トピックス
- 2007_CWC・・久しぶりのダイナミックな組織プレー・・堪能しました・・(レッズ対セパハン、3-1)・・(2007年12月10日、月曜日)
- 「リーグのタイトルを失った後、選手に二日間のオフを与えた・・そこで彼らに、気持ちを入れ替えてこいと言ったんだよ・・とにかく我々には、落胆の払拭がもっとも重要なテーマだったということだ・・」
試合後のホルガー・オジェック監督のコメントで、もっとも核心を突いていた部分です。またそれ以外にも、リーグが終了するまでは(十分な休養が取れない)タイトスケジュールの中で闘っていた・・それが、クラブワールドカップがはじまるまでに少しの休息を取ることができた・・それを(蓄積疲労を回復させるために!?)効果的に活用できたことも大きかった・・また、戦術的な調整もできた・・その準備が良い結果につながったということだ・・といったニュアンスのことも述べていた。フムフム・・
結果を受けた余裕のコメント。だから、ちょっと視点を変えてみようと、下のような質問をぶつけてみました。私が質問するときは、自分が知りたいというモティーフだけではなく、監督さんに話す機会を持ってもらいたいという意図もあるのですよ。
「日本には、終わり良ければすべてよしという諺(ことわざ)があるんですよ・・レッズは、史上最大の大逆転劇でリーグタイトルを逃しました・・そのこともあって、もしこの試合で負けていたら、本当に大変なことになったと思うのですよ・・監督には、そんなプレッシャーはなかったか?・・また、監督のコメントには、前から勝負していけ!という指示を出したというモノもあったけれど、それは、この日のチーム状態だったら、そんなプレッシャーをはね返して良いプレーが出来るという確信があったということなのか?」
「もちろん確信があったんだよ・・今日は、選手を信じていた・・自分たちを信じていた・・だからこそ、前へチャレンジしていくことをより強く意識させた・・そんなチャレンジングな姿勢こそが本来のコーチのあるべき姿だろう?・・オマエもコーチだから、よく分かっていると思うけれど・・」
ということで試合は、内容についても、結果についても、まさに完璧でした。強いセパハン守備を、組織プレーでも個人勝負プレーでも凌駕し、何度も崩し切った。特に、攻守にわたる素晴らしい組織プレーが心に染み入りました。何せ、リーグ終盤でレッズが展開したサッカーでは、ダイナミックな組織プレーが消え失せていたからね。久しぶりの、人とボールがよく動く組織サッカーに、舌鼓を打っていた湯浅なのです。
もちろんそこには、鈴木啓太、阿部勇樹、長谷部誠で構成する「中盤のダイナミック・トライアングル」が、特に守備においてハイレベルに機能しつづけたという絶対的なバックボーンがありました。要は、守備の目的であるボールの奪取シーンが素晴らしくアクティブで(活力にあふれて)効果的だったからこそ、次の攻撃も自然と活性化していったということです。やはり、守備こそが全てのスタートラインなのですよ。
トライアングルを形成する三人は、全員が、レベルを超えた守備意識の持ち主だからね。どんなハードワークでも、主体的に仕事を探し、徹底的に実行できる意志の強さを持っている。だからこそ、相互の信頼関係を極限まで高めることができる。
その信頼関係は、この三人のなかでの縦横のポジションチェンジに現れていただけではなく、最終ラインにも心の余裕を与えたに違いありません。まあトゥーリオは、どんなケースでもガンガン上がってくるだろうけれど、この試合では、ネネや坪井までが、最終勝負シーンに何度も顔を見せていたのです。だから、例えば長谷部誠と鈴木啓太が最終ラインに入り、トゥーリオとネネが最前線での最終勝負シーンに絡んでいる・・なんていうシーンも頻発したのですよ。まあ・・頼もしい限りです。
そんな、組織的なダイナミズム(迫力や活力にあふれた力強さ)は、もちろん最前線のワシントンにも好影響を与えていた。最近は、最前線で、動きのないネガティブなフタ(組織プレーの流れを寸断してしまうようなネガティブなフタ)になってしまうケースが多かったワシントンだったけれど、この試合では、仲間のダイナミックな協力プレーに刺激されたかのように、組織プレーの流れに乗るシーンが増えた。だからこそ、うまくスペースを使えるようになった。そしてそれが、素晴らしい「個のゴール」につながった。
この試合では、ワシントンによる「個のチャンスメイク」と、久しぶりにキレキレだった相馬崇人、はたまた「トライアングル」たちが演出する「組織的なチャンスメイク」が、うまくバランスしていた。とはいっても、やはりゴールチャンスのほとんどは、組織的な仕掛けから生まれていたけれどネ。特に、キレキレの相馬が演出するサイドからの仕掛けは迫力満点だっった(先制ゴールシーンだけではなく、その直前の、長谷部の信じられないシュートミスになったチャンスメイクも含めてネ)。
組織プレーマインドの高揚だけれど、ホルガー・オジェック監督が言ったように、やっと、深〜〜い蓄積疲労から解放されたことも大きかった。だからこそ、以前のような、チーム全員のダイナミックな「上下動」を(タテのポジションチェンジを)ベースにしたアクティブな組織プレーが出てきたというわけです。
リーグ終盤での組織プレーマインドの減退についてもっと突っ込んで分析すれば、こんなことも言えるかもしれない。それは、疲労が蓄積されていたことで、ワシントンとポンテという特異な才能に「頼る」というマインドが強くなりすぎたこと。疲れの深い蓄積にともなって、しっかりと守って、次の攻撃は前戦の三人に任せるという「前後分断サッカー」に逃げ込む傾向が強くなっていったということです。
もちろん相手は、そんなレッズの傾向を明確に認識し、ワシントンとポンテを徹底的に潰すなど、分かりやすい対策を練ってきた。また彼らは、レッズの最前線選手が、継続的な忠実ディフェンスを実行するタイプではないことも明確に分析していたから、それを逆手に取るような攻撃戦術も練り、しっかりと実行していった。そして、そんな成功したゲーム戦術を(レッズの)次の対戦相手もしっかりと流用したというわけです。だからそれは、レッズにとって負の連鎖だったと言えないこともない。
とにかく、リーグ終盤での大逆転劇というドラマチックな現象については、それが希有な出来事だったからこそ、しっかりと分析し、経験の引き出しにストックしておかなければなりません。それは、最高の学習機会でもあったのです。あっと・・脱線。
ところで、このゲームでの小野伸二の交代だけれど、中盤の誰かではなく、永井雄一郎との交代になったということには有意義なバックボーンがあったと感じていました。要は、ホルガー・オジェック監督が、中盤のセット(ダイナミック・トライアングル)の攻守にわたる機能性に対して、絶対的な確信を持ったということです。
さてこれで、ACミランと、誰もが納得するサッカーを展開できる準備が整った!? 私は、そう思っています。要は、世界の頂点にチャレンジする勝負マッチにおいて、持てるチカラを120パーセント発揮するような吹っ切れたサッカーを仕掛けていくための準備が整ったということです。もちろん、守備を絶対的なスタートラインにしてね。だからこそ、ウイニングチームネバーチェンジ! ワクワクするじゃありませんか。
もう2500時をまわってしまった。豊田スタジアムは名古屋駅から遠いからね。満杯のメディアバスに揺られて名古屋駅前のホテルに到着したのは2400時。そしてホテルで、バスがスタジアムを出発するまでの一時間である程度書き進んでいたコラムをまとめ直したという次第。それでも例によっての乱文。まあ、仕方ない。ということで、今日はこんなところです。
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。またサボティスタ情報ですが、最近、「こんな」元気の出る書評がインターネットメディアに載りました。
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