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2007_オシム日本代表・・世界トップを相手に「立派」なサッカーを展開した日本代表(日本代表対カメルーン、2-0)・・また「U17」についてもショートコメント・・(2007年8月24日、金曜日)

そうだな〜、試合内容については、組織と(抜群の)個が高みでバランスした世界トップクラスに対して、「立派」なサッカーを展開できたという表現が適当かもしれないな〜〜。この「〜」だけれど、要は、もっと出来たかもしれないという印象が残ったというニュアンスです。

 とはいっても、トゥーリオの先制ゴールでリードするという状況を維持できたことで相手の本気を引き出せたから、厳しい勝負でのプレー内容について分析が出来たという視点で意義深いゲームになったと思いますよ。特に後半のカメルーンは、全力でゴールを奪いにきたからね。

 ということで、「立派な」という表現のコノテーション(言外に含蓄される意味)に入っていくわけです。

 まず守備だけれど、もちろん局面では「個のチカラ」で振り回されるシーンもあった。ただ日本は、振り回され「過ぎる」ことなく、カバーリングと協力プレスという「組織」で対抗していくのです。決して安易にボール奪取勝負を仕掛けていくのではなく、「最初のアタック」が無理だったら、キッチリとしたウェイティングでカメルーンのスピードをダウンさせ、次の組織ディフェンスに持ち込んでいく。要は、守備の起点と、その周りで展開されている「有機連鎖ディフェンス」がうまく機能していたということです。

 それにしても、ここぞ!という状況での1対1のせめぎ合いコンテンツには、目を見張らされるモノがあった。選手が、世界に対抗できるだけの自信を深めてきている証拠だよね。頼もしい。もちろん、ここでいう「1対1」とは、ボール絡みだけではなく、ボールがないところでのディフェンスも含みますよ。ボールのないところでの忠実&クリエイティブな守備プレーにこそ、オシム・マインドが込められている・・!? それこそが、ホンモノの守備意識と呼ばれるモノの本質なのです。

 でも攻撃では、やはり現在の「世界ランキング」が如実に見えてきた。たしかに田中達也や大久保嘉人の「個人勝負」には見所があったけれど、カメルーン守備ブロックを崩すという視点では(要は、相手守備ブロックの背後スペースを突いていけたかどうかという視点では!)たしかな限界を感じたのですよ。

 日本がウラスペースを突いていくためには人数をかけなければならない・・田中や大久保の個人勝負にしても、(それが彼らだけの単発だから)カメルーンのディフェンダーは余裕を持って対処していた・・彼らの個人能力を活かすためにこそ「人数をかけた組織プレー」が必要なのだ・・日本の場合は、カメルーンのように、一人で何人もの相手を抜き去ってシュートまで行ってしまうようなプレーではなく、あくまでも、組織プレーの流れのなかに、局所的に、そして効果的に個人勝負をミックスしていくという発想がベースなのだ(だからこそ「個」を出すタイミング感覚が重要!)・・などなど・・

 この試合では、加地のドリブル突破が目立つなど、両サイドの攻略がうまくいくシーンもありました。ただ、そんなシーンを演出するためには、地道な「準備作業」が必要になる。もちろん、しっかりとした守備と、ボールがないところでの忠実な動き(走り)のことです。

 部分的な視点で気付いたこと。まず鈴木啓太が抜けた後、中盤での「抑え」がうまく効かなくなったという印象。たしかに「それ」はあった。オシム日本代表の全体的なディフェンスの流れにとって、鈴木啓太が展開しつづける忠実なチェイス&チェックほど重要な要素はないからね。

 つぎに、久しぶりに日本代表に復帰した山瀬功治。全体的な内容は良かったと思う(中距離シュートも素晴らしかったし)。でも、もっともっと出来るはずだという印象もある。たぶん冒頭の「〜」ニュアンスの大きなところは、山瀬功治のプレー内容に十分納得できていなかったということなんだろうな・・。中村憲剛のように、もっともっと攻守にわたって仕事を探せるはず(交代出場したことでチームにポジティブな刺激を与えられたはず!)。ちょっと、山瀬功治の「様子見」が気になった湯浅でした。何せ、彼に対する私の期待は並大抵じゃないからね。

 この試合については、そんなところだろうか。やはりビデオ観戦には限界がある。グラウンド全体の流れが、分析イメージとしてまとまり難いのですよ。その意味じゃ、ハイビジョンテレビの画像は素晴らしい。カメラを「引いた」状態で、グラウンド全体をカバーできちゃうし、それでも選手一人ひとりの背番号や細かな動きも確認できる。ハイビジョンだったら、例によって、焦点を定めない「俯瞰した視野」でゲームを観察できるのですよ。

 あっと・・蛇足。これから「U17」のゲームをビデオ観戦し、印象を簡単にまとめます。では・・。

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 さて、韓国で行われている「U17」ワールドカップ、日本代表vsナイジェリア戦。この試合でのポイントは、やはり、組織プレーでも格段に進歩しているアフリカサッカーということですかね。

 とにかく、あれほどの素晴らしい個人的な才能連中が、攻守にわたってハイレベルな組織プレーも披露するんだから強いはずだ。予選リーグ初戦のフランスとのゲームでも、「あの」フランスを圧倒していたということでした。まあ、さもありなん。

 この試合でも、ロジカルな評価ベースで、日本のチャンスは初めから限りなく薄かったとせざるを得ません。身体的にも、技術的にも、戦術(プレー発想)的にも・・。まあ、突っ込むとすれば心理・精神的な部分だけれど、そこでもナイジェリアは粘り強そうだからね。フムフム・・。

 以前、ヨーロッパの友人たち(プロコーチ連中)と話し合ったことがあります。カメルーンとかナイジェリアとか・・彼らが組織プレーに目覚めたら、ホントに世界を席巻してしまうだろうな・・ってね。とはいっても、そこには社会体質的な(生活文化的な)課題が山積みだから、そうは簡単にクリアできないだろう・・というのが、当時の基本的な見方でした。

 でも、このU17代表のサッカーを観ていたら、我々が当時抱いていた畏怖が現実のものになりはじめていると実感させられます。もちろん、これから「大人=プロ」になるプロセスで、サッカーマンとしてのバランスの取れた感性の発展を阻害する様々な誘惑など、17歳のときの純粋なマインドを持ちつづけるのは難しいだろうから、このまま彼らが「ホンモノの良い選手」へ発展していけるかどうかは未知数だけれどネ。

 たしかに、ユース年代でのアフリカは、以前から世界の大会で存在感を発揮していた。でもフル代表チームは、様々なサッカー的ファクターが「アンバランス」という課題を露呈するのですよ。ユース世代の選手が順調にステップアップしていかない(いけない)背景には、どんな要素がうごめいているんだろう・・。興味を惹かれますよ。もちろんヨーロッパの友人たちとの「お話しベース」の知識は、ある程度は持っているつもりではいるけれど・・。

 とにかく、素晴らしいサッカーを展開するナイジェリアU17代表なのです。そんな強者に対し、我らが若武者たちは、立派なチャレンジサッカーを最後まで貫きとおしてくれました。

 決して臆することなく、(以前に大敗した経験をベースにした!?)効果的な組織プレーを駆使して対抗していくのです。局面での動きが停滞したら簡単にやられてしまうから、とにかく人とボールを、素早く、広く動かしつづけることで、ナイジェリア守備ブロックのウラスペースを突いていこうとするのですよ。

 そこでは、ちょっとでも、本当にほんのちょっとでもビビッたら、すぐにでもコンビネーション(パスとレシーバーの有機連鎖)が乱れてボールを奪い返されてしまう。要は、日本のU17代表が、思い切りのよい「全力プレー」を繰り出しつづけたからこそ、自分たちがイメージするリズムやペースのサッカーを有機的に積み重ねていけたということです。

 つまり、持てるスキルを100パーセント効果的に発揮するために、100パーセント以上の「チャレンジ精神」が重要な意味を持っているということです。そんなメンタル的な基盤を持てていたからこそ、高く評価するに値する立派なサッカーを展開できたというわけです。

 とはいっても、やはり後半は、ナイジェリアに余裕をもってゲームをコントロールされてしまった。日本が攻め上がっているように見えて、実はナイジェリアのペースにはまっていた。まあ、ナイジェリアは大したものだ。

 日本代表には、次のフランス戦で、実力を100パーセント以上発揮してくれることを期待して止みません。いや、確実に期待できると思いますよ。何せ彼らは、ナイジェリアを相手にしても、決して臆することなく全力を出し切ったんですからね。フランス戦への期待が高まります。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。

 




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