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2007_ブンデスリーガ後期開幕戦レポート・・サッカーの原風景ともいえる雰囲気にあふれたアレマニア・アーヘン・・(2007年1月29日、月曜日)

さて、アレマニア・アーヘン対バイヤー・レーバークーゼン。往復で600キロ以上もクルマを飛ばさなければならなかったけれど、試合後(監督の記者会見後)は、本当にルンルン気分で帰路につくことができましたよ。ゲーム内容が素晴らしかったし、何といってもアーヘンのスタジアムには、郷愁をさそう、サッカーの原風景ともいえる雰囲気がありましたからね。ホント、出かけていってよかった。

 スタジアムは、写真のとおり、こぢんまりとしたモノです。2万人も入れば満杯になってしまうらしい。もちろんこの試合も立錐(りっすい)の余地なし。まあ、端的に表現したら、古ぼけた(ちょっと小汚い)旧態然のスタジアムといったところなのです。とはいっても、雰囲気は、まさにホンモノ。手を伸ばせば、選手たちに触れるってな感じ。そんな間近で、両チーム選手の全力のせめぎ合いを体感するのだから、その迫力は推して知るべしってな具合。

 記者席の下の一階から両ゴール裏までは全て立ち見席。シート席は、バックスタンドとメインスタンドの二階部分だけです。それに、ごく一部しか屋根でカバーされていない。そんなところも、まさに原風景なのですよ。本当に、懐かしさの感覚で胸がいっぱいになったモノです。

 この日は、ず〜っと冷たい雨が降りつづいていたけれど、スタンドから爆発的に放散される応援エネルギーによって、観客に届く前に雨水が蒸発してしまうってな感じ。観客は、心の底からサッカーを楽しみ、オラが村のチームをサポートしている。そのエネルギーがビンビン伝わってくるのがたまらなく心地よかった。それこそ、人々の日常に深く浸透したホンモノのサッカー文化じゃありませんか。

 そんな雰囲気のなか、グラウンド上でも、これ以上ないほどのエキサイティングなドラマが展開されました。

 個のチカラを単純に総計したロジカルなチーム総合力では、明らかにレーバークーゼンに一日以上の長がある。とはいっても、そこはサッカー。アーヘン監督、ミヒャエル・フロンツェックのウデが、グラウンド上の実質的パフォーマンスとして見えてくるかに期待が掛かりました。そして、まさにその期待通りにゲームが立ち上がっていくのです。

 キックオフ後の0分。まずレーバークーゼンが、もの凄い勢いのコンビネーションを炸裂させ、二度、三度と、決定的なシュートをブチかまします。それを、まさに奇跡としか言いようのないスーパーセーブで防ぐアーヘンGKのシュテファン・シュトラウプ。階下の立ち見席が、何度もフリーズしたものです。

 ただ、その後はアーヘンも盛り返していく。立ち上がりは、浮かれて集中を欠いてしまった守備ブロックが徐々に落ち着きを取り戻し、それに伴って、カウンターにも勢いが乗っていったのです。そして前半9分。カウンターからのドリブル突破チャレンジで、アーヘンの選手が引っかけられてPKを得る。先制ゴール!

 それだけではなく、前半30分には、これまたワンチャンスのカウンターから追加ゴールまで奪ってしまうのですよ(エッバースのドリブルシュートがこぼれたところをイビセビッチが押し込んだ)。

 サッカーの原風景を思い起こさせてくれたアーヘンだからね、その時点までは、心からアーヘンを応援していた湯浅でした。二点目が決まったときには、ガッツポーズを出しながら、隣に座るアーヘン関係のジャーナリストと微笑みを交わす。

 とはいっても、やはりレーバークーゼンは実力チーム。彼らが展開するサッカーには組織的なパワーがみなぎっています。人とボールがスムーズに動きつづける魅惑的なコレクト(組織)サッカー。アーヘンが2点リードを奪ってからは、逆に、レーバークーゼンの高質サッカーへのサポート感覚も芽生えてきたものでした。

 特に、中盤のベルント・シュナイダーと、ハンブルガーSVから移籍してきたバルバレスのコンビが素晴らしかった。彼らが司るコンビネーションには、勢いだけではなく、品格のあるクレバーさが備わっていると感じたモノです。この二人を中心に、守備的ハーフのロルフェスや、サイドハーフのバルネッタが頻繁にタテのポジションチェンジを敢行する。もちろん最前線のボローニンやフライヤーは、脇目もふらない全力フリーランニング(ボールがないところでのアクション!)でアーヘン守備ブロックを揺さぶる。

 レーバークーゼンの攻めでは、素早いダイレクトパスと勝負ドリブルが、まさに理想的にバランスしていると感じました。もちろん、効果的に勝負ドリブルを仕掛けていけるのも、バルバレスやベルント・シュナイダーが、うまくボールを動かしながらスペースへのパスを繰り出しているからに他なりません。

 一度は、バルバレスが放ったパスの「タイミングとコース」に鳥肌が立ったものです。軽いバックパスをピタリとトラップしたバルバレスが、ステップを変えずに、そのままの姿勢で(要は、二軸動作で)限りなくダイレクトに近いタイミングの(立ち足を踏み換えずに、トッ、トンッというリズムの動作で)正確なパスを、最前線で待つボローニンへ通したのです。

 何気ないシンプルなサイドキックパス。ただ、その一連の動作には、サッカーのエッセンスとも言える実のあるヒントが内包されているのでした。

 ボローニンは、その(タイミングとリズムの!)パスを完璧に予測していた。ただ、アーヘンのディフェンダーは、まったく予測できていなかった。その「差」によって、ボローニンが、決定的シュートまで行ってしまうのです。そんな「崩しシーン」が、何度も、何度も繰り返されるのです。

 そして終わってみれば、まさに順当といえる「2-3」のレーバークーゼン勝利。

 前半はアーヘンの徹底サッカーを情緒的にサポートし、後半は、レーバークーゼンの高質な組織サッカーに舌鼓を打つ。こんなに徹底して楽しめたゲームも久しぶりでした。帰りの車中でも、レーバークーゼンが魅せたハイレベルなコンビネーションプレーを反芻しつづけていましたよ。そんなイメージトレーニングこそが、私の観察眼を深めてくれるはずだからね。

 




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