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2006_ワールドカップ日記・・イタリアの「ツボ」・・(東京新聞に2006年6月10日から7月10日まで隔日で連載したコラムから)・・(2006年7月22日、土曜日)

今日のコラムは、7月4日にドルトムントで行われたドイツ対イタリアの準決勝から、「イタリアのツボ」というテーマをピックアップしたものです。

 このエキサイティングマッチは、ドイツを主体にしてもイタリアの視点でも、いくつもの興味深いテーマを探し出せるという、大会のなかでも屈指の好ゲームになりました。ドイツが、全体的には押されながらも例によっての積極プレッシングサッカーから何度も決定機を作れば、イタリアも、何人もの仕掛けイメージがピタリとシンクロしたダイレクトの崩しコンビネーションを繰り出していく。

 でも結局は、延長後半に飛び出したグロッソのスーパーシュートで決着が付いてしまう。観客のほとんどは、アルゼンチンに競り勝ったPK戦の再来を期待していたんだろうけれどね。とにかく、あの時間帯で、あの正確なシュートを飛ばす精神力は、さすがにイタリア。本当に敬意を表していた湯浅なのですよ。ということで、そのゲームでは、イタリアを主体にテーマをピックアップした次第なのです。

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 イタリアのツボ。私は、彼らの勝負強いゲーム展開をそう呼ぶ。

 その絶対的な基盤は、言うまでもなく強力な守備ブロックにある。ただ私は、それ以上に、(セットプレー以外の)ゲームの流れのなかで繰り出す特徴的な仕掛けも、イタリアの勝負強さの根幹にあると考えている。

 ドイツとの準決勝。イタリアは、その最終勝負を粘り強く繰り返した。確実なボールキープから、一瞬のスキを狙った「ダイレクト」の鋭いタテパスでドイツ守備ラインの背後に広がる決定的スペースを突いていこうというのだ。それには、カウンターの場面もあるし、組み立ての状況もある。

 前半16分には、中盤まで下がってボールキープに参加していたトッティーが、素早いモーションからループパスを送り、それが、二列目から決定的スペースへ走り抜けたペロッタに見事に合った。まさに「あうん」の呼吸。最後はドイツの守護神レーマンに止められたが、多くのドイツ人で埋まるスタンドが一瞬静まりかえったものだ。

 それは微妙なタイミングの勝負コンビネーション。パスレシーバーとの「呼吸」がビタリと合致することが条件だから、その多くは失敗に終わる。ただ彼らは、粘り強く繰り返すことで少ないチャンスをモノにしようとする。とにかく、パスを出す方も受ける方も、その「ダイレクト・スルーパス」という最終勝負イメージで統一されているから強い。10本に一本でも通れば、高い確率でゴールになる。そして後はその一点を守り切ればいい。

 ワールドカップ決勝は、極限の一発勝負。それこそ、「イタリアのツボ」の真骨頂を発揮する場面ではないか。(了)

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 また、こんな仕掛けもありました。

 イタリアのゲームメイカー、ピルロが中盤でボールをキープし、ゆっくりと、その横にいるカモラネージへ横パスを出す・・ピルロは、動かずにリターンパスを待っている・・同時に、最前線のトーニと、二列目のペロッタが、横への動きをスタートする・・それが勝負の瞬間・・カモラネージがピルロへリターンパスを返した瞬間、パスレシーバーであるトーニとペロッタが、アクションを、横への動きからタテへの全力ダッシュへ切り替えて抜け出す・・そしてピルロが、ダイレクトで、ズバッというタテパスを決定的スペースへ送り込んだ・・ってな具合。

 イタリアのツボの絶対的なベースは強固なディフェンスブロックにあり。そして、そこでの「忍耐」を基盤に、一発勝負を結実させるというのが(そしてその一点を堅実に守りきるというのが)イタリアのツボと呼べる「ゲーム展開」というわけです。

 まあ、その「イタリアのツボ」を構成する要素を分解すれば、ポジショニングバランスとマン・オリエンテッドが素晴らしく高質にバランスした守備とか、ブレイク後の忠実なマンマークとか、強烈に強い「1対1」とか、カウンターのカタチとか、かなり多くの「ツボ・ファクター」が出てくるけれど、あくまでも湯浅は、それらの要素の総体としての「ゲーム展開」を、イメージ的に「イタリアのツボ」と呼ぶことにしているのです。
 



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