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2006_ワールドカップ日記・・たしかにガーナも潜在的なチカラはあるけれど(トルコ対ガーナ、1-1)・・(2006年5月26日、金曜日)

今日は、ボーフムまで足を伸ばし、トルコとガーナのテストマッチを観戦してきました。ボーフムと言えば、ルール工業地帯の真ん中にある中堅の町。もちろんブンデスリーガのクラブ(VfL Bochum)もありまっせ。昨シーズン、二部に落ちたけれど、今シーズンはすぐに一部への返り咲き(ブンデスリーガ二部で優勝!)を決めました。以前、「Aライセンス」のコースで一緒だったペーター・ノイルーラーが監督を務めていたことで、何度か練習や試合を観に行ったことがありました。だから懐かしかった。

 この試合は事前にプレス申請をしていなかったから、とにかく早めにスタジアムに到着して主催者と交渉しなければ・・と、ケルンのホテルを4時には出発した次第。ケルンからボーフムまでは、約100キロの道程。普通だったら、まあ45分もあれば到着する距離です。ところがどっこい、またまた道路工事が原因の大渋滞に巻き込まれてしまったのですよ。ケルンを取り巻く「環状アウトバーン」での工事。いやはや参った。そこで1時間もロスしてしまったことで、結局スタジアムに到着したのは1800時でした。すぐにボーフムのオフィスへ行って交渉開始。でも、すぐにプレスチケットを出してくれました。まあプレス席に余裕があったからなんだろうね。とにかく、よかった・・。

 その後、ちょっと安心したこともあったんでしょうね、急激に腹が減ってきた湯浅でした。それで、ボーフムの中心街へ繰り出すことに・・。ドイツでは、どの町の「セントラル」にも、例外なく歩行者天国のショッピングストリートがあります。ケルンやハンブルクといった大都会では、その規模が大きいことで大味の雰囲気になってしまうけれど、ボーフムくらいの町では、こぢんまりと、ちょうど良いサイズの散策ストリートといった具合になるのですよ。

 このことは、日本代表が本拠地にする「ボン」にも当てはまります。そこの歩行者天国ショッピングストリートは、ちょうど良いサイズの小道が縦横にのびています。ボンを訪れる日本人の方々も、気持ちよく散策を楽しめること請け合いです。

 あっと・・またまた前置きが・・それでは試合レポート。このテストマッチには、二つのまったく異なったゲーム展開が含まれていました。一つは、トルコが完全にゲームを掌握し、ヨーロッパとアフリカのレベルの差を見せつけるといった展開。そしてもう一つが、アフリカ特有の高い個人能力が組織的にまとまれば、世界を席巻するくらいの無類の強さを発揮するという事実を体感させてくれた展開。

 ゲームは、立ち上がりからトルコがガーナを圧倒します。とにかく守備での「早さ」の次元が違うのですよ。例によって、局面でのボールのこねくり回し傾向が残っているガーナだから、すぐにボール周りにプレスの輪を演出されてしまう。相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するトルコ選手たちのチェイス&チェックの素早さと高い実効レベルは、まさに「ホンモノ」なのです。そして作り出された「守備の起点」を中心に、効果的な協力プレス網を組織しちゃう。その守備アクションは、早く、鋭く、厳しくダイナミック。ガーナは、まったく手も足も出ないといった体たらくなのですよ。そんな流れのなかで、相手のバックパスをカットしたトルコ選手が右サイドからラストパスを出し、それを、中央スペースに走り込んできたニハトが技ありのダイレクトシュートを決める。前半17分のことでした。

 私は前半のサッカーを観ながら、こんなことを考えていました。ガーナは、個人的な能力は高いのに、それが組織としてまとまっていない・・これは、セルビア人の監督に「組織プレー」をたたき込まれ過ぎたことで、去勢されちゃったかな?・・パスを受ける前に考えておかなければならないのに、次の仕掛けに対するイメージ作りが十分じゃないからボールを持ってからの判断が遅くなってしまう・・以前だったら、個人勝負で局面を切り抜けるといったシーンも多かったはずだけれど、今の彼らはパスを意識しすぎているから(!?)、遅れたタイミングで中途半端にパスをつなぐということになってしまう・・とにかく、これだけ攻守にわたる組織プレーのレベルが違うのだから勝負にならない・・そのガーナが本大会に出場し、こんな素晴らしいモダンサッカーを展開する強いトルコが(ウクライナ、スイスとの競り合いに負けて地域予選落ちしたことで)本大会に出られない・・ちょっとアンフェアだな・・等々。ところがどっこい・・

 そうです、後半になって(まあ、後半15分の同点ゴールが決まってからといった方が正確なのですが・・)ジリ貧のガーナのサッカーが大きく持ち直すのですよ。そこでのキーワードは、もちろん、攻守にわたるボールがないところでのプレー内容。結果が伴うようになったから、「周りのプレー」も活性化していったということです。やはり良いサッカーは、クリエイティブな無駄走りの積み重ねだ・・。攻守にわたって抜群の機能性を魅せはじめたガーナ選手たちの「主体的なボールなしのプレー」を観ながら、そんな普遍的なテーマを反芻していた湯浅です。

 その「立ち直りプロセス」は、こんな感じだった!? カウンター気味の仕掛けフローのなかで、左サイドのアッピアから、逆サイドでフリーになっていたアモアへ素晴らしいサイドチェンジパスが通り、そのまま同点ゴールが決まる・・そのゴールをキッカケに、自信を失っていたガーナ選手たちが覚醒する・・そして積極プレーに対する意志を取り戻したことは、「まず」中盤での守備の起点が連続して作られるという状況変化に現れてくる・・守備の起点を意識したガーナ選手たちが、次のボール奪取勝負に積極的に動きはじめたのは当然の流れだった・・希望こそが最高のモティベーションなのだ・・そして高い位置でボールを奪い返せるようになったガーナは、攻守の素早い切り替えをベースに、守備での「ボールなしの動き」が、そのまま次の攻撃の流れとなって大波を形成していく・・それこそがサッカーにおける組織プレーの善循環・・そんな組織プレーの善循環があったからこそ、彼らの高い個の能力が、より効果的に活かされはじめた・・

 とにかく後半の15分過ぎからは、試合が、互いに攻め合うというダイナミックなサッカーへと変貌を遂げていくのですよ。それからは、時間を忘れて、両チームが展開するダイナミックサッカーをとことん楽しませてもらいました。でもまあ、互いに積極的に攻め合ったからこそ、トルコの方が、攻守にわたる組織プレーの内容で一日の長があると強く意識されられたことも確かな事実ではあったけれどね。やはり、「サッカー環境」というイメージトレーニング素材の質の差なのだろうかネ。まあ、プレスコンファレンスの席では、ガーナ監督のデュイコビッチさんは、決してそのことを認めようとはしなかったけれどネ・・。

 



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