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2007_ACL・・ここまで来たら、美しく、勝負にも強いサッカーでアジアのイメージリーダーを目指しましょう・・(レッズvsソンナム、2-2、PKでレッズの勝ち)・・(2007年10月24日、水曜日)

「最初の三人は、はじめから決まっていた・・残りの二人を永井雄一郎と平川忠亮にしたのは、技術的にも精神的にも強い選手だから・・直前に彼らと話し、即答で、やる!と言ってくれたから決断にまったく迷いはなかった・・」

 記者会見で、誰かが、PKの人選はどう決めたのかという興味深い質問をしてくれました。それに対してホルガー・オジェック監督が、冒頭のように答えたわけです。そうそう、PK戦では、気持ちの強さがもっとも大事になってくるからね。それにしても、永井と平川は、本当に見事なPKを決めた。特に、これを入れれば勝ち!という最高のプレッシャーをモノともせずに決めた、平川の落ち着き払ったシュートには感服した。そのとき、平川の全身から放散される自信のオーラが見えた気がしたモノです。大したものだ。

 さてゲーム。私は、前半のサッカー内容を見ながら、こんなメモを、コンピュータに打ち込んでいました。

 ・・レッズはソンナムを本当にうまくコントロールしている・・このままゲームが進むのだとしたら、コラムのテーマは、相手のペースアップのチャンスを効果的に抑制しつづけるレッズなんていうテーマになるかな?・・ボールホルダーだけではなく、パスレシーブの動きなどの要所をしっかり抑えることで、相手のモティベーションを殺いでしまうというテーマ・・まあ、守備を固めたときのレッズの強さっていうことかな・・

 ・・要は、一人ひとりが、しっかりとした「意志」を持ってディフェンスに就いているということ・・「ドーハの悲劇」のように、アナタ任せにならず、常に味方同士で声を掛け合い、文句を言い合って調整する・・そんな活発な雰囲気こそが、クリエイティブな個人事業主のグループを成長させる・・

 ・・レッズの組織ディフェンスだけれど、たぶん彼らにとっては、システム的な(要は、数字的な)分析なんてクソ喰らえなんだろうね・・たしかにポジショニングバランスは大事だけれど・・しっかりと守備の起点を「主体的」に演出しつづけること、そして、その周りで展開されるボールがないところでの忠実なディフェンスアクションがしっかりと有機的に連鎖しつづけていることこそが大事なのだ・・

 ・・誰が、ボール奪取勝負に入ったプロセスで、互いのポジショニングバランスなんか考えるか!・・そこでは、どのように相手のボールの動きを抑制し、どこで(どのパスレシーバーのところで)ボールを奪い返すのかというイメージを主体的に描写し、勇気と責任感をもってアクションしつづけるしかないのだ・・だからこそ、そんな「主体的なイメージ描写」を、有機的にリンクさせるためのトレーニングが必要なのだ・・

 ・・前によく聞いたことがあった・・「トライアングルを作れ1」なんてバカなことを言うヤツら・・そんな形式ばかりイメージしてプレーしようとするから(要は、ステレオタイプの発想でプレーしようとするから)ダメなんだよ・・シュートを打つために、いかに相手のウラスペースを突いていくのかというアクションイメージを自由に描写し、それを仲間のなかでリンクするという発想こそが大事なのに・・あっと、ここは守備のハナシだったっけ・・

 ・・トゥーリオが、最終ラインから大きく前へ飛び出してボール奪取勝負をするとか、自分がマークしていた相手選手を放り出し、タテへ走り抜けようとする相手をガッチリつかむ(マークする)とか・・そんな、ボールを奪い返すという目的を達成するための、予測ベースの創造的なリスクチャレンジこそが、チームのダイナミズム(心的な活力・迫力・力強さ)を生み出す・・

 ・・それこそが、クリエイティブなルール破りということか・・あっ、このキーワードだけれど、「日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)」で取り上げるのを忘れていた・・残念・・

 そんなことを書いていたら、それまで、まったくといっていいほどレッズ守備ブロックを崩せなかったソンナムが、唐突に同点ゴールを入れてしまうのですよ。イタマルのドリブル勝負からのラストクロスを、飛び込んできたチェ・ソングッが、レッズゴールへ流し込んだのです(この忠実なフリーランニングには拍手!)。そしてその12分後には、イタマルの中距離シュートをレッズGK都築が弾いたところを、これまた忠実に走り込んできたキム・ドンヒョンがヘッドで勝ち越しゴールをゲットしてしまう。

 この二点とも、最終勝負シーンにおける、ソンナム選手の忠実な「詰めの動き」が生み出したゴールでした。そのシーンを観ながら、韓国らしい執念(コリアン・スピリチュアルパワー)を感じたモノです。第一戦でも、忠実な動きで「そこにいた」選手が、バー直撃のシュートを放ったシーンがあったっけ。そしてゲームが、どちらに勝負の女神を微笑んでもおかしくないというオープンなものへと変容していきました。

 たしかにレッズは、ホルガー・オジェック監督が言うように、最後の最後まで素晴らしいモラル(闘う意志)を魅せつづけてくれました。押し込まれても、決して受け身になることなく、組織的で忠実な連携プレーでボールを奪い返し、すぐに人数をかけて押し返していく。そして、ワシントンやポンテ、長谷部誠、鈴木啓太、阿部勇樹が惜しいシュートを放つなど、何度か決定的チャンスまで作り出した。

 総体的な内容でレッズに軍配が上がることは誰もがアグリー(同意)するでしょう。だからこそ私は、これはPK戦でやられてしまうかもしれない・・なんて、ネガティブな結末「も」イメージしていたのですよ。それが・・

 レッズの立派なPK戦を観ながら、彼らを誇らしく感じました。その自信と落ち着きは感動モノだったのです。彼らにとっても、かけがえのない「ギリギリ勝負の体感」だったに違いありません。さて、決勝だ・・。

 最後に、ホルガー・オジェック監督のキーワードを。「積極的に攻め上がることには、もちろんリスクが伴う・・でも、それをやらなければイタリアのような(守備的≒魅力に乏しい)サッカーになってしまう・・それは私の意志ではない・・」

 美しく、そして勝負にも強いサッカー。世界中が、そんなバランスの取れたサッカーを志向する。もちろんレッズも(ホルガーが言うように)例外ではないわけで、もし彼らがそのサッカーでクラブの頂点に立つことが出来れば、アジア全体のイメージリーダーにもなれるでしょう。ここまできたら、やはり最高のターゲットを設定するべきだよね。期待が膨らむじゃありませんか。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。

 基本的には、サッカー経験のない(それでもちょっとは興味のある)ビジネスマンの方々をターゲットにした、本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というコンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影しているスポーツは他にはないと再認識していた次第。サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま三刷り(2万部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。またNHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。その番組は、インターネットでも聞けます。そのアドレスは「こちら」。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました。その記事は「こちら」です。

 




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