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2006_ワールドカップ日記・・ジダンを中心にしたフランスのブレイク!・・メッツェルダーの興味深いインタビュー・・そして湯浅のバカな失敗エピソード・・(2006年7月2日、日曜日)

どうも皆さん。いま、ドルトムントの「ヴェストファーレン・シュタディオン」に併設されているメディアセンターに到着し、火曜日におこなわれる準決勝(ドイツ対イタリア)の駐車ステッカーを受け取ったところです。

 昨夜は、ホームページをアップした後に、NHKデジタル文字放送とホームページ用の原稿を書き上げなければなりませんでした。そんなこんなで、結局ホテルに帰ってベッドに入った時には午前3時を回っていたという次第(でも久しぶりに良く寝たから今朝はスッキリ)。昨日は、フランクフルト中央駅から徒歩数分のホテルに投宿したのですが、周りでは、もちろんフランスの連中がドンチャン騒ぎ。凄いね、サッカーパワーは。それでも彼らには、ドンチャン爆発する強〜い理由がありますよね。

 これまでフランスの人々は、最高のサッカー内容で一世を風靡した自分たちの代表チームが、ほとんど「壊れてしまった」と思っていたわけで、ブラジル戦にしても、心から応援はするけれど、半分「諦め」なんていう心境だったに違いないと思うのですよ。それが、フタを開けてみたらのスーパーサッカー。以前の、組織プレーと個人の才能が高質にバランスしたサッカーで、「あの」ブラジルに完勝してしまう。もちろん湯浅も(昨日のコラムでも触れたとおり)本当にビックリしていましたよ。

 その背景要因を、ジダンという天才を中心に、サッカーの戦術的なファクターも絡めながら分析しました。その骨子は、明後日の東京新聞の朝刊に載る予定の連載コラムで書くことにしています。ここでは、その要点を、メモ程度でランダムにまとめましょう。

 ジダンという希代の天才が最後の花を咲かせようとしている・・ただ最初はツートップで試合に臨んだこともあって、うまくサッカーが機能しない・・自分自身のフォームも落ちていることを体感してちょっと落ち込み気味になるジダン・・追い打ちをかけるように(韓国戦での)二枚目のイエローで予選リーグ最終戦に出られなくなってしまう・・誰もが、これで、もう二度とジダンを見ることが出来なくなってしまうと思ったに違いない・・ただチームは頑張ってトーゴに快勝し、予選2位でグループを突破した・・そして監督が、ジダンを中心にチーム戦術を組むと決断・・そう、守備やボールがないところでのアクションは要求せず、とにかくジダンには、ボール絡みのクリエイティブプレーのみを期待するのだ・・

 ・・そのアイデアをベースにして、まずアンリのワントップにし、その後ろのセンターにジダンを配置する・・そして右にリベリー、左にマルーダ、後方にはビエラとマケレレの「ボランチ」コンビが控えるというイメージ・・要は、それまで分散傾向だったチームの組織プレーエネルギーを、すべて、ジダンの「プレーイメージ」に集中させるということ・・そしてフランスが、以前のスーパーサッカーを取り戻すことになる・・もちろんその背景には、「あの」ブラジルとの勝負マッチという、これ以上ないモティベーションもあった・・

 もちろん東京新聞では、これらの(湯浅の仮説テーマ)ポイントをすべて網羅できるはずがない。まあ、そのなかからいくつかを選択して「深めて」いこうと思っている次第なのです。実際、私のコンピュータ画面上では、左にこの原稿、右には東京新聞の連載コラムの原稿が配置されているのですよ。インスパイアーされたら、すぐにでも書きはじめるつもりです。

 ところで、昨日のコラムでは、サッカー内容のスターチームがいなくなったと書いたけれど、考えてみたら、ここで取り上げた「復活したフランス」がいるじゃありませんか。準決勝は、ドイツとイタリア、そしてフランスとポルトガルの対戦。この二つのカードは、ともに、ものすごく興味を惹かれるコンテンツを内包している。サッカーを楽しむためには、もちろん様々な「仮説」を用意する必要があります。要は、見方ですよ、見方。

 いまパッと脳裏に浮かんだイメージだけだけれど、ドイツとイタリアについては、質実剛健のディフェンス合戦のなかで、互いに作り出す(カウンターやセットプレーも含む)ワンチャンスをいかにゴールに結びつけるのかというのがテーマですかね。イタリアではトーニ、ドイツでは「もちろん」ミロスラフ・クローゼが注目です。もう一つのフランス対ポルトガルの場合は、フランスの発展プロセスの検証というテーマがまず筆頭だよね。ジダンの天才を、周りの選手たちが、いかに活かしきるのかっていうテーマね。

 とにかく、まず皆さんが、ご自分で仮説テーマを設定することが、何といっても大事です。それがあれば、観戦が何倍も楽しいものになること請け合いなのです。あっと・・もちろん情緒パワーも必要だから、どこかのチームを「セカンド・マイチーム」にしなければいけません。好きな選手がいるでもいいし、彼らのサッカーが好きだからでもいいし。とにかく、お互いにとことん準決勝を楽しみましょう。

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 ところで、ドルトムントのメディアセンターで、偶然ミミに入ってきたドイツ代表の記者会見。ドイツ最終ラインの雄、クリストフ・メッツェルダーがインタビューに応えていたのです。インテリジェンスあふれる受け答え。素晴らしいじゃありませんか。なかなかのイケメンだしね(FIFAのワールドカップHPで彼の顔写真を参照してください!)。やはりどのチームでも、最終ラインのリーダーは、同じようなタイプということなんでしょうね。ちょっと聞き入ってしまいました。

 「準決勝のイタリア戦は、アルゼンチン戦と同じような展開になるだろう。イタリアは、組織だけではなく個のチカラでも傑出しているから、我々にとって厳しいゲームになるはず。ただ、いまのドイツ代表は、(イタリアとの親善試合で大敗を喫した)3月の頃とは比べものにならないくらい成長しているし、いまでも大きく発展しつづけている。厳しい試合になるだろうが、最後は我々が勝負をモノに出来ると確信している」。

 「潜在力の高いブラジルやオランダは消えたし、アルゼンチンは我々が南米へ送り返した。ここからは、トーナメントを通じて成長したチームが主導権を握る。その意味では、我々と同様、フランスも大きくステップアップした強敵だ」。

 そんな質疑応答のなかで、こんな興味深いコメントもありました。それはゴールキーパーについて。特に、準々決勝アルゼンチン戦のPK戦に入る前のGKレーマン。

 「2002年ワールドカップでのオリバー(カーン)もそうだったけれど、ゴールキーパーは孤独な闘いなんだ。彼らは、自分自身と極限まで闘っている。その緊張感と集中力には、本当に近寄りがたいものがある。特にPK戦を前にしたとき、彼らの緊張感がピーク達するんだ。今回のイェンス(レーマン)もそうだった。そのときの彼は、完全にトランス状態に入っていた。誰も近寄れない。そして彼はやってくれた。本当に素晴らしいと思ったよ」。

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 先ほど、こんなメールを受け取りました。たぶん「応援」メールのつもりなんでしょうね。「湯浅さんは、1998年のときも2002年のときも、いろいろとご自分の失敗エピソードを紹介してくれていたじゃありませんか・・でも今回は、まったくなし・・大会に集中しているということなんでしょうね・・これからも身体に気をつけて頑張ってくださいね・・」だってさ。

 もちろん、毎日バカなコトをやっているけれどネ・・。分かりましたよ、じゃ一つだけ紹介しましょう。それは、決勝トーナメント一回戦のブラジル対ガーナ戦が行われたドルトムントでのこと(6月27日)。試合をプレス席で観戦した後、メディアセンターで、次のフランス対スペイン戦も観戦しました。フランスのブレイクの予兆を感じ、ちょっとエキサイトしたことを覚えています。そしてその後で、NHKのための原稿を書き上げて日本へ送り、さてホテルへ帰ろうとクルマまで戻ったときのことです。時間は、既に2530時を回っている。

 どうも運転席のなかが明るい・・。リモートコントロールのボタンを押しても、ロックが解除されない・・。おかしい・・。何度も、何度も、リモコンのボタンを押すのだけれど、クルマはうんともすんとも言わない。もしかしたら、クルマを間違えたのかもしれないと、窓越しに車内をみたけれど、やはり自分のクルマ。そしてそのとき、鳥肌が立ってフリーズした。「アッ、クルマのライトを消し忘れた!」。バッテリーが完全に上がってしまっていたから、ドアロックが電動で解除されるはずがない。「クルマのなかに入れない」のだからボンネットを開けられない・・これでは、誰かに頼んでバッテリコードを貸してもらうわけにもいかない・・さて困った・・。

 仕方なくメディアセンターへとって返し、日本での「JAF」に当たる組織「ADAC」の電話番号を調べてもらい、電話を入れたという次第。そこで担当の方が、「あなたのクルマはメルセデスですね?」「はい、そうです」「そのリモコンのキーは手元にあるんですよね?」「はい、あります」「そうですか、では20分で現地に到着します。費用は、現金で120ユーロかかります。現金は手元にありますか?」「はい、あります」。

 ちょっと落ち込み気味の湯浅は、ロボットのように受け答えするのが精一杯なのですよ。そして、ニコニコと微笑みながら到着した「ADAC」の担当者にクルマのリモコンをわたし、一緒にクルマのところまで彼の作業車で行く。そこで彼が、おもむろに、リモコンに「内装」されている本物のキーを取り外し、ドアのキー穴に差し込んだのですよ。そこで私は、思わず「アッ! そうか!!」という頓狂な声を出したという次第。

 クルマのリモコンには、本物の「ハードウェア・キー」が内装されているのです。私は、疲れていたこともあったし、気が動転していたから、すっかりそのことを忘れてしまっていた。だから、「アッ・・電気がなくなってしまった・・これじゃ絶対にドアは開けられない・・安全性の高いメルセデスだから、ロックを外すのは並大抵のことじゃない・・これはエキスパートを呼ぶしかない・・」と短絡的にイメージしちゃったというわけです。

 そして担当者の方は、ニコニコしながらドアを開け、なかにあるボンネット用のレバーを引いてボンネットを開け、作業車からバッテリコードを引っ張ってきて私のクルマのエンジンを掛けてくれたという次第。全部で2分の作業でした。もちろん気丈な湯浅は、ニコニコと微笑みながら、「本当に助かりました・・夜中に出動していただいて心から感謝します」と、120ユーロ(約1万7千円くらい)を支払ったという次第。

 バカだよね、ホント。寒い国のドイツ人は、多くの人が「バッテリーコード」をクルマに常備しているものなのですよ。だからメディアセンターへ行けば、誰かしら持っている人を見つけられたはず。ドアは、自分で開けられるわけだからね。後は問題なく「自分で」解決できた・・。フ〜〜ッ! ホント、面目ない。

 そして湯浅は、そんなアクシデントにもめげずに、ワールドカップをとことん楽しみつづけるのでありました。明日は、ドイツ公式トレーニングを「初めて」観察しに、ドルトムントのヴェストファーレンシュタディオンまで行こうと思っています。面白いことがあるはずだから、レポートします。ではまた・・
 



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