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2006_ワールドカップ日記・・クロアチア対イラン戦レポートと、ジーコのリマーカブルな発言・・(2006年5月29日、月曜日)

今日(29日の月曜日)は、大会期間中の、クルマと電車をうまく使い分ける移動スケジュールを確立するために、まずボンの中央駅へ行って情報を収集し、ついでの、ボンの博物館を借り切った日本代表のインフォメーションセンター(G JAMPS)を見学してから日本代表の「試合日前日トレーニング」を観察するつもりです。

 でもその前に、昨日行われたクロアチア対イラン戦の録画放送をしっかり観戦して分析することにしましょう。私が宿泊しているホテルは「プレミア放送(有料放送)」と契約していないため、ユーロスポーツの録画放送に頼るしかないのですよ。それでも、このユーロスポーツが「こまめ」にゲームを拾ってくれるから本当に助かっているっちゅう次第なのです。

 さて、クロアチア対イラン戦ですが、結局「2-2」で終わったとはいえ(先制ゴールと勝ち越しゴールはイランが入れたから、彼らは、クロアチアを相手にして二度もリードを奪ったことになる!)、試合の実質的な内容は、クロアチアに「明確な」一日の長あり・・といったものでした。

 例によって、中盤でのボール奪取勝負(=守備)プロセスに明確な差がある。1対1の勝負(ボールをめぐる競り合いの)コンテンツだけではなく、守備の起点(相手ボールホルダーを抑える味方選手)をベースに次のボール奪取勝負のコンビネーションイメージを描写し、それをチームメイトと「シェア」する戦術的な能力など、クリエイティブな組織ディフェンスでも明確な差が見え隠れするのですよ。

 また攻撃にしても、組織プレーや局面での勝負にしても明確な差が感じられる。人とボールを動かすという組織プレーの視点では、たしかにイランもある程度は洗練されてきてはいるけれど、個の勝負をいかに効果的に組織パスプレーに組み込んでいくのかという「組織と個のバランス」というファクターでは、両チームの間に発想レベルの差があるのですよ。

 要は、結果は別にして、内容的には、クロアチアがイランを凌駕したゲームだったということ。もちろんそのことは、両チームの「ボール奪取コンテンツ」と「シュートチャンスの量と質」の差に如実に現れていました。

 ここで言いたかったことは、この試合のコンテンツを、(2-2という結果だけを根拠に)ホームであるにもかかわらず、クロアチアがイランに苦戦した・・だから日本も・・などといった短絡的なニュアンスで捉えてはいけないということです。そりゃ分かりやすいよね。結果だけを見れば、日本と同格の実力を有するイランが、相手のホームで、先制ゴールや勝ち越しゴールを決めて、クロアチアを存分に苦しめたという「見え方」なんだからね。でも事実は違う・・。

 この試合でも、右サイドのスルナ(崩しのドリブルと正確なクロス)、プルショとクラスニッチのトップコンビ、攻撃のジョーカー、オリッチ、攻守にわたって堅実でクレバーな実効プレーを魅せつづけるバビッチなどが目立っていました。またこの試合では、ケガをしたニコ・コバッチの代わりに出場した、ブレーメンのブラニュスも存在感を魅せていました。

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 さて「G JAMPS」。でかい・・きれいでモダン・・余裕のあるスペース・・機能性の高い施設コンテンツ・・等々、やはり「日本の仕事」のクオリティーは高いと感じさせてくれる素晴らしい施設です。ここだったら、日本代表の顔として、またドイツ社会との異文化接点として、十二分の機能を果たしてくれるに違いありません。要は、イメージ・・全てはまずイメージから・・だからネ。

 今日のトレーニングだけれど、まあ、内容については別段採り上げるべきモノはありませんでした。試合の前日トレーニングだしね。それでも、ジーコの記者会見には、なかなか含みのあるコンテンツがありましたよ。

 「守備ばかりに気を遣うのは問題・・要はバランスだから(そのようなニュアンスの発言をしていた!)・・」。「中盤から最終ラインにかけての守備について選手たちのなかでディスカッションがあったようだが・・」という質問に対して、ジーコがそんなことを言っていました。これは、ちょっと意味深。より具体的な、「中田ヒデと何度もグラウンド上で話をしていたが、そこでは、どんなことを話したのか・・」という質問に対しては、「彼とはイタリア語で直に話せるからネ・・まあ、ごく普通の会話を交わしていただけだよ・・」とケムに巻いていましたからね。

 この「バランス」的なニュアンスが大事だと感じていた湯浅でした。要は、選手たちに与えられた基本ポジション(基本的な戦術的タスク)によって、チーム戦術に対する見方・考え方がガラッと変わるということです。怖がって、より高い安全戦を追求する傾向がある選手の場合は、とにかく「まず」守備的なポジションを埋めることを要求するだろうからね。でも、ラインを押し上げて、前で勝負すれば、全然問題ないのにネ・・。どちらにしても、スリーバック(≒ファイブバック)に守備的タスクがメインの福西も入るわけだから、守備ブロックの機能性にはまったく問題はないはず。要は、中田ヒデ、福西、中村俊輔の「センター・トリオ」のプレーイメージに、攻守にわたって、より積極性を前面に押し出すニュアンスの「バランス感覚」を注入していくということです。そんなイメージ作りが大事なのですよ。オーストラリアにしてもクロアチアにしても、中途半端にディフェンシブになったら完璧にやられちゃうだろうからね。

 固定されたメンバーに関する質問については、「今のメンバー(中沢、坪井、宮本のスリーバック・・加地とアレックスの両サイド・・福西と中田ヒデの守備的ハーフコンビ・・中村俊輔のトップ下・・そして高原と柳沢のツートップ)が最もパフォーマンスがいい・・ウイニングチームは変えるべきではない・・もちろん、そのチームのいじり方には、様々なアプローチがあるけれど、それもケースバイケースでの対応ということになる・・」と、明快に答えていました。

 私は理解はしていたけれど、100%アグリーではありません。私は、スリーバックではなくフォーバック(加地、中沢、宮本、アレックス)で試合に臨むべきだと常に言いつづけていました。その最終ラインの前に福西と稲本の守備的ハーフコンビを置き、攻撃的な中盤に、中田ヒデ、中村俊輔、そして小野伸二の攻撃トリオを配置する(彼らのプレー姿勢の大前提は、例えば、相手が後方から飛び出していったら、とにかく最後の最後までマークしつづけるなどの高い守備意識!!)。そしてワントップに高原直泰を置く。私は、「それ」がベスト布陣(ゲーム戦術)だと思っているのですよ。まあ・・ね・・100人の監督がいれば、100通りの人選とゲーム戦術があるわけだからネ・・。

 最後の、リマーカブルな(注目に値する)ジーコの発言はこうでした。「世界中のサッカーが進歩していることで、その差が縮まっている・・だから、昔のような絶対的な優勝候補はいない・・」。この発言には、まさに「I Understand & Agree」でした。本当に、世界のチカラは拮抗している。だからこそ、今回もエキサイティングなドラマが展開されること請け合いなのですよ。それにしても、やはり世界のジーコの発言は説得力が違うよな・・。

 



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