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2007_ACL・・チームパフォーマンスが高みで安定しつづけるレッズ・・(ソンナムvsレッズ、2-2)・・(2007年10月3日、水曜日)

前半10分のソンナム先制ゴールシーン。そのキッカケは、坪井の(タイミングのよい!?)トラップミスでした。

 レッズのスローインが平川忠亮にわたり、そこから、押し上げていた坪井慶介へ展開パスが送られる。そのパスを、あろうことか、坪井がトラップミスし、相手に奪われてしまったのです。さて攻めるぞ!と、チーム全体が押し上げていた(だから坪井も上がっていた)まさにその状況で・・。

 そんな「チーム全体が前へ重心がかかっている」状態でボールを奪われたのだからたまったものじゃない。ボールを奪った韓国選手が、(モッタとともにソンナムで活躍する外国人選手)イタマルへタテパスを出し、自身もドカンッ!と押し上げていく。もちろん、モッタも、もう一人のソンナム中盤選手も全力ダッシュで押し上げていく。そして瞬間的にレッズは、4人のソンナム選手に対し、トゥーリオと阿部勇樹しかいないという「4対2」の状況に陥ってしまったのです。

 サッカーの大事なセオリーの一つ。相手が攻め上がってくる「流れ」のなかで、高い位置でボールを奪い返すことが出来れば(相手が本格的に攻撃に入った次の瞬間にボールを奪い返せれば)絶対的なチャンスになる・・だから、奪い返せるかもしれないという状況を常にイメージしていなければならない(瞬間的なスタートダッシュからのカウンターをイメージしていなければならない)・・だからこそ、中盤でのタイミングの良いインターセプトは絶対的なチャンスのリソースなのだ・・。

 2002年ワールドカップで魅せた、稲本潤一の二つのゴールシーンがその典型です。まあ、「そのイメージ」ばかりに凝り固まっていちゃ(中盤での攻守にわたる汗かきプレーを忘れちゃ)ダメだけれどネ・・。

 さてボールをインターセプトしたソンナム。この状況でボールを持つイタマルは落ち着いていた。どんどんとドリブルで突き進み、阿部とトゥーリオを引きつけるのです。阿部がウェイティングで対応し、トゥーリオが、そのカバーリングと、逆サイドにフリーで上がってきているモッタを(そこへの決定的パスを)ケアーするという、難しいボカシのポジショニングを取る。ただ最後は、イタマルがベストタイミングの横パスをモッタに決め、モッタも、飛び出してきたGK都築龍太をフワッとかわす素晴らしいシュートを決めた。いかにトゥーリオでも対応し切れなかったということです。

 それまで、堅牢な守備ブロックを基盤に、前戦の三人を中心に鋭い攻撃を仕掛けていたレッズ。自分たちのイメージ通りのゲーム展開に、ちょっとイージーな心理になっていた(油断していた)!? まあ、そういう要素があったかもしれないね。

 このシーンでは、もう一つ、こんな素晴らしい汗かきプレーもあった。坪井がトラップミスしたとき、かなり高い位置まで押し上げていた長谷部誠が、相手にボールを奪われることを確信した次の瞬間、全力ダッシュで自軍ゴールへ向けてスタートしたのです。彼は「もう一人のソンナム中盤選手」をしっかりとマークしつづけ、結局はレッズゴールまで戻っていた。そんなカバーリングのアクションがあったからこそ、トゥーリオの「ぼかしポジショニング」も、かなりターゲットを絞り込むことができた。まあ最後はイタマルの上手さにやられてしまったわけだけれどネ・・。

 その後のレッズは、高い守備意識と、労を惜しまない(攻守にわたる)組織プレーマインド、そして組織プレーと個人勝負プレーの優れたバランス感覚に支えられたダイナミック・クインテット(鈴木、長谷部、平川、山田、そしてポンテ)を中心に、徐々にゲームを掌握していく。もちろん田中達也も、中盤での攻守にわたる組織ダイナミズム(活力・迫力・力強さ)を支えることで、その流れを加速する。

 要は、チャンスの「質」が違うということです。たしかに全体的なシュート数やポゼッションでは互角に「見える」けれど、そのコノテーション(言外に含蓄される意味合い)では、確実にレッズに軍配が上がるということです。

 それは、とりもなおさず、優れた「個の能力」が、攻守にわたる組織プレーにも精を出しているからに他ならない。特に中盤の底コンビ(鈴木啓太と長谷部誠)の前後左右のポジションチェンジと実効ある汗かきプレーが輝いている。そんなベースがあるからこそ、両サイドの押し上げ、ポンテや田中達也の個の勝負プレーが効果を発揮できるということです。

 もちろん、チャンスの質が高いことの絶対的ベースは、個人的な能力の高さだけれど(そのイメージリーダーが、ポンテ、ワシントン、田中達也であることは言うまでもない)、それも、彼らも含む全員の組織プレーマインドがハイレベルだからに他ならないのですよ。要はバランス・・。世界トップレベルサッカーでは、チームパフォーマンスが、優れた才能による汗かきプレーの量と質によって決まるのは常識なのです。組織プレーと個人プレーのバランス感覚・・。

 一時期、攻守にわたる組織プレー(そのマインド)の減退・・前後分断のサッカー・・バランスの崩れた個人プレー・・などなど、様々な問題を抱えていたレッズ。それが、ここにきて(中盤でのダイナミック・クインテットが確立してから)素晴らしいまとまりを魅せるようになった。

 選手の「良いサッカー」に対するイメージは、既に「万全」の域に達しているのかもしれません。ここからの危機ファクターは「慢心」だけだね。このレベルまでチームを引っ張り上げてきたホルガー・オジェック監督とゲルト・エンゲルスコーチの、心理マネージャーとしてのウデの見せ所というわけです。

 それにしても、サスガに相手のソンナムはチカラがある。2-1とレッズがリードしてからの攻めには、それなりの勢いがありました。もちろんその勢いの絶対的ベースは、ボールがないところでの複合した気合いの走り(スペース攻略のためのフリーランニング)。レッズ守備ブロックも、しっかりとしたカバーリングで対応していたけれど、何度かは、決定的ゾーンで、ある程度フリーでボールを持つ選手(=最終勝負の起点)を演出され、そこから決定的なパスを送り込まれたり、ドリブルシュートや中距離シュートを打たれてしまった。

 レッズ守備ブロックは、受け身に足を止めてしまう(心理的に押し込まれてしまう)ような心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでいたわけじゃない。それでも、何度かは、決定的なカタチを作り出されてしまった。そのことが重要な意味を持つのです。

 守備ブロックの、どこかの小さな歯車が空回りしていた(回転してないかった)!? 例えば、相手ボールホルダーへの寄せが十分ではなかった・・とか、自分の背後の相手に対するマークイメージが甘かった・・とか、全力で走り抜ける相手に対するマークがぬるま湯だった・・とか。そんな、小さな意識(勝負イメージ)の空白が、このようなギリギリの勝負では、決定的な意味を持つのです。

 選手は、クレバーに編集されたビデオを駆使してイメージトレーニングを積まなければなりません。脅威を機会に変えるために・・。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。基本的には、サッカー経験のない(それでもちょっとは興味のある)ビジネスマンの方々をターゲットにした、本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というコンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影しているスポーツは他にはないと再認識していた次第。サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま三刷り(2万部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。

 




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