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2007_オシム日本代表・・ミッドフィールドの組織ダイナミズムこそが日本代表の生命線(松井大輔と稲本潤一について)・・(2007年9月10日、月曜日)

そうそう・・松井大輔はフォワードとして送り出すのが正解だよな・・。オーストリア戦で、松井が田中達也と交代するシーンを見ながら、そんなことを思っていました。

 いまの松井の基本的なプレー姿勢では、日本代表の中盤ダイナミズム(活力・迫力・力強さ)をアップさせる糧にはならないということです。要は、ディフェンス参加での実効レベルと、攻撃での、ボールがないところでの動きに代表される組織プレーコンテンツが十分ではないということです。試合レポートで書いた「無為な様子見」が多いという事実も含めて。

 松井大輔は、フランスでやっているようにやる・・と意気込んでいたらしいけれど、ル・マンと日本代表の個人的な能力レベルなども含めて、プレーしている「環境」が違う。やはり(個のチカラで劣る)日本は、チーム全体が一つのユニットとして連動しつづけるような、攻守にわたる「組織プレー」をメインにイメージしなければならないのですよ。

 昨日のトレーニングでも、シンプルなタイミングのコンビネーションやサイドでの数的優位の演出といった組織プレーイメージを要求されていた。しっかりと実効あるカタチで守備にも参加すること(ボールがないところでスペースへ動く相手を最後までしっかりとマークすること等!)や、攻撃では、シンプルにパスを「はたいて」全力でスペースへ抜け出すプレー(要は、パス&ムーブ)といったコンビネーションイメージを繰り返し叩き込まれていたということです。

 そんな組織プレーを基盤にすることこそが、松井が、持てる個のチカラを存分に発揮するための強力なバックボーンになるということです。あくまでもシンプルにボールを動かしながら(人も動くことで!)相手守備のスペースを攻略する。要は、スペースで、ある程度フリーでボールを持てるようにするということ。そうすれば、おのずと松井の勝負ドリブル能力も存分に発揮できるというわけです。まあ、今のところは、フォワードとしてネ・・。

 ル・マンでは、それぞれのポジションに、個のチカラに秀でた選手が揃っている。だから、個々の武器を最大限に発揮させるために(得意なプレーを邪魔しないように!)互いのポジショニングバランスも意識しながらプレーしようとしていると感じます。要は、仕掛けの基本は「個の勝負」というわけです。まあ、局面で相手を抜き去れば、(別な相手が対応せざるを得なくなることで)必ず別のゾーンでフリーな味方が出てくるからね。そこへボールを動かせば、効果的な仕掛けの可能性が限りなく高くなるというわけです。

 ただ、個のチカラで劣る日本代表チームの場合は、状況がまったく違う。そこでは、あくまでも人とボールを動かしつづける組織プレーをベースにスペースを攻略していかなければなりません。そのスペース攻略は、とりもなおさず、数的に優位なカタチを演出するということを意味します。そう、仕掛けの起点の演出。そして、そこから、(松井や俊輔、はたまた田中達也による)個の勝負や組織コンビネーションで最終勝負を仕掛けていくというわけです。

 オシム日本代表の絶対的な目標イメージは、何といってもトータルフットボールでしょう。その底流にある発想をキーワードで置き換えたら、こんな感じですかネ。

 高い守備意識を絶対的なベースにした全員守備&全員攻撃・・組織プレーと個人勝負プレーのハイレベルなバランス・・互いに使い使われるというメカニズムや、攻守にわたって主体的に仕事を探しつづけ、勇気をもって実行していくということに対する、深く、広い理解の共有・・もちろん、ここでいう仕事とは、苦しく目立たない「汗かき」や、リスクチャレンジのこと・・などなど。でもやっぱり、トータルフットボールを言葉で表現するのは難しいネ・・。

 もちろん、トータルフットボールを志向し近づいていくプロセスでは、目先の勝利の方が重要というケースも出てくるに違いないけれど(そこでは、クレバーなゲーム戦術を講じることになる!)、それでも、特に日本代表にとっては、トータルフットボールを志向すべきという基本発想は微動だにすべきではないのです。それ(明確な目標イメージ)があるからこそ、迷っても、すぐに基本に立ち返ることが出来るのですよ。

 そこでの具体的テーマは、中盤のダイナミズム(活力・迫力・力強さ)ということになるでしょうかね。その視点で、オーストリア戦では、松井大輔だけではなく、稲本潤一のダイナミズムアップに対する貢献度も低かった。

 私は、その原因をこう理解しています。稲本は、自分がボールを奪い返すことを「過度に」イメージし過ぎている・・逆に、彼の場合、味方にボールを奪い返させるという汗かきイメージは(比較的)希薄・・。

 もちろん稲本潤一のボール奪取能力(パワー&テクニック)は日本代表のなかでも屈指でしょう。しかし、それでは「互いに使い使われるメカニズム」をうまく機能させられなくなることは目に見えている。

 彼がプレーしている(していた)チームでは、(松井のケースと同様に!?)個のチカラに長けた選手が集まっている・・そこで彼らは、守備でも、互いのポジショニングバランスを基盤に、相手のボールの動きを制限することで、ボール奪取ポイントに狙いを定めるのですよ。要は、ポジショニングバランス・オリエンテッドな守備。

 まあ、それも一つの考え方だけれど、世界の潮流は、より積極的に(より組織的に)ボールを奪い返しにいくという方向へ不可逆的に動きつづけていることも確かな事実なのです。だから、ガットゥーゾとかマケレレといったスーパーな汗かき選手の価値が大きくクローズアップされるようになっているわけです。

 日本代表では、鈴木啓太。もちろん今野泰幸も、同じレベルのキャパシティーを秘めています。彼らがいるからこそ、稲本は、一発のボール奪取勝負を狙いつづけているというわけです。もちろん彼は、ボール奪取からの攻撃をワンパッケージでイメージしているに違いありません。そう・・「2002」のときのように。

 たしかに決まれば(次のカウンター気味の仕掛けにおいて!)素晴らしい効果が期待できるけれど、そんなワンチャンス「ばかり」を狙うというプレー姿勢では、日本代表のミッドフィールド守備における「有機的なプレー連鎖メカニズム」を高揚させられないでしょう(逆にブレーキ要因になってしまう!?)。

 やはり稲本潤一は、オーソドックスに、出来る限り数的に優位な状況を作り出すというイメージ「でも」プレーしなければならないと思います。要は、ボールのないところでも機能しつづける積極的なディフェンス。そんなプレー姿勢があってはじめて、彼のボール奪取能力がより効果的に活かされると思うのです。そう、そのメカニズムは攻撃と同じ。(汗かきも含む)組織プレーを基盤にしてプレーするからこそ、より個のチカラも有効に活かされる・・。

 そんな視点でも明日のスイス戦を観察しようと思っています。いまから楽しみです。

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