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2006_ワールドカップ日記・・これで、最大人気チームと、サッカー内容のスターチームが姿を消してしまった・・ちょっと残念・・(2006年7月1日、土曜日)

さてもう一方の準々決勝二試合。まずイングランド対ポルトガル。こちらも、ものすごく「緊迫」したゲーム展開になりました。両チームが死力を尽くして攻め合うという、まさに動的な均衡。そのなかで、ルーニーが退場になってしまうという、テンションレベルが最高潮に盛り上がる出来事もあった。

 この退場が転換点になるかな・・と思っていたけれど、結局イングランドのチームパワーが衰えることはありませんでした。ジョー・コールに代えてクラウチを投入し、彼をワントップに選手のポジショニング(タスク)バランスを代えたイングランド。まったく衰えが感じられない堅牢な守備ブロックなのです。いや、前にも増して強固になったとも感じましたよ。

 そして、ケガのベッカムと代わったレノンが、昨日のドイツチームで抜群の存在感を発揮したオドンコールにように、イングランド攻撃のインパクトとして光り輝くのです。爆発的なドリブル突破やボールがないところでのパスレシーブのアクション。またクラウチも、最前線で素晴らしいポストプレーを魅せつづける。あれだけしっかりとしたキープが出来るからこそ、後方からジェラードやランパード、はたまたハーグリーブスまでが、勝負所へオーバーラップできたということです。

 とにかく、数的に不利な状況になってからのイングランドの高質サッカーに、ちょっと感動していた湯浅だったのです。やはりこのチームは、イングランドサッカーの歴史のなかでも最高にバランスしたチームに違いない・・。だから、PK戦で敗退したことは、本当に残念でした。

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 そして、驚きが満載されていたフランス対ブラジル戦。

 誰もが、「このペースだったら、ロートルが多いフランスのことだから、後でガクッとくるぞ・・」なんて思っていたに違いありません。もちろん私も例外ではありませんでした。それほどフランスの「守備のダイナミズム」が、立ち上がりから抜群のエネルギーを放散しつづけたのですよ。でも結局彼らは、最後の最後までその「最高の集中力にあふれたハイペース守備」を維持してしまうのです。

 ホントに、ビックリでした。そしてすぐに以前のワールドカップ日記を読み返し、「どうして、こんな最低フォームのフランスが、一気に往年のスーパーサッカーに戻ってしまうんだ?」と疑問符だらけになる・・。

 まあ、もちろんそれは、相手がブラジルだったからに他なりません。それこそが世界最高のモティベーションだったということです。トーナメントだから、負ければそれでオシマイですからね。最初からフランスは、まさに吹っ切れた勝負を挑んでいけたということです。これまでのフランスは、周りから「最低だ・・最低だ・・ロートルだ・・」などと言われつづけていたわけだけれど、そんなことも、ブラジル戦での「大ブレイク」の背景にあったに違いありません。やはりサッカーは本物の心理ゲームなんだよね。

 この試合でのフランスの成功を支えていたのが、素晴らしいディフェンスにあったことに疑いの余地はありません。まずチェイス&チェックの勢いと実効レベルが違う。そして、そこで出来た「守備の起点」の周りでは、次のパスレシーバーに対する厳しいチェックだけではなく、ボールがないところでのマーキングとか、パス&ムーブ(ワンツー)でフランス選手を置き去りにしようとするブラジル選手の全力ダッシュへのしぶといマークとか、とにかく守備のコンテンツが素晴らしいのですよ。そしてブラジル選手たちは、ボールがないところでまったくフリーになれず、どんどんと悪魔のサイクルに陥って足が止まり気味になっていった・・。

 ロナウジーニョにしても、とにかく自分のドリブル突破を、仕掛けのキッカケにしようというイメージしかないから、どうしても「そこ」でボールの動きが止まってしまうのです。プレッシャーを掛けられることで、スクリーニングでボールをキープしようとするけれど、すぐに他のフランス選手たちが協力プレスの輪を築いてしまうのです。同じパターンで彼がボールを失ったシーンは、前半と後半で、4-5回はありましたよね。それもまた、ブラジルの自信を喪失させた典型的な現象でした。

 フランスの守備の勢いに、チーム内での「劣勢誤認」が、取り返しのつかないレベルまで進行してしまったということでしょう。そして、そんな心理的な悪魔のサイクルを断ち切れるだけのリーダーがいなかった・・。本当は、ゼ・ロベルトとかエメルソン(またはジウベルト・シウバ)に、チームのマインドを掌握して欲しかったパレイラ監督だったのかもしれないけれど、結局は、誰も、チームを鼓舞することはできなかった・・。

 そのことは、一点をリードされた後の、後半残り30分というなかで、まったくといっていいほどペースアップできなかったこと、そしてサイドから崩していくというチーム内の意志を高めることができなかったことに如実に現れていたと思っている湯浅なのです。

 最後に、ジダンのスーパープレーについても一言。絶対に以前のフォームへの復活はないと思っていたのに・・。もちろん全体的な運動量や全力ダッシュのスピードも落ちたけれど、ボールを持ったら、まだまだ王様でしたね。例によっての「二軸動作」での、トットン、トットンというリズムのボールコントロールから繰り出される魅惑的なドリブルやスルーパス。本当に魅了されました。彼は、この試合でのMVPだとのこと。私は、ビエラやマケレレ、またリベリーが素晴らしかったと「も」思っていますが、やはりこの日の時ズーは、まさに魔法使いでしたからね。受賞に納得でした。

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 あ〜あ、これで、チェコ、オランダ、アルゼンチン、ブラジルという「サッカー内容のスターチーム」がすべて姿を消してしまいました。本当にちょっと心残り。もちろんドイツが生き残っていることは嬉しいけれどネ。

 とはいっても、その代わりに(たしかに平均年齢は高いけれど)フランスが往年のスーパーサッカーを復活させたことは大きい。ロートルだからね、ギリギリのモティベーションがなければ「心と身体が一体になって」動かないということなんでしょうね。でもここからは「世界タイトル」という、これ以上ないほどのビッグモティベーションがあるからね。復活したスーパーサッカーを維持し発展させて欲しいと願って止まない湯浅なのでした。

 それにしても、フランスの復活には、本当にビックリし、大喜びでした。逆に、ブラジルの敗退にはガッカリしたけれど、この試合のようなパフォーマンスだったら、まさに順当負けだからネ・・。ということで、今日はここまでにして、明日また、昨日と今日グラウンド上で起きたことを噛みしめることにしましょう。では・・。
 



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