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2006_ワールドカップ日記・・覚醒し、勝負マッチを通して発展しつづけるドイツ・・(2006年6月20日、火曜日)

やったゼ〜!! 見事な、本当に見事なサッカーでドイツが三連勝を飾りました。それも、相手は、強いエクアドルですからね(でもまあ、ミニ・ブラジルと表現するにはちょっと足りない)。そんな彼らにチャンスの芽も与えずに完勝したドイツ。これで、望みどおり、Aグループトップに立ちました。ということで、決勝トーナメント一回戦の相手は、イングランドかスウェーデンかっていうステージまでたどり着きました。たぶんベンチも、「2-0」になった時点で、次の相手のことが気のなりはじめたに違いない。

 さて、簡単な試合レポートに入る前に、まず試合前のスタジアムを包み込んだ圧倒的な雰囲気から・・。

 いやホント、鳥肌ものでした。何せ8万人の観客で埋め尽くされたベルリンオリンピックスタジアムが、ドイツの国歌で隅々まで包み込まれたんですからね。ものすごい迫力の大合唱。そこで放散されたエネルギーは、まさに天文学的なレベルでした。

 多くのクルマや、家の窓、ガソリンスタンドなどではためくドイツ国旗のオンパレードでも感じつづけている「いま、国が一つにまとまっている」という感覚。ベルリンのオリンピックスタジアムには、まさに、「それ」があったのですよ。わたしも、つい合唱に参加しちゃったりして・・「ア〜イニッヒカイト・・レヒツ、ウント、フラ〜イハイト・・」ってな具合。いや決して他意があった訳じゃ・・。単に、雰囲気に呑み込まれちゃっただけだったのですよ。それにしても、やはりベルリンのオリンピックスタジアムはいいね。何せ、聖火台もあるからね。だからこそ雰囲気も、これ以上ないというほど盛り上がった!?

 とにかく、スポーツだからこその「団結」。その圧倒的な雰囲気には、選手たちが最も強く刺激を受けたに違いありません。ドイツ全国から彼らに集約されるスピリチュアルエネルギー。彼らも圧倒されたに違いない。

 ただ、最初の数分間は、そこで蓄積された気合いが空回りしてしまうのですよ。そう、気合いが入りすぎた安易なボール奪取勝負。「そんなタイミングで飛び込んだらヤツ等の思うツボじゃないか・・」。思わず、そんな声が出ていた湯浅だったのです。個の能力じゃ、エクアドルの方が明らかに上だからね。彼らの巧みなボールコントロールで、ボール奪取アタックを外され、翻弄されるドイツ選手たちなのです。

 あんな安易なタイミングでアタックを仕掛けたら、チンチンにボールを回されてしまうのも道理。ちょっとみっともなかったね。でも、それは立ち上がりのほんの数分のこと。すぐにドイツ守備も落ち着きを取り戻すのですよ。たぶん、フリングスとバラックのリーダーシップが効いたんでしょう。「簡単に当たらず、しっかりとウエイティングして、ヤツ等からアクションを起こさせろ!」ってな具合だったに違いありません。

 そして、徐々にドイツが中盤を完全に制圧しはじめたというわけです。安易にアタックを仕掛けず、ウエイティングすれば、彼らのボールの動きも停滞する。それこそが協力プレスの大チャンスというわけです。エクアドルには、先日のコラムでも書いたように、相手の守備や攻撃での積極的な「仕掛け」を逆手にとってしまう上手さがありますからね。第一戦で対戦し、全体的には押していたポーランドも、まさに「それ」にやられちゃったのですよ。だから私は心配していた。ドイツは「勝たなければならなかった」からね。

 でも結局そんな心配は杞憂に終わったというわけです。それには、前半4分にクローゼが挙げた先制ゴールが本当に効いた。いや、素晴らしいゴールでした。左サイドからのフリーキック。シュナイダーが、上がっていたメルテザッカーへ正確なクロスを上げる・・それをメルテザッカーがファーポストのスペースへロビングパスで送り込む・・最後はシュヴァインシュタイガーが折り返したところをクローゼが「ドカン」。いやホント、ドイツらしい見事なゴールでした。

 ドイツらしいゴール・・。彼らの仕掛けイメージがどんどんと「重なり合い」、先鋭化していると感じるのですよ。そう、2002のときのようにネ。やっぱりドイツは、外からのクロス攻撃がもっとも危険。また、一発カウンターの(相手最終ラインのウラに広がる決定的スペースへ向けた)ロングパスに対しても、常にトップが反応しているし、たまには中距離シュートを飛ばすことで、しっかりと「攻撃の変化」も演出してしまう。とにかく、ドイツ選手たちは、そんな「仕掛けイメージ」で一致しはじめているということです。そうなったときのドイツは、本当に強いよ。最初の3分間の「間違ったプレー姿勢」も、すぐに「自分たちのなか」で調整してしまったしね。フムフム・・

 ドイツは、確実に、大会を通して発展していると思いますよ。それには、冒頭で述べた、ドイツ国内の「前例のない」盛り上がりが心理・精神的な基盤になっていることは言うまでもありません。そしてそれと同時に、選手たちの「覚醒」もある。もちろんそれにしても、ドイツ全土からのスピリチュアルエネルギーによって促されたと捉えるべきなんだろうけれどネ。自分たちは、やっぱり上手いことしようとしてはいけない・・あくまでも基本に忠実に、ギリギリまで闘う意志を高揚させて全力を尽くす・・それがドイツのサッカーなんだ・・ってね。

 でも私は、あくまでもそれは「主体的な覚醒」だったと思っています。だからこそ、問題になっている「最終ラインのコントロール」も、徐々にタイミングが合ってきているのです。要は、ポジショニングバランスから「マンマークへ移行する」ブレイクポイントが、早めになっているということです。

 コーチの「レーヴ」は、できる限りラインコントロールで対処し、最後のタイミングでインターセプトしたり、勝負ポイントで協力プレスを掛ける・・なんていう理想型を目指しているけれど、やはり現実はそういうことでもないのですよ。そのことは選手たちがもっともよく体感している。だからこそ、自分たちのなかで、「マンマークへ移行するブレイクポイント」を、自分たちがやりやすいように調整しているということです。

 そのことは、ポーランド戦でも強く感じました。もしかしたら、クリンズマンとレーヴから指示があったのかもしれないけれどね。とにかく、今のドイツ代表の最終ラインでは、ブレイクポイントを遅らせるのは、大きすぎるリスク(=蛮勇)なのですよ。そのことに対する「覚醒」も、彼らの発展のエネルギーになっているということです。

 一気に書いたけれど、今日は、そんなところですかネ。これから、東京新聞コラムの仕込みをするつもりです。

 あっと・・一つだけ重要なポイントを書き忘れた。ドイツの覚醒だけれど、それには、確実に「日本戦」が大きく貢献しているはずです。「日本になんか・・」と臨んだドイツ選手たちが、冷や汗をかかされた。最終ラインも、ボロボロに崩された。それほどの「刺激」はありませんからね。ユルゲン・クリンズマンは、日本に感謝しなければいけませんよ、ホントに。
 



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