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2007_「U22」・・反町監督の不満・・(日本vs香港、3-0)・・(2007年2月28日、水曜日)

「勝ったのに・・勝ったのにガッカリしている・・そんな気持ちですかネ・・」。

 記者会見の開口一番、反町さんがそんな微妙な言い回しをしていた。要は、勝ったから数字的にはオーケーだけれど、内容的には大いなる不満が残ったということが言いたかったのでしょう。

 しっかりと人とボールを動かすコレクティブな(全員が有機的に協力し合う)サッカーを志向する・・。試合前の反町さんのコメントだったけれど、たしかに、そんな理想イメージからすれば、ボールがないところでの動きが(全体的には)活発ではなかったし、出てきたとしても、その動きがうまくボールと連鎖しない、また選手の微妙なポジショニングやイメージ連鎖コンテンツなどの「小さなところ」も含めて、課題は見えていました。

 そんな課題について、反町さんが面白い表現をした。「ジャブ&ジャブで仕掛け、最後は必殺のストレートをかます・・。そんな(変化に富んだ!?)サッカーがやりたかったのだが・・」。フムフム。

 ここで言うジャブとは、しっかりとタテ方向にボールを動かすということだろうね。それによって、対応の動きを取らざるを得なくなった相手ディフェンスブロックのポジショニングバランスを崩し、後方からの押し上げで使えるスペースを作り出すというわけです。そして「ストレート」とは、相手ゴール前の決定的スペースを攻略するようなスルーパスや、タテへの突破からの決定的クロスといった最終勝負をイメージした表現でしょう。

 例えば・・ビシッという最前線への強いグラウンダーパスが、素早いタイミングで(それもサイドへ振るカタチで)鋭く戻される・・そして再び、ダイレクトに近いタイミングで最前線の選手へビシッというパスが飛ぶ・・そのパスが、今度は逆サイドのスペースへ、これまた素早く、鋭く「戻される」・・ってな具合。

 そんな「鋭いジャブ」を繰り出していけば、そのボールの動きに反応する相手守備ラインのポジショニングが「前後にデコボコ」になり、後方からタテへ入り込む(二列目や三列目がオーバーラップしていくための)スペースも出来てくるというわけです。

 まあ確かに、そんな志向イメージからしたら、この試合のプレー内容には不満が残るだろうね。「練習では出来ていたけれど、試合となったら・・そこに課題の視点があると思う・・」。そんな妥協を許さない反町監督のコーチング姿勢には、イビツァ・オシムさんからの影響は少しは反映されているんだろうね。

 とはいっても、日本オリンピック代表が魅せた、立ち上がり15分から20分あたりまでの仕掛けには、大変ハイレベルなコンテンツが詰め込まれていたと感じていました。まあ、香港の最終ラインのコントロールが非常に甘かったという事実もあったわけだけれどね・・。

 水野から、ベストタイミングでタテへ抜け出した平山へのスルーパス(平山のシュートはポスト直撃)。ドリブルで中央ゾーンへ切れ込んだカレンからのスルーパスが、抜け出した平山にピタリと合う(先制ゴールシーン)。水野から、右サイドを抜け出したカレンへ素晴らしいスルーパスが通る(ドリブル&ポストシュート!)。そして、これまた水野から、中央スペースへ抜け出したカレンへ、絶妙の右記黙らすとパスが通る(絶対的なシュートチャンスだったけれど惜しくも・・)。

 こう見ると、右サイドバックに入った水野の活躍が目立ちに目立っていたことになる。実際、彼はよくやったと思いますよ。右サイドに張り付くのではなく、どんどんとロービングしながらグラウンド全域でプレーしていたしね。もちろん、青山と梶山による(水野のサイドゾーンに対する)カバーリングがうまく機能していたことも見逃せない。

 ただその後は、日本代表の攻めが、徐々に香港ディフェンスに抑制されはじめてしまうのです。要は、ボールがないところでの動きが沈滞しはじめたことで「ジャブ」が効かなくなったということでしょう。そんな流れは、後半に選手が交代するまでつづいていた。

 主体的に仕掛けの勢いを再び高揚させていけなかった日本オリンピック代表。たしかにそこには大きな課題が潜んでいます。そんなときにこそ、中盤でのホンモノのリーダーシップが求められる。例えば梶山陽平とか青山敏弘とか。

 やっぱりリーダーになるべき選手は、中盤の底(センターハーフとかボランチとか守備的ハーフとかいった選手たち)だよね。反町さんは、特に梶山をもっと鍛えたらどうだろうか。もちろん、リーダーシップに「≒」のパーソナリティーを鍛えるのですよ。まあその役割は、FC東京の原さんが担ってもいいけれどね。発展している梶山陽平だからこそ、もっと自信と確信を持ってチームを引っ張っていくリーダーを目指すべきだと思う次第です。彼には荷が重いのかな、原さん?

 最後に、平山相太。先日のアメリカ戦でも、この試合でも、いい感じで発展ベクトルに乗っていると感じます。もちろん、攻守にわたって、もっと、もっと「やらなければ」ダメだし、(大きな身体を存分に活用して!)相手のマークを振り切って一人でシュートまで行けなければならないわけだけれど、それでも、以前とはまったく違う期待感が出てきたのも確かなことでした。

 その平山について、香港の監督さんが面白いことを言っていた。「ヒラヤマは、そんなに危険なプレイヤーではない・・どちらかといったら、フレキシブルな動きによってスペースを作るなど、ポストプレイヤーとして周りをうまく使うタイプ・・彼が動けば、こちらのディフェンダーは付いていくからね・・そこで生まれたスペースを、日本選手はしっかりとイメージしていた・・もう一度言うけれど、ヒラヤマは危険な選手というわけじゃない・・」。

 平山のことを十分に危険な存在だと意識していたということの裏返しだと考えるべきなのか、それとも、ホントに、ストライカーとしての危険度は低いという評価なのか。

 たしかに、最前線でボールを持っても、そこから(ストライカーらしく)シュートまで行くといった実効ある勝負シーンは希だよな。ヘディングは、ツボにはまれば日本人離れしているけれどネ。まあ、彼が目指すべきイメージは、最前線でボールを持ったとき、相手ディフェンスが震え上がるような危険な存在感を発揮できることかな。そのためにも、豊富な運動量をベースに、ヘディングも含め、とにかく、可能性を感じさせるシュートを打つことです。

 




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