジュール(これからはサッカー新聞や雑誌などのスケジュールも入ってきます)、そして私のホームページアップをいかに効率的に流すのかというテーマです。

 まず宿泊。友人のところをベースキャンプにさせてもらってはいるけれど(大きな荷物はそこに置かせてもらっている)、私は移動しまくっているわけだから、毎日、どこかに宿泊して身体を休めなければ持ちません。もちろん身体や衣類も清潔に保たなければならないしね。基本的にはクルマ移動の湯浅は、インターネットで、スタジアム観戦スケジュールに合わせて郊外のホテル(まあモダンになったモーテルみたいなもの)を予約します。安いし、アウトバーンに近いから(もちろんクルマ移動という意味での)交通の便もいい。ドイツは、やはりクルマ社会ですからね、様々な施設が、クルマ移動を前提に展開されているというわけです。

 例えば先週の11日。ケルンでポルトガル対アンゴラ戦(2100時キックオフ)を観た後、ホームページを仕上げてネットにアップし、つづけて翌日の午前中に送らなければならない東京新聞の原稿を「仕込んで」から、予約しておいた宿へ向かいました。その宿は(例によってアウトバーン近くのロケーション)ケルンから約100キロ南へ下ったコブレンツにあります。夜中の2530時あたりに出発し、約1時間でホテルに到着。その途中で、携帯電話で日本のラジオ番組に出演したりしました。

 到着したとはいっても、そんなに簡単には眠れない。まあ寝入ったのは2700時(午前3時)ころでしたかね。そして、0700時には起床して、昨日仕込んでおいた東京新聞の記事を仕上げて送る。それが午前1000時ころ。そして朝食をとったりシャワーを浴びたりして、日本対オーストラリア戦が行われるカイザースラウテルンへ向かったというわけです。

 ただ、日本戦が行われた12日は、基本的には楽なスケジュールのはずでした。何せキックオフが1500時だったからね。要は、スタジアム観戦するゲームのキックオフタイムが、その日の「物書き」スケジュールのタイトさを測るバロメーターになるというわけです。

 とはいっても、12日は、例の「結果」でしたからね、こちらもちょっとディモティベート(やる気の減退)されたこともあって、まず後藤健生さんと夕食を共にすることにしたというわけです。そんなことで、ホームページのアップも、東京新聞の仕込みも大幅に遅れてしまい、結局は厳しいスケジュールになってしまったという次第。

 とはいっても、互いに理解し合える(進歩的なディベートが出来る)間柄だからね、「あんな結果」の後の語らいとしては、殊のほか効果的な「発想のクーリングダウン」になったというわけです。大変に有意義な時間でした。こんなことを書いてよかったかな・・後藤さん??

 まあ、それが私のこれまでの典型的な行動パターンといったところ。まだそんなに厳しいわけじゃない。とはいっても、これからは(興味あるテーマだからと執筆依頼を受けてしまったこともあって)もっと厳しいスケジュールになるはず。また移動にしても、電車とクルマを、うまくコンバイン(組み合わせ)しなければならないしね。もっと緻密なスケジューリングが必要になってくるでしょう。

 もちろん基本的には楽しいことをやっているわけだから「大変だ」なんて思わないけれど、物理的なところでは、確かに厳しいことには変わりないからね。さて、ゲームのレポートに移りましょうか。まず、カイザースラウテルンのメディアセンターでテレビ観戦したポルトガル対イランとチェコ対ガーナから簡単にいきましょう。

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 ポルトガル対イランですが、ファーストチョイスのポルトガル先発メンバーに、イランは、内容でも結果でも圧倒されてしまいました。やはり局面での競り合いや仕掛けのコンテンツで、質の差がアリアリでした。それが、シュートチャンスの量と質に如実に反映されていたということです。ちなみに、ポルトガルのシュートは、全体が18本。そのうち10本が、枠に飛んでいました。それに対してイランは、5本のうちの1本のみ。まあ、仕方ない。

 この試合でのクリスティアーノ・ロナウドは、デコが出場したことで、また初戦での思い上がりプレーで失敗したことへの反省もあって(!?)、組織プレーと個人勝負プレーがうまくバランスしていたと感じました。彼は、明らかに、意識的にシンプルな組織プレーや積極的な守備からプレーをスタートしようとしていた。だからこそ、サイドからの仕掛けで、何度もイラン守備ブロックをズタズタに切り裂く質の高いドリブル勝負も繰り出せたということでしょうね。シンプルにパスを回したり、エゴイスティック要素が「目立ち過ぎない」個人プレーを展開できていたからこそ、チームメイトから、質の高いパスをもらえたということです。

 さてチェコ対ガーナ。立ち上がり2分にガーナが挙げた先制ゴールのシーンだけれど、左サイドでタメを演出し、そしてセンターゾーンにポジショニングしていたアサモアにピタリと合うクロスが飛んだ時点で勝負ありってな具合でした。そのクロスが、ウイファルシのアタマを越してしまったのだけれど、やはりクロスを上げられる危険性が高い場合は、あのような「ファジー」なポジショニングではなく、しっかりと相手をタイトにマークしなければならないということです。フラットラインを構成するポジショニングから、それをブレイクして「マンマークへ移行」することに対するメリハリの効いたバランス感覚(判断力)は、現代サッカーのセンターバックに求められる重要な資質なのです。まあ、言うまでもないことだけれど。

 全体的な印象は、やはりチェコのエース・ツートップがいないことの欠乏感が強かったというものでした。もちろん、コレルとバロシュ。組織プレーでは、(ボールがないところでの動きの量と質・・人とボールの動きで!)やはりチェコの方が一枚上手だけれど、最後の仕掛けプロセスでの「個の能力をベースにした」危険度が、コレルとバロシュがいないことで格段に低下していたと思うのですよ。

 そんなチェコに対し、ガーナ選手たちは、「より」個の能力を前面に押し出して仕掛けてはくる。とはいっても、そのなかにも、しっかりと組織プレーテイストもミックスしていると感じました。あれだけの高い個の能力を備えたガーナだからね、本当に強いと思いますよ。イタリアにしてもチェコにしても、ギリギリの守備で守り切り、そしてここ一発の組織プレーやセットプレーでゴールを挙げて逃げ切る・・。ガーナと対するときは、そんな「ゲーム戦術イメージ」がメインになるだろうね(初戦でガーナを2-0で破ったイタリアのようにネ)。やはり、ここ一発の組織プレーでは、ボールがないところでの勝負の動きの「量(人数)と質(スペース活用イメージ)」などで、まだまだヨーロッパ勢に一日の長があるということです。

 ただこの試合でのチェコは、そんな「勝負イメージ」を実践にうつす前に先制ゴールを入れられてしまった。それで攻め上がるしかなくなったチェコだったけれど、コレルとバロシュを欠いていたことで、最後の仕掛けプロセスに、いつもの「変化」を演出することが叶わなかったということです。チェコを応援している湯浅にとっては、辛い結果だけれど、まあ最終戦でイタリアを破ればいいわけだからネ。

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 さて今日の最後は、スタジアム観戦したイタリア対USA。

 まず何といっても、イタリア的なクレバーなゲーム運びを感じていた湯浅です。第一戦でチェコに完敗を喫したアメリカは、もちろんどんどんと攻め上がってくるけれど、それこそがイタリアの狡猾な罠ということです。そして、例によっての一発ロングからの素早いカウンターを仕掛けてくるイタリア。起点は、ピルロであることが多いよね。アメリカは、トッティーをかなり気にしているけれど、どちらかといったらトッティーは、「おとり」といった意味合いの方が強いかもしれないね。

 とはいっても負けられないアメリカも、ラインを高く保ちながら、常にイタリアの「ツボ攻撃」に備えている。なかなか効果的なラインコントロールだ。アリーナ監督は、しっかりとしたイメージ構築も行っていると感じていた湯浅です。なかなか緊縛したゲーム展開じゃありませんか。面白い・・

 ・・なんて思っていたら、前半22分に、イタリアが先制ゴールを挙げてしまう。もちろんセットプレーから。キッカーは、もちろんピルロ。ゴールをゲットしたのは、ニアポストのスペースに走り込んだジラルディーノでした。このシーンでのジラルディーノは完璧にフリーになったわけだけれど、その前の段階で、他のチームメイトたちがアメリカ守備を押さえ込んでいた。要は、ジラルディーノをニアポストスペースへ「押し出すように」アメリカのディフェンダーたちをブロックしていたということです。そんな狡猾な手段もまた「イタリアのツボ」っちゅうわけです。

 これで完璧じゃん・・イタリアのツボだよ・・一点リードし、相手に攻めさせておいてカウンターをどんどん決めちゃう・・これはもうアメリカの芽はなくなったな・・アメリカは、ボールがないところで真面目に攻め上がるからネ・・だから逆に、カウンターを喰らう危険性が増大しちゃう・・「あ〜〜あっ、つまらない」なんて落胆していたら・・

 ・・アメリカのセットプレー場面で、イタリアのザッカルドが見事なオウンゴール(自殺点)をたたき込んでしまうのですよ(前半27分)。まあザッカルドは、ネスタがアタマで触るかもしれないという中途半端なマインドに陥っていたこともあったんだろうけれどね。そしてその一分後には、イタリアのデ・ロッシが、アメリカ選手を肘打ちして一発退場。数分前までは、完璧にイタリアのツボの試合展開になると確信していたのに、今度は完全にアメリカの試合になりそうな雰囲気に逆転しちゃうんだからね。こりゃ、すごいことになりつつある・・なんて、ちょいと興奮気味になった湯浅だったのです。

 でも、ちょっと落ち着いてアメリカのサッカーを観察していて、逆にちょいと落胆。彼らは、一人多いという状況でのゲーム運びが上手くない。トレーニングされていないんだろうね。一人多いということは、もっともっと前に人数を掛けていかなければならないということなのにね。もちろん、その攻め上がりを安定させるために、経験豊富な中盤守備のリーダーがイニシアチブを取り、明確に「残る選手」をマネージする(縦方向の人数とポジショニングバランスを取る)という工夫も必要だけれどね。

 そんなふうに不満タラタラだったけれど、その次の瞬間には(前半45分)、アメリカのマストロエニが、イタリアのゲームメイカー、ピルロへの後方からの両足タックル(それも足の裏をみせて飛び込んだ!)で一発レッドを喰らってしまうのですよ。当然のレッドでした。これで二人目の退場。一体どうなってしまうんだろうね。

 私は、そんな状況の変化をみながら、まったく次元の違う想像をしていました。10人対10人の場合(フィールドプレイヤーでは9人対9人)、サッカーが、格段にダイナミックになることがある・・。1990年ワールドカップの準々決勝で対戦したドイツ対オランダ。そこで、ライカールト(現バルセロナ監督)と、ルディー・フェラー(前ドイツ代表監督)がケンカをはじめ、両方とも退場になったことがありました(有名なツバ吐き事件)。そしてその後のサッカーが、格段にダイナミックなモノに変容していった。人数が少なくなったことで、中盤スペースが広がったということです(選手たちにとっては、スペースがものすごく大きく感じられ、それだけで足が止まり気味になってしまうから、どうしてもスペースが大きく空くことになる!)。ということで、もしかしたらこの試合の後半も、そんなエキサイティングな展開になるかもしれない・・なんてね。いまハーフタイムだけれど、そんなコトを考えていた湯浅だったのです。

 そして、そんな期待が高まっていた後半開始早々(後半2分)、今度はアメリカのポープが二枚目のイエローでレッドカードを受けてしまうのですよ。フ〜〜ッ! これでフィールドプレイヤーの数で、アメリカの8に対して、イタリアは9。本当に、一体ゲームはどうになってしまうんだろう・・。

 ここからの展開で非常に興味深かったのは、アメリカの最終ラインのプレー振りでした。積極的にラインをコントロールすることで、次々とイタリアのオフサイドを取ってしまうのですよ。まあ、アメリカは、もうそれで対処するしかないということもあったけれど、とにかく上手くラインをコントロールしていましたよ。スッとラインを上げたり、ピタリとラインを止めたり、そして必要なタイミングで正確にブレイクしてマンマークへ移行する。その最終ラインに、13番のコンラートも交代で入ってくる。彼は経験豊富なディフェンダーですからね、最終ラインのコントロール機能もアップしたというわけです。

 そんな展開に、イタリアの攻撃は、まったく機能不全に陥ってしまう。まあ、自分たちが積極的に攻めるというのは彼らの得意とするサッカーじゃないわけだけれど、それにしても、足が止まった最低の消極サッカーなのですよ。それに対して、アメリカが、徐々にカウンターを繰り出せるようにもなっていく。本当に、興味深い展開になっている。

 後半22分には、寸詰まりの攻撃しか仕掛けられないイタリアに業を煮やした(!?)ザンブロッタが、思い切りのよいドリブルシュートを放ちます。こうなったら、何といっても個人でいくしかない! そのプレーからは、ザンブロッタが、そのことを感覚的に理解していると感じていました。そう、その通りですよ。とにかくイタリアは、ボールがないところでの動きがまったくなくなってしまっていたからね。だから、スルーパスを狙おうにも、アメリカ守備陣に完璧に予測されてしまうのですよ。

 それでも私は、例えばデル・ピエーロとかが、最後の力を振り絞って個の突破を仕掛けたり、ロスタイムに、セットプレーで決勝ゴールをたたき込んだり等、これまでに経験しているイタリアの「勝負のツボ」をイメージしていました。でも結局は・・。

 試合後の監督会見。アメリカのアリーナ監督が、「選手たちは本当によく闘った・・彼らを誇りに思う・・これで、最後の最後まで、どのチームが決勝トーナメントに進出するか分からなくなった・・どのチームにもチャンスがある・・」と、満足げに語っていました。さて、予選Eグループも面白いことになってきた。
 



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