トピックス
- 2007_アジアカップ・・韓国が魅せつづけた素晴らしい守備・・そしてシュートを打たない日本代表・・(日本 vs韓国、0-0・・PK戦、5-6)・・(2007年7月28日、土曜日)
- 両チームの監督会見が終わったのは深夜0時すぎ。それからホテルに戻り、少し腹ごしらえをしてからキーボードに向かいました。ちょっと疲れ気味。さて、何から書こうか・・。
たしかに後味は悪いよね。良いサッカーを継続していた日本だけれど、韓国選手が退場になったこともあって、全体的に韓国を押し込むという展開になっていく(数的に優位になったからといって全体的なゲームの流れで優位に立てるとは限らない!)・・たしかに日本代表は、相手守備ブロックのウラスペースを突いてシュートチャンスは作りだす・・それでも、ゴールは遠い・・そして結局、一人多いというアドバンテージにもかかわらず0-0でPK戦に突入し、韓国の前にチカラ尽きてしまう・・
ここでは、まず何といっても韓国のディフェンスの強さを特筆ポイントとして取り上げなければなりません。中村俊輔や駒野が何度か送り込んだ決定的なクロスボール・・高原や佐藤寿人、また矢野にピタリと合うけれど、そこには、常に、最後まで忠実にマークしつづけた韓国選手が絡みついていた・・だからフリーでシュートを打つことはかなわず、ボールをはじき返されてしまった・・また、羽生がこぼれ球をシュートした決定的シーンでは、その前に、何人もの韓国選手が折り重なるようにブロックに入っていた・・強烈な闘う意志がほとばしる・・韓国代表のピム監督も、「韓国のファイティングスピリットは素晴らしい・・それこそが韓国の強さのバックボーン・・」と述べていた・・
それだけではなく、韓国のディフェンスブロックは、互いにクレバーなカバーリングも展開していた。もちろんその絶対的ベースが、チェイス&チェックや、ボールがないところでの忠実マーキングに代表される高い守備意識であることは言うまでもありません。
しっかりとソリッドなチームに仕上がっていた韓国は、オシム監督が言うように、たしかにサウジアラビアよりも強かった。ピム監督は良い仕事をしている。先日レポートしたように、韓国対イランの準々決勝をクアラルンプールまで観にいってきたのだけれど、たぶんそのゲームが、今大会のベストマッチだったように思う。もちろん、この三位決定戦もなかなか興味深いゲームになったけれどね。
全体的には、やはり、オーストラリア、イラン、韓国、そして日本が(まあウズベキスタンも・・それに対してサウジは個に偏りすぎで各国ジャーナリストの評価は低い)、チーム総合力としてアタマ一つ抜け出していたと思います。組織プレーと個人プレーが高い次元でバランスした良いチーム。もちろん日本の場合は、組織プレーの比重が特に高いわけだけれどね・・。
逆を返せば、日本代表の「個のチカラ」に大きな課題があることを再認識させられたということも言えます。このゲームでも、局面勝負では韓国選手の方が優位に立つというシーンが繰り返されました。たしかに日本チームは、その不足分を組織プレーでカバーするのだけれど、やはり、あれ程ひんぱんに個人勝負で劣勢を強いられると苦しい展開になってしまいますよね。前半立ち上がり15分くらいは、その組織コンビネーションを駆使して完全に韓国を圧倒していた日本代表だけれど、その後は、組織プレーと個人勝負プレーが高い次元でバランスした韓国代表に押し返され、そこからはシーソーゲームになっていきました。
オシム監督は、あと2-3人スピードのある選手や優れた(点の取れる)フォワードがいれば・・とタラレバのハナシをしていた。そう・・単独ドリブルで抜け出していけるような選手や、相手ゴール前でボールを持ったら、何が何でもシュートを打ってしまうような選手・・。
たしかに才能は、基本的には「待つ」しかないけれど、いまある才能を「しっかりと発掘し、そして潰さずに発展させる」という地道な努力をつづけていけば、アルゼンチンのように、継続的に若い才能が輩出されてくるようになるでしょう。要は、日本サッカー界全体を統括するマネージメント力が問われるということです。さて・・
とはいっても、なにものねだりしたって仕方ない。いまある選手の能力を、いかにしてチームとして効果的に発揮させていくのかというテーマに真摯に取り組んでいくしかないのですよ。
ところで何が何でもシュートまで行ってしまうような選手。韓国にはいるけれど、日本には見当たらない。最後は、日本と韓国のシュート数はほぼ同じになったけれど、途中までは(韓国選手が退場になるまでは!?)韓国のシュート数が日本を大きく上回っていたのですよ。
とにかく韓国選手は、チャンスさえあればシュートを狙います。イ・チョンスが、チョ・ジェジンが、はたまた後方から上がってきた金正友が、どんどん中距離シュートをブチかましてくるのです。それは、本当にものすごく怖い。
それに対して日本の選手は、可能性が「極大」にならなければシュートを打たない。もちろんクロスボールを叩くようなダイレクトシュートは別だけれど、自分で打開していくようなプロセスでは、自らシュートにトライするよりも、周りに「打たせる」ことの方を選択することが多い。そして、パスを受けた選手も、自らリスクにチャレンジするのではなく、(より可能性の大きな味方へ!?)パスをしてしまう。
農耕民族!?・・自己主張よりも組織のためにというマインド!?・・個が主体の個人主義よりも、組織が主体の集団主義!?・・さて・・。
オシム監督は、あくまでも組織サッカーを標榜しています。それは、もちろん大正解。それに対して、スターが出てこないとか、規制サッカーになってしまうだとか、訳の分からないことを言って異を唱えている人々がいる。まあ、監督さんって難しい仕事だよね。そのテーマについては、「総括」として、明日の決勝をレポートした後に、軽くディスカッションすることにします。
ちょっとアタマが回らなくなってきた。それ以外にも、「攻守にわたる、ボールがないところでの走り合いという構図」とか、「全力で走り抜けるイメージと実行力の対峙」とか、「背後スペースを突いていく日本の組織コンビネーション」とか、「立ち上がりは良かったけれど、結局は(いつものように)左サイドのフタに成り下がった山岸」とか、様々なテーマをメモっていました。でも今日はここまで。ではまた・・
===========
しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」をご参照ください。
-
[ トップページ ] [
Jワンポイント ] [湯浅健二です。
]
[ Jデータベース ]
[トピックス(New)] [
海外情報 ]