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2007_アジアカップ・・後藤健生さんとの会話・・オーストラリア戦でのゲーム戦術について・・(2007年7月17日、火曜日)

「やっぱり、高さでの強さや安定性という視点で、ゴールキーパーは楢崎正剛を選択すべきだと思うけれど・・」。そんな私の問いかけに、後藤さんが即座に反応したものです。「ボクもそう思う。そのことについては、既にいくつかのメディアで表明しているんだよ」。

 今日はコラムを休もうと思っていたけれど、フリーランスの後藤健生さんと二日つづけて夕食を共にするなかで、次のオーストラリア戦について面白いハナシが出てきたから、その内容を簡単にまとめておこうとキーボードに向かうことにした次第。私のHPにコラムを載せることについては、後藤さんも了解しています。まあ、コラムを書くモティベーションとして、オーストラリアとの決戦にどのようなメンバーで臨むべきかなど、久しぶりに彼と意見が一致したということもありました。あははっ・・。

 「ゴールキーパーに対する評価には様々な視点があるよね。欧州のゴールキーパーコーチは、例えば、シュートを打たれるときの落ち着きとか・・まあこれは、シュートを打たれる瞬間に、最良のポジションで両足をついて構えられているかということなんだけれど、それとか、ハイボールに対する飛び出しの判断・・これは、飛び出したら絶対にボールに触るということだよね、また相手ボールホルダーに対して、ゴールマウスを飛び出して1対1の勝負を仕掛けていく判断や勇気、最後方からのリーダーシップなど、本当に多くのファクターがあると言う。もちろん反応能力とかセービング(キャッチング)技術などといった基本は除いた要素だけれどね」。そんな私の言葉を後藤さんが引き継ぎます。

 「そうそう・・そのファクターを考えれば、次のオーストラリア戦じゃ、やっぱり高さに対する強さとか安定性が非常に大事になってくる。だからこそ楢崎だと思うんだよ」。そういうことです。そして、そのオーストラリアの高さの象徴が、言わずと知れたヴィドゥーカというわけです。

 昨日バンコクで行われたタイとの勝負マッチでも、ビドゥーカが決定的な追加ゴールを決めました。最初は、後半35分。クロスボールを胸でトラップし、そのまま上手く身体を使いながらタイのディフェンダーを押さえて抜け出し、右足シュートを決めた。そしてその3分後には、途中出場したケーヒルからのクロスボールを、抜群のパワーと高さのヘディングでドカン!と決めた。またオーストラリアの先制ゴールも(前半21分)、フリーキックからの、マイケル・ビューカンプのヘディングシュートでした。タイの守備は、オーストラリアのパワフルな高さにノーチャンスだったのです。

 ということで、オーストラリア戦に臨むオシム日本代表の「ゲーム戦術」。オーストラリアとの一発勝負では、前述したように、やはり、ワントップのスーパーポスト&ヘディングプレイヤー、ビドゥーカをマンマークでキッチリと抑える必要があります。

 「オシムさんは百戦錬磨だからな・・勝負マッチとなったら、しっかりと手練手管を駆使してくるばすだよ・・」と私。「そうそう、本物の勝負となったときの彼の柔軟で効果的な采配には定評があるからな・・」と後藤さん。そして二人が即座にイメージした「エース・キラー」が、言わずと知れた中澤佑二でした。

 そして最終ラインは、スリーバック気味に今野泰幸を入れ、先発で出てくるに違いないキューウェルをマンマークさせる。それ以外の、ブレッシアーノや(たぶん先発するはずの)アロイージといった衛星プレイヤーは、受け渡しで対処する。

 要は、中澤佑二と今野泰幸が最終ラインのマンマーカーになり、そこで出来てくるスペースを、最後方のリベロである阿部勇樹と、中盤のリベロとして「も」機能すべき鈴木啓太が、他の中盤選手が守備に有機的に絡んでくるなかで効果的にコントロールするというイメージです。

 両サイドは、加地亮と駒野友一。そしてもちろん中盤のダイナミック・カルテットはそのまま。要は、(前気味リベロとしても機能すべき)鈴木啓太、(形容なしの)中村俊輔、「牛若丸」中村憲剛、「クールな仕事人」遠藤ヤットで構成するカルテット。そしてワントップの高原直泰が、最前線のポストプレイヤー、組織的な仕掛けのリンクマン、最前線からのチェイス&チェッカー、そして(たまにはエゴイストに徹する)ゴールゲッターという「マルチ・タスク」をこなすのです。

 ダイナミック・カルテットとか、その他の選手を形容した表現については湯浅の創作。後藤さんとは、人選とタスクイメージが一致しているだけです。

 後藤さんとの会話は、なかなか興味深い展開になっていきましたよ。ケーヒルが登場してきたときの対処とか、クロスの上手いウィルクシャーの抑え方、はたまた後方からゲームをメイクするクリーナ(キャプテン)への対応など、ハナシは尽きなかったけれど、(日本との連絡作業があってホテルへ戻らなければならなかったことで)とにかく今回は、日本の先発メンバーと基本的なタスクイメージだけでも、湯浅と後藤の「連名」で表明しようということになった次第でした。

 我々は、よい「ディベート仲間」なのですよ。相手のハナシをしっかり聞きながら、「アンタの意見は理解できたよ・・でもオレは、その意見にアグリーじゃない・・それについてオレは、こう思っているんだ・・」等々、そこでは、まさに自由で闊達な意見交換メカニズムが成りたっているのです。だから、決して意見の表明が「陰にこもる」ようなことはありません。

 要は、互いにレスペクトし合っていることを体感できるからこその活発なリラックス・コミュニケーションというわけです(要は、互いに気持ちのよいコミュニケーションができるということ)。もちろん、たまには後藤さんの(哲学的な!?)アイロニーに閉口することもあるけどね。あっと、そりゃお互い様か。あははっ・・。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
 




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