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2007_アジアカップ・・最後は韓国の闘う意志がイランに優った!?・・(韓国 vsイラン、0-0、PK戦、4-3)・・(2007年7月22日、日曜日)

両チームとも死力を尽くしす大一番になりました。韓国対イラン。

 気候的にも、この時期のクアラルンプールとしては信じられないくらい過ごしやすい。気温は26度。たしかに雨上がりということで、少し湿度は高めだけれど(湿度80%)、昨日ハノイとは比べものにならないくらい好ましい気候条件ということになりました。そんなこともあって、両チームともにチカラが入る。ガンガンと、スペースへ向けて長い距離の「全力ダッシュ」を何度も繰り返すのです。

 いつも書いているように、ボールがないところでの全力ダッシュにこそ、最終勝負へ向けた仕掛けの意図と強い意志が如実に表現される。カウンター状況での、韓国選手とイラン選手のボールがないところでの死闘。本当に見応え十分です。

 観ているこちらは、ボールホルダーの意図を読む・・そして、タテスペースへのスルーパスが出ると確信する・・もちろん、その勝負シーンに絡む韓国とイランの選手も同じことを確信している・・そして次の瞬間にはじまる全力ダッシュの競り合い・・まさに見所満載の勝負マッチ・・ホントに来てよかった・・。

 ゲーム立ち上がりの時間帯は、韓国が押し込んでいきました。ただ、15分を過ぎたあたりからイランも盛り返してくる。とはいっても、両チームともに、組織プレーによるウラスペースの攻略という視点では、日本とは比べられない。日本が展開する、多くのダイレクトパスを含む組織コンビネーションによるスペース活用(守備ブロックのウラスペースの攻略)は、かなりのレベルに達していますからね。とはいっても、個のドリブル勝負をミックスしたダイナミックな崩しでは、両チームともに素晴らしいものがあります。

 要は、最終勝負を仕掛けていくための「ツール・イメージ」が、より「個」に重きが置かれているということ(そのような能力を備えた選手を抱えている!)。ただ、やはり韓国の方が、より人とボールの動きの内容が優れているという意味で組織と個のバランスがハイレベルと言えるかもしれない。難しいニュアンスですけれどね。

 とにかく、総合的なチーム力が同格同士のガチンコ勝負だから、最後は個の勝負能力に寄るところが大きくなってくるのも道理。イランには、カリミがいる・・マハダビキアがいる・・ネコーナムがいる・・というわけです。対する韓国では、個の才能を代表する(ヨーロッパで活躍する)三人がケガのため不参加だし、たしかにイ・チョンスはいるけれど、個の勝負という視点では、ちょっと見劣りするからね。

 ただ韓国には、例によっての「レベルを超えた意志のチカラ」がある。それは、個の勝負能力のマイナス分を補って余りありますよ。後半もイランが主導権を握る展開でスタートしたけれど、時間の経過とともに、韓国も、どんどん盛り返してくるのです。もちろんそのバックボーンは、中盤での活力あふれる強力ディフェンスであり、攻撃にうつったときのボールがないところでのサポートの動きなのです。まさにエキサイティングマッチ。本当に、観にきて良かった。

 大きな展開から(ボールなしの大きな動きを積み重ねながら)クロスを送り込み、そのこぼれ球を狙うというイメージで多くの選手が最終勝負スポットへ入り込んでいったり(まさに意志のチカラの為せるワザ!)、抜群のスピリチュアルエネルギーを込めた中距離シュートを放ったり、はたまたイ・チョンスがドリブルで切れ込んでいったり・・。韓国の協力プレーは衰えることを知らない。敬意・・! ただ、やはり時間の経過とともに、再びイランがゲームのイニシアチブを握りはじめるのです。

 イランは、あくまでも個のドリブル勝負を積み重ねていく。そんな流れのなかで、カリミが、前半の終了間際にも作り出したように、ドリブルで韓国ディフェンスブロックを翻弄し(あるスポットに意図的に集中させ)、横パス気味のラストパスを送り込んだりする。

 それは、まさに決定的チャンス。そのパスから繰り出された中距離シュートには、誰もが感情を爆発させていた。イラン人の記者は、ゴール!と叫んで立ち上がり、次の瞬間には、ありったけのチカラでデスクをブッ叩く。逆に韓国の記者は、一瞬フリーズし、次の瞬間「ヨシッ!」とガッツポーズして拍手する。フムフム・・。

 もちろんイランの攻め手は個人勝負ばかりじゃない。マハダビキアが、ワンのパスをはたき、そのまま何十メートルもタテのスペースへ全力で抜け出していく・・ザンディーが、スパッと切れ味鋭いワンツーパスで決定的スペースへ飛び出していく・・。たしかに局面的な単純コンビネーションだけれど、そこには、技術とスピードが伴っているイランだからこその高い危険度が伴っていました。

 結局ゲームは、最後の15分間でのチャンスをイランが逃したことで延長に入ります。そこでは、両チームとも、見るからに動きが落ちていきました。こうなってはチャンスメイクはままならない。ということで、ほとんど何も起きないまま30分が経過してPK戦に突入した次第。そして、昨日の川口能活のように、韓国のGKイ・ウンジェが神様になるのですよ。素晴らしいセーブで二本もPKを止めたのです。そして韓国が準決勝に進出することになりました。願わくば、韓国との決勝・・。

 「我々は素晴らしい内容のゲームを展開した・・韓国よりも多くの決定機を作り出した・・私は選手を誇りに思っている・・」。イラン監督のコメントでした。

 これからタクシーを駆って40-50キロも移動しなければなりません。たぶん到着は夜中になるはず。そして明日のフライトは、午前0630時。ということで、今日はこんなところ(とにかくアップだけはしておく・・といったスタンス)です。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
 




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