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2006_ワールドカップ日記・・午前中のエピソード・・そしてアルゼンチンとオランダについて・・(2006年6月21日、水曜日)

ベルリンの友人宅で「0650」時にゴソゴソと起き出し、そのままシャワーを浴びてベルリン中央駅へ。久しぶりにリラックスして寝られたという感じはするけれど、どうもまだ眠い。身体の芯に溜まった疲労がにじみ出てきている!? それでも、東京新聞のコラムを仕上げなければならず、列車のなかでコンピュータを開かなければならなかった次第。

 列車のシートはインターネットで予約済みだったのですが、とにかく、ワールドカップ期間中はファーストクラスから予約で一杯になるから、普通は予約など入れない一般の乗客の皆さんには大迷惑だろうね。何せ、普段は、ファーストクラスが満杯になることなんて絶対にないはずだからね。

 実際、電車を良く利用する友人が、こんなふうにボヤいていましたよ。「ホントにアタマにくるぜ・・この数日間、電車の中で立ちっぱなしなんだよ・・ファーストクラスでも一杯なんだゼ・・それも色々な国の汗くさいユニフォームに身を包んだ連中でごった返している・・今度はオレもドイツのユニフォームを着て乗り込んでやる・・」なんてね。

 さて仕事。コンピュータを立ち上げたまではよかったけれど、そこでハッと気がついた。あっ、この列車には電源コンセントが備えられていない・・。ちょっとガッカリ。車掌さんに聞いたところ、もっとも新しい列車にしか備わっていないとのことでした。ジークブルク(ボン)からミュンヘンへ向かう列車にはあったから、どの「ICE(インターシティー・エクスプレスの略)」にも備わっているものとばかり思っていたのに。

 ということは、バッテリーだけで書かなければならないから、2-3時間のうちに仕上げなければならないということか・・書いた原稿をインターネット経由で送るために、モバイルカード用の電力だけは残しておかなければならないからな・・このカードの電力消費量が大きいんだ・・なんてことを立てつづけに考えていた湯浅だったのです。

 ちょっと、落ち着かない状態だったけれど、それでも予定通り2時間で無事に書き上げ、東京へ原稿を送りました。となりに座っていたドイツ人のおじさんが、「あなたはライターか? ワールドカップのために来たのか? それは日本語か?」等々、次々に質問してくる。それにも、しっかりと誠実に、そして簡潔に答えながらの執筆。大変に気を遣いました。それでも、モバイルカードが素晴らしく快適に機能してくれたから、それだけは一服の清涼剤ってな感じだったですね。バッテリーの残量は、全てが終了した時点で「50%」くらい。以外と持つものなんだ・・なんて感心していましたよ。

 そしてエッセン中央駅に到着後、車内でバッタリ出会った知り合いのカメラマンのお二人を誘って、エッセン商工会議所の友人に頼み込んで駐車させてもらっていた地下パーキングへ。そしてそこから、一路ゲルゼンキルヒェンへと向かった次第。商工会議所の友人は仕事で席を離れていたから連絡がつかなかったけれど、受付の女性に伝言を残しておいてくれたから、「ええ、聞いてますよ・・どうぞ、そのエレベーターで地下駐車場へ・・」と、にこやかに応対してくれました。感謝です。

 ここから、ウエイティング状態だった「メディア用の観戦チケット」についてとか、ポルトガル対メキシコ戦(2-1でポルトガルが勝利・・その結果ポルトガルがグループ一位、メキシコが二位)についてレポートしようと思っていたのだけれど、そのゲームの直後に所用が重なり、結局は何も書けず仕舞いで、この日のハイライト、アルゼンチン対オランダの観戦に突入してしまったのですよ。そして今はもう真夜中。昨夜はベルリンでしっかり寝られたけれど、どうも身体の芯には疲れが溜まっているらしく、アタマが回転しなくなっている。ということで、ここでは、アルゼンチンとオランダについて、ほんのちょっとだけポイントレポートするに留めます。悪しからず。

 さて試合。両チームとも主力5人を温存してのスタートだったけれど、試合自体は、最初からヒートアップします。まずオランダがガンガン攻め上がる。最初の10分間のポールポゼッション率は、オランダ「70%」に対してアルゼンチンは「30%」。それでも実質的なコノテーション(言外に含蓄される意味)は数字では表現できない。要は、アルゼンチン守備ブロックが、明らかに余裕をもってオランダの攻めを受け止めていたということです。もちろん、オランダが仕掛ける中距離シュートや、クロスからのピンポイント攻撃では、ハッとさせられることはあったけれど、全体的には、アルゼンチン守備ブロックが崩されたという印象はまったくなかったということです。

 その後は試合がダイナミックに均衡していく。そして、両チームの実質的な「サッカー・コンテンツ」がより鮮明に見えはじめるのです。

 守備の内容については、両チームともに素晴らしい。チェイス&チェック、協力プレス、次のボール奪取ポイントでの集散、ボールがないところでのマーキング等々、とにかくダイナミックな組織ディフェンスが機能しつづけます。守備こそがサッカーのスタートライン。その内容によって全体的なサッカー内容も決まってきますからね、だからこそ、両チームともに、ボールを奪い返した後には、ものすごく積極的に仕掛け合ったということです。だから、ダイナミックな均衡状態という表現がピタリと当てはまる。

 全体的な攻撃の印象としては、組織プレーと個人プレーの「質のバランス」という視点で、やはりアルゼンチンに一日の長ありです。この試合で先発したテベス、メッシといった才能。それ以外にも、普通は先発のクレスポやサビオラもいる。それに対してオランダは、この試合ではベンチを温めた、ロッベンやファン・ニステルローイくらですかね、相手が「個」として脅威に思うのは・・。もちろん、ファン・ベルジーやファン・デル・ファールトといった才能もいるけれど、どうもまだ本格的な調子ではないと感じるのですよ。

 要は、こういうことです。人とボールの活発な動きという「組織プレーのベース」は、お互いにものすごく高いレベルにある・・だからこそ、攻撃の変化を演出する「個の才能」というポイントが、実質的な差を形成する・・。

 組織的なチーム戦術が同レベルのチームでは、やはり個の才能のレベルによって勝負が決まってくるということです。わたしは、(もちろんこの試合に限った評価ではあるけれど)アルゼンチンの方が実質的なチカラで「僅かに上」だという印象を持ちました。もちろん、レギュラーが揃ったときにどのような展開になるのかなんて分からないけれどね。

 さてこれで、もしドイツが決勝トーナメント一回戦でスウェーデンを破ることができたら、次の準々決勝では、アルゼンチンとメキシコの勝者と当たることになったわけです。いよいよ、「対戦ペア」が具体化してきました。こちらも、勝負マッチを観戦する前から、両チームの守備の機能コンテンツや攻撃の実質的な流れなど、しっかりとイメージトレーニングを積んでおかなければいけません。さて、いよいよ本物の勝負の時が近づいてきた。
 



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