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2006_ワールドカップ日記・・人類史上最高の「異文化接点パワー」・・(NHKデータ放送&同HP連載コラムから)・・(2006年7月25日、火曜日)

さて今日から、NHKのデジタル文字放送と同HPで連載したコラムのなかから、試合レポート的なものを除くいくつかを紹介しようと思います。初日は、サッカーが秘める異文化接点パワーについて。

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 「私たちは、メディアの方々が快適に仕事が出来る環境作りに全力を尽しています。 我々にとってメディアの方々は、まさにパートナーですからね」。

 ここは、ドルトムント、ヴェストファーレン・シュタディオン(ドイツ語でスタジアムの意味)に隣接しているメディアセンター。そこで、FIFA(国際サッカー連盟)から派遣されているメディアマネージャーの方が私の問いかけに快く答えてくれた。なるほど快適だ。また彼は、そのほかにも色々と便宜を図ってくれた。

 「4年前のワールドカップでは、日本の皆さんに本当にお世話になったんですよ。フレンドリーで優しい人々が、まじめに、そしてすばらしく効率的にマネージメントしている姿は本当に印象的でした。あれほどすばらしい経験は、それまでなかったことです。だから日本の方々には、出来る限りの恩返しをしたいと思っているのですよ」。

 そのマネージャー氏が、日本を懐かしむように話してくれた。

 いま私は、4年前の日韓ワールドカップで日本の方々がなした「何か」から恩恵を受けているわけだ。いまだに、当時活躍された外国からの「実働部隊」の方々が、(マニュアルには書かれていない日本的な気遣いも含め!?)心のこもったホスピタリティーを提供されたことに感謝していた。そして思ったものだ。やはり日本人の誠実さはすばらしい伝統だし、それは心の深いところに残るものだ。

 2002FIFAワールドカップで、サッカーを通じた国際親善の成果が今でも広がりつづけていることを、4年という月日がたった今だからこそ、より強く体感した。

 私は、サッカーを、人類史上で最大のパワーを秘めた「異文化接点」だと表現することにしている。平たく言えば、「生活の仕方や感性」などは人それぞれに違うけれど、サッカーを通せば、さまざまに違う者同士が、より簡単に、より深く知り合える可能性が格段にアップするということだ。サッカーが好きな者同士ならば、国籍や社会的地位、性別や年齢など関係なしに、抵抗感なく近づけるキッカケになる。サッカーが、互いの警戒心を解きほぐし、心をつなぐ媒体として機能するのである。そこでは言葉の壁などないに等しい。サッカーにはそれだけの十分な「パワー」が備わっている。

 その最大のイベントがワールドカップなのだ。そんな機会を生かさない手はない。

 ドイツを訪れた日本人も、ドイツ人だけではなく、世界中から訪れている人々と友好の輪を築いているに違いない。町中で、目が合うだけで自然に交わされる小さなコミュニケーション。「日本は残念だったな・・」とか「ドイツは良いチームになっているね・・」といった単純な内容を、言葉だけでなくジェスチャーなども駆使して表現する。それは、お互いに、本当に楽しいひとときに違いない。サッカーには唯一の正解などないから、誰もが「自分の主張」を展開できる。そのこともまた、サッカーが史上最強の「異文化接点」として機能できることの重要なバックボーンかもしれない。

 私も、仕事以外で、サッカーの異文化交流パワーを存分に楽しませてもらっている。
ホテルやレストラン、また電車やアウトバーンのレストエリアでも、首から下げたプレスIDカードをめざとく見つけては、さまざまな人たちが話しかけてくる。そして、自分なりの意見を、これぞまさしくドイツロジックってな具合に、ほかに正解などないという勢いで主張してくるのである。ホント、至福のひとときではないか。(了)
 



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