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- 2006_ワールドカップ日記・・オリバー・カーンの感動的なインタビュー・・そして、アルゼンチンに競り勝ったドイツ代表・・(東京新聞に2006年6月10日から7月10日まで隔日で連載したコラムから)・・(2006年7月20日、木曜日)
- 「いま、自分の新しい側面を発見している」。
ドイツサッカー協会主催の定例記者会見。日替わりで、選手や監督が壇上に立つ。そしてこの日、はじめてオリバー・カーンが登場した。大会がはじまる数週間前に、ユルゲン・クリンズマン監督から、イェンス・レーマンをレギュラーGKにすると伝えられた。そしてその数日後に、控えキーパーとしてでもチームに残ると記者会見で述べた。
あれほどのスーパースターだし、これまでに何度も物議をかもす強烈な自己主張を繰り返してきた彼のことだから、もちろん全てのマスコミがその言動に注目していた。しかし出てきたのは、スキャンダルとは無縁の、チームワークに徹するポジティブな態度だった。いまドイツでは、カーンに対する敬意が広がりをみせている。
その会見内容は、まさに、国中から沸き上がって一点に集約するスピリチュアルエネルギーによって一つにまとまったドイツ代表を象徴していた。
それにしても、こんなリラックスしたオリバー・カーンを見られるとは。一昨年ドイツ代表が来日したときの(記者会見での)ピリピリとした極限テンションからすれば、まさに別人ではないか。正GKレーマンへの賛辞も含め、インテリジェンスあふれる余裕の質疑応答で語られていたように、いまの彼は、様々な意味でチームに貢献できていることを誇りにさえ感じているということなのかもしれない。
またそれは、グッドルーザー(いさぎよく負けられる人)たることの意義を体感し、そこから何かを学習しているプロセスとも言えそうだ。人が学ぶのは、やはりネガティブな出来事からの方が多いということか。(了)
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この定例会見は、ベルリンの国際会議場で、毎日12時30分から行われていました。そこでは、監督や選手たちが交代で出席するわけですが、6月28日に初めてオリバー・カーンが壇上に立ったというわけです。
注目度はもちろんダントツ。ものすごい数のジャーナリストが詰めかけました。ただしそこでの雰囲気は、それまでのオリバー・カーンの記者会見とはまったく別物。リラックスしたハイクオリティーな「対話」が繰り広げられました。オリバー自身も、ナショナルチーム内での自分自身の立場と態度に自信があったに違いありません。それに裏付けされた「余裕」で受け答えするオリバー・カーン。だから質問する方も、おのずとポジティブな内容に終始する。互いに認め合っているからこそのポジティブな対話コンテンツの連鎖。こんなことは今までになかったことです。
「これまでのイェンス(レーマン)の出来は素晴らしいの一言だよ。ミスらしいミスはまったくない。彼が後方に控えていることで、守備ブロックも非常に落ち着いている・・」。そんな発言が出たときには、会場全体が微笑みの静寂に包まれたものです。
グッドルーザーに「なれること」は、その人の、人間としての深み(優れた人格)と自信の証です。そのときのオリバーは、グッドルーザーであることを楽しんでいるようにも感じられました。オリバー・カーンの「そのときの状況」を深く理解しているドイツ全土が、彼の放散するオーラによってポジティブな感覚に包まれたことは言うまでもありません。そしてそれが、6月30日のアルゼンチンとのPK戦勝利に結びついた!?
次は、そのアルゼンチン戦からピックアップしたコラムです。テーマは、安定してきたドイツ守備ブロック。
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ドイツの守備ブロックが安定してきた。世界トップクラスの才能集団であるアルゼンチンとの準々決勝。南米の雄が魅せつづける、ドリブルやタメといった個人プレーと、素早く人とボールを動かす組織プレーとの高度なバランスはまさに絶品。ただ、そのアルゼンチンが、流れのなかでは、ほとんどチャンスを作り出せなかったのである。
大会前は不安視されていたドイツ代表の守備が、ここにきて急速に進化しているのだ。私は、その要因をこう考える。選手が、主体的に、やりやすい方法を選択した・・と。
ドイツ代表のコーチ、ヨハネス・レーヴは、最後の最後まで一線に保つフラットライン守備を要求してきた。決定的な瞬間を見計らってラインを「ブレイク」し、パスをカットしたり、抜け出そうとする相手を潰すというスマートな守備。ただ、それを実現するためには高い能力が要求される。理想と現実のギャップ。それが、日本戦でも露呈することになる。
中田英寿を中心にした素早いコンビネーションで、何度もウラを突かれてしまうドイツ守備ブロック。そのことで選手たちが覚醒した。より早く、実利的なタイミングでラインを「ブレイク」し、マンマークへ移行するようになったのだ。それは、たぶん選手たちの自主判断。やらされているのではなく、自らの判断でプレーする。不確実な要素が満載されたサッカーだからこそ、そんな主体的な姿勢が本物のステップアップを促す。
もし、ドイツ代表のクリンズマン監督にインタビューする機会があったら聞いてみよう。「守備が安定したのは、日本戦からの教訓が活かされたからだと思うのだが?」(了)
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