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- 2007_アジアカップ・・本当にオシム日本代表が勝ってよかった・・(日本 vsオーストラリア、1-1、PK戦=4-3)・・(2007年7月21日、土曜日)
- 本当に嬉しかったですよ。特に、高原直泰が同点ゴールを決めたときは、「ヨシッ!!」とガッツポーズまで出た。まあ、日本でテレビ観戦していた方々も、同じように気合いが入ったことでしょう。
オーストラリアの先制ゴールが決まったときは、「あ〜〜あっ・・やられてしまった・・オーストラリア守備ブロックは強いから、ヤツらから点を取るのは容易じゃないよな・・スリーバックで臨んでいるこのゲームは特に堅いからな・・」なんて、ちょっと弱気にことを思ってしまった。
でもすぐに、「いやいや、いまの日本代表はこれまでとは違う・・ここから吹っ切れた攻撃を仕掛けていくはずだ・・ボールなしの動きも活性化するはずだし、人とボールが動きつづけることで、より効果的にスペースを突いていけるはずだ・・いくら強いオーストラリア守備ブロックとはいっても、そうなったときの日本代表の仕掛けフローに耐えられるはずがない・・」なんて、思い直していましたよ。そしてその直後、ファーポストを狙った中村俊輔のクロスを巻がヘディングで折り返し、そこから高原直泰が抜群の粘りと
切れ味鋭い「カット」によって同点ゴールを叩き込むのです。ガッツボーズ!
いま、タイのバンコクで行われていたイラク対ベトナム戦を見終わったところ。試合は、「2-0」でイラクが勝利を収めました。アルフレッド(リードル監督)は無念だったろうね。でも、彼が良いチーム(ベトナム代表)を作ったことは確かな事実だからね。私は、彼の健闘を心から讃えていました。
ということで、コラムを書きはじめたのはハノイ時間で2200時を回ったころ。明日は、クアラルンプールでのガチンコ勝負「イラン対韓国」を観戦するために、0700時にはホテルを出発しなければなりません。ということで、日本対オーストラリアについては、ポイントだけを簡単にまとめようと思います(まあ、いつもそう思っているのですがネ・・)。
最初のポイントですが、試合を観ながら、すぐに感じていたことがあります。それは、「日本とオーストラリアの特長がものすごく凝縮された試合だな・・」ということです。一昔前のイングランドのようなサッカーを忠実に繰り広げるオーストラリア。その高さとスピード、そしてパワーは、まさに脅威。それに対して、オシム日本代表は、あくまでもスマートな組織プレーを展開する。
オーストラリアは、自分たちの特長(強み)をしっかりと意識し、まさに「それ」を前面に押し出そうということでチーム内の仕掛けイメージが統一されていると感じます。だからこそ強い。ビドゥーカとアロイージの高さと強さ・・ブレッシアーノの速さと上手さ・・クリーナの忠実なバックアップ・・両サイドバックの、強烈な意志を放散するドリブル勝負チャレンジからの正確なクロス・・などなど。
たしかに日本が中盤を制し、ボールを支配してはいた。またシュート数も(グレッラが退場させられるまでの人数イーブン状況でも)日本がほぼ二倍打っていた。それでも私は、シュートの危険度という「感覚的な評価」では、オーストラリアの方が何倍も高いと感じていました。ビドゥーカのパワフルで粘り強いキープからの強烈なシュートや、フリーキックから放たれたニールのヘディングシュートなど、オーストラリア選手全員が、高さとパワーを強烈にイメージしているからこそ、ものすごく危険なヤツらだと感じていたというわけです。
それに対してオシム日本代表。
カウンターで(ロングパス一本で)仕掛けていける状況を除き、とにかく確実にボールをキープしながら、ここぞの勝負タイミングを狙いつづける・・そしてチャンスとなったら(高原や巻が戻り気味にパスレシーブの動きを繰り出せば)スパッという勇気をもったタテパスを繰り出す・・また、後方でボールを持つ選手が、前にスペースが出来た次の瞬間には、勇気をもって直線的なドリブルで上がっていく・・もちろん「それ」こそが勝負のスタート合図・・同時に周りの味方も決定的スペースをイメージしたフリーランニングをスタートする・・などなど・・。
そんな、静と動(タメと爆発)のメリハリは、今大会で、日本代表にかなうチームはありません。もちろん、そんな組織プレーに、個人の勝負プレーもタイミングよくミックスしていくのです。まあ、それについては、いつも書いている通りです。それでも、オーストラリア守備ブロックは、そんな日本の攻めの危険な要素を、ことごとく無力化してしまうのです。追い込んで、協力プレスのワナにはめる・・一対一の勝負に持ち込んで簡単にボールを奪ってしまう・・ボールがないところでスペースへ入り込む動きを忠実に、そして正確に抑えてしまう(忠実でクリエイティブなマーキング)・・。たしかにヤツらの守備には、世界レベルの経験が詰まっていると感じていました。
だからこそ、日本の攻撃では、タテのポジションチェンジが殊のほか有効だった。その仕掛け人は、言わずと知れた中村憲剛。
素晴らしかったですよ、彼が魅せつづけた、「神出鬼没」という表現がピタリと当てはまるボールなしの仕掛けプレー。とにかく、シンプルにボールを展開したかと思ったら、次の瞬間には、高原や巻を追い越して、最前線の決定的スペースへ飛び出していくんだからね。そんな中村憲剛の動きを把握できていた(彼のタテへの動きをマークできていた)オーストラリア選手は一人もいませんでした。そして何度もフリーできわどいシュートを放つ中村憲剛。2-3本はあっただろうか、彼が主役になった危険なシュートシーンは。
また憲剛は、後方からのゲームメイクでも素晴らしいセンスを魅せつけていました。まさに牛若丸といった表現がピタリと当てはまる軽やかで正確なボールコントロール。そしてそこから繰り出される展開パスや、ビシッという「仕掛けのスタート合図パス」などなど。相手のオーストラリア選手は大柄だからね、なおさら彼の「軽やかさ」が際立つというわけです。
とにかく、仕掛けの危険度が大きく増幅した後半だけではなく、膠着していた前半でも、中村憲剛が(誰にも気付かれないように)スッと前戦へ上がっていった状況では、確実にチャンスが広がっていました。だから、憲剛の動きばかりに注視していた時間帯もありましたよ。彼は、本当に素晴らしいプレーを展開しました。
もちろん彼だけではなく、この試合では、すべての選手がよく闘った(考え、走った)。特に立ち上がり。抜群のパワーで押し上げてくるオーストラリアの勢いをしっかりと受け止め、自信をもって押し返していったゲーム内容には誇りさえ感じていました。ただし、オーストラリア攻撃の「危険度」を安全レベルまで抑え切れていたかどうかというポイントでは、ちょっと不満は残ったけれど・・。
グレッラが退場になってからの展開だけれど、オシム監督も言っていたように、普通だったら、数的に不利になったチームの方が、より勢いを増す(時には人数が多い方のチームを凌駕して勝利してしまう・・)というのケースも多いですよね。ただこの試合でのオーストラリアは、下がってカウンター狙いだけになってしまった。
それも、スーパーGKのシュワルツァーがいなかったら、日本に2-3点は叩き込まれてもおかしくないという展開になってしまっていた。オーストラリアは、厳しい気候条件で完全にグロッキーになっていたということなんだろうね。
とはいっても肝心なところでは、守備でも攻撃でも、しっかりと走ってくるのだから驚きます。そんな彼らの意志の強さは、まさに世界の強者という称号にふさわしいじゃありませんか。そうそう・・、オーストラリアにはオジーフットボールとかラグビーがあるからね。彼らのプレーを観ていると、そんな格闘スポーツ系で放散されるギリギリの闘う意志を感じてしまう。やはり彼らは強敵です。
とにかく、オシム日本代表が勝ってよかった。PK戦の立ち上がりで、立てつづけに二本もセーブした川口能活にも感謝。これで(ちょっとだらしないけれど・・)、明日クアラルンプールへ行くモティベーションが何倍にも跳ね上がろうっちゅうものです。それでは、今日はこの辺りで・・。
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
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