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2006_ワールドカップ日記・・決勝は、まさに典型的なファイナルという展開になりました・・(2006年7月9日、日曜日)

フ〜〜ッ!! ゲームが終了したとき、皆さんと同じように、自然と大きなため息が出ていました。その横では、イタリア人ジャーナリストが抱き合って喜びを爆発させている。彼らの美学に則った勝利!? まあ、そういうことなんだろうね。

 もちろん、どんなカタチだって、勝ちゃワールドチャンピオンだからね。それにイタリアは、準決勝のドイツ戦では、素晴らしく内容の濃いサッカーを展開していたしね。だから私は、少し時間は必要だったけれど、最後はイタリアに対しても、心からの拍手をおくっていましたよ。優勝、オメデトウ・・。

 この試合は、まさに典型的な決勝戦という内容でした。両チームともに、前線ブロックと中盤&後方ブロックが、まさに「分断」といった状態なのです。

 例えばイタリア。トッティーがドリブルで突っ掛けていくというシーンを想像してください。そこに絡むのは、最前線のトーニと、上がり目ハーフのカモラネージだけ。他の7人は、きれいに「ツーライン」を組んだ状態で、一つのユニットとして「軽く」押し上げていくだけなのです。もちろん、フランスのクリアボールを(彼らが押し上げている)高い位置でカットできたら、すぐにでも「イタリアのツボ」の素早く鋭いコンビネーションを仕掛けていったり、そのまま中距離シュートを見舞ったりするんだろうけれどね。

 要は、常にイタリアは「次の守備に備えながら」プレーしていたということです。あのシーンでタテのポジションチェンジや、後方からの(オーバーラップなどの)サポートがなければ、やはり何かが起きる可能性は、限りなく小さなモノになってしまうからね。もちろん、トッティーが、そのままドリブルで突破してシュートを決めちゃうかもしれないけれど、当然それは「偶然ファクター」の方が強い。彼らの攻めでは、主体的にゴールを奪いにいくための「必然ファクター」は、あまり感じられませんでした。

 その視点では、フランスも似たり寄ったりという感じだよね。とはいっても彼らには、ジダンとアンリがいるし、ビエラもいる。後半の立ち上がり10分くらいまでは、アンリのドリブル勝負が効果的に決まったり(二度も、イタリア背後の決定的スペースまで相手を抜き去っていった!)、押し上げたビエラが決定的なコンビネーションを仕掛けたり、はたまたジダンが、例の二軸アクションでイタリア選手を振り回してドリブルで突進し、最後は、相手を釣り出してスルーパスを通したり等、流れのなかでのチャンスメイクが上手く回りそうな感じにはなっていたのですよ。でも後半10分には、タテのポジションチェンジ(攻撃の変化)の演出家であるビエラが肉離れで交代してしまう・・。

 ビエラと交代したディアッラは、たしかに局面でのボール奪取勝負では水準以上のチカラを誇示するものの、次の攻撃では、まったくカゲが薄い。またボールがないところでの守備イメージにも、鋭いモノを感じない。とにかく止まっている状態が目立ちすぎるディアッラなのです。やはりビエラの穴は絶対に埋まらないということか。

 そして時間だけが経過していったという次第。イタリア人は、ブッフォンという天才GKに運命を委ねたんだろうね。延長にはいっても、まったく同じテンポのサッカーに終始していたからね。それも、延長後半も残り10分というタイミングでジダンが退場させられたにもかかわらず、まったくペースアップすることはなかった・・。

 でもPK戦の内容を見ていて、まあ、納得していましたよ。とにかくキッチリと、一本一本決めていくイタリアなのです。守っても、ブッフォンがフランスのキッカーを威圧する。その時点でフランスには、ジダンもビエラもアンリもいないからネ。心理的なリーダーは誰もいなくなってしまったのでした。

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 この試合については、まあ、こんなところでしょう。

 さてこれでワールドカップの全スケジュールが終了しました。ということで、私のジャーナリスティックな仕事も一段落します。とはいっても、コーチ湯浅健二の仕事は、まさにここからはじまるのですよ。今大会で得られた様々な知見に基づく意見交換とかね。そして今月末には、私も会員の、ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟が主催する国際会議(ハノーファーで開催)にも出席しなければいけません。まあそこには、色々なサッカーの重鎮たちが集結するからね。期待しましょう。

 さて、様々な方々との意見交換ですが、そのスタートとして、昨日と一昨日には、「哲学者、小林敏明さんとの対話(その1)」「哲学者、小林敏明さんとの対話(その2)」という記事をアップしました。是非ご一読あれ。この記事は「The 対談」のシリーズに編入する予定です。

 またここ数日のうちに、東京新聞に、2006年6月10日から7月10日まで隔日で掲載したコラムを、順次アップしていく予定です。私は読んでいないのですが、聞くところによると、そのタイトルは「湯浅健二の視点」というのだそうな。さて・・
 



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