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2006_ワールドカップ日記・・大会オフの四方山話・・また、フランス対スペインについても印象レベルのレポートを・・(2006年6月28日、水曜日)

ゲームがない今日は、一日中ホテルで原稿を書くことにしました。東京新聞で連載している隔日コラムの仕込み。エルゴラッソの原稿。NHKデジタル文字放送と同ホームページ用の原稿。あっと、スポナビでも「たまには書く」と約束していたんだっけ。そして、いま書きはじめた(この文章のこと!)、私にとってもっとも大事な「湯浅健二のサッカーホームページ」の更新原稿。フ〜ッ。

 でもさ、基本的には「主体的」にサッカーをとことん楽しんでいるから、負担というふうにはまったく感じていないのですよ。とはいっても、とにかく「書きはじめる」までが大変なことに変わりはない。特に今日は「時間がある」からね。そんなときは、腰を上げるまでに大変なエネルギーが必要になってくるのです。まあ、皆さんにも経験があると思うけれど。「エイヤッ!!」っちゅうかけ声を掛けてはじめようとはするけれど、かけ声を掛けたからといって、良いテーマが浮かんできたり、深い分析イメージが湧いてきたりするわけじゃないからネ。

 ・・なんてことを書いているのも、一種の「かけ声」っちゅうわけです。でもどうも、イメージが展開したり深まっていかない。ちょっと散歩でもしてこようか。ここは、エッセンの町中にあるビジネスホテルだけれど、すぐ先には公園があるからね。そうだ、そうしよう・・。

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 昨夜のスペイン対フランス。激闘でしたね。そして最後は、経験にモノを言わせたフランスがスペインをうっちゃってしまう。全体的な内容では、まあ互角だったけれど、組織プレーという視点ではスペインにやや分がありといった展開でしたね。

 要は、年齢を重ねたフランスには、以前のような華麗な組織プレーなど期待できなくなっているということです。1998年と2000年に世界とヨーロッパを制したときの美しかった「バランスサッカー」。シンプルなリズムで人とボールを、素早く、広く動かしつづけるなかで、ボールタッチごとに、フランス的なエスプリの効いたフェイントや華麗なボールコントロールを織り交ぜる。そのイメージリーダーがジダンであり、ピレスであり、ビエラやアンリだったのだけれどね。

 本当に、当時のフランス代表は、組織プレーと個人勝負プレーが高い次元でバランスしていたのですよ。だから私は、サッカー内容では、アルゼンチンとフランスが世界チャンピオンだと書きつづけてきた(このHPの以前のコラムを参照してください)。その視点では、いまのフランスサッカーは、ちょっと抜け殻といった雰囲気もあります。言い過ぎかもしれないけれど・・。

 先日、ミュンヘンのメディアパスで知り合ったフランス人ジャーナリストも、「こんなフランス代表は見たくない・・若い選手たちは育っているのだから、もっと思い切って世代交代すればいいのに・・」と、誰もが思っていることを吐き捨てるように言っていました。思い入れが強いからこその激情。そのジャーナリストの鬼のような形相を見ながら、やはりサッカーの情緒パワーはすごい・・なんて再認識していた湯浅だったのです。

 世代交代。先日も書いたけれど、それこそが監督にとって最も難しいミッションですからね。誰もやりたくない。フランスのドメニク監督は、明らかに「それ」を避けた。だからこそ、コンセプトが明快ではない「フラフラ」したチームになってしまったと感じている湯浅なのです。まあ、とはいっても、ビエラの二試合連続ゴールや、「往年のフォーム」を彷彿させるジダンのドリブルゴールなど、ここ一発の勝負強さには、まだまだ捨てがたいモノがある。もちろん最前線にはアンリもいるし。

 とにかく、そんなフランスを見ながら、1998年大会決勝の再現となる準々決勝(フランス対ブラジル)に思いを馳せていた湯浅でした。ブラジルが攻め込んだら、瞬間的にはまだまだパワフルな「個の才能」を基盤にしたフランスのカウンターパワーが炸裂しちゃうかもしれないよね。

 中盤の高い位置で、ビエラが、例によっての天才的なタックルでカカーからボールを奪い返し、すぐにジダンへタテパスを出す・・間髪をいれず、ジダンが、例の「二軸リズムのボールコントロール」でエメルソンとゼ・ロベルトを翻弄し、最後の瞬間に、決定的スペースへ(ヨコへの全力ダッシュから急激に縦方向へ切り替えて)走り抜けたアンリへのスルーパスを送り込む・・なんてネ。とにかく、とことん楽しみましょう。

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 先ほどの散歩だけれど、結局、公園へは行かず仕舞いでした。その途中で、大きな文房具屋さんを見つけたのですよ。文房具ファンの湯浅は、そこで小一時間も過ごしてしまったのです。

 ドイツの文房具は、デザインでも機能性でも、世界に誇れる製品が多いですからね。文房具の「使用価値と所有価値のバランス」にこだわる湯浅は、メタル製品や筆記用具を中心に、一つひとつ吟味していたという次第。そんな私に、店員の女性が話しかけてくる(もちろん、文房具の販売員資格を持った人に違いない!)。

 「何かお探しですか?」。「いえ、私はドイツの文房具のファンだから、ちょっと色々と見ているのですよ。気に入ったモノがあればケースから出して見せていただきますから・・」。「そうですか。やはりドイツ製品はいいでしょう? わたしも、あなたのような外国の方に誉められるとモティベーションが上がりますよ。ところで貴方はどうしてそんなにドイツ語が上手いのですか?」。「30年くらい前に、6年間ケルンに留学したことがあるんですよ」。「そうですか。それだったらドイツ製品の良さはよくご存じですよね」。そんな、たわいのない会話を交わしながら、この店員の女性は、ドイツ人にしては、本当に応対がいいよな・・なんて思っていた湯浅なのです。どうしてそんなことを思ったのかって・・?

 ドイツ人は、サービスセクターにいるくせに、まったくその意識がない人があまりにも多すぎるからネ。昨日も、ドルトムントのメディアセンターで嫌な経験をしたのです。食堂の会計カウンターでのこと。私の前にいた日本人ジャーナリストの方に対して、会計をしている太めの若い女性が、「それは、コーヒー? それともカプチーノ?」と、大声で横柄に聞く。コーヒーとカプチーノでは値段が違うらしい。そのジャーナリスト氏が答えに窮していると、そこに追い打ちを掛けるように、「それは、コーヒーなの? カプチーノなの?」。ちょっとアタマにきた湯浅は、本当に何か言ってやろうと身体を前に乗り出した次の瞬間、そのジャーナリストの方が、落ち着いた柔らかな声で(もちろん日本語で)、「そんなに怒らないでくださいよ・・」。その一言で、こちらの怒りも霧散した次第。あははっ。

 あっと、文房具屋さん。その店員の女性とドイツの文房具談義をしているうちに、インスピレーションが湧いてきたのですよ。その女性に感謝! そしてホテルに戻って書きはじめたという次第でした。あっと、そこで湧き出してきた「インスピレーション」は、東京新聞やエルゴラッソの原稿へ回しましたので、悪しからず。とにかく、やっぱり人との活きた(楽しい)会話は、脳をポジティブに刺激してくれますよね。

 ところで、大会の期間中に発表した「プリントメディア原稿」ですが、大会が終了したら、私のホームページにも順次アップしていく予定です。そうか、NHKで発表した文章も、彼らのHPではそのうちに削除されるだろうから・・。もちろんそれには、先方の了解を取り付けなければいけませんけれどね。

 とにかく湯浅のホームページは、様々な意味を内包するデータベースとして機能させたいのですよ。だからこそ、以前に発表した稚拙な文章も、決して削除せずに残してあるのです。

 またまたま四方山話になってしまいました。たぶん明日は、この「日記」も久しぶりのオフということになると思います。ではまた・・。
 



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