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2007_CWC・・世界トップとの「僅差」の本質は?・・(ボカ・ジュニアーズ対エトワール・サヘル、1-0)・・(2007年12月12日、水曜日)

「私は、ボカが、素晴らしいサッカーでエトワール・サヘルを圧倒することを期待してた・・ただ実際のゲーム内容は違った・・ボカは、チュニジアのチーム(エトワール・サヘル)を甘く見ていたということはないか?」

 ボカ・ジュニアーズ、アンヘル監督の記者会見が、「パス回し(ボールの動き)やツートップのプレー内容には不満が残った・・」とか、「ただし、決勝へ駒を進められたという結果に対しては満足・・」というように、どうも核心に迫っていないように感じたから、そんな質問をぶつけてみたのですよ。それに対して・・

 「決して甘く見ていたということはない・・パチューカとの準々決勝をしっかり見ていたから、サヘルが手強い相手だということは分かっていた・・まあ、ボカはビッグクラブだから、もっと簡単に勝てるのではないかという期待は分からないではないが・・ただこの試合では、均衡状態を崩していけるような選手が出てこなかった・・この半年、ボカは、アルゼンチンリーグで思ったように成果を収められていない・・だから、今回は勝つつもりで来たし、実際に決勝へ進めて満足している・・」

 フムフム・・。たしかに、サッカーの全体的な内容では、ほぼ互角のように見えていたと思います。ただ最終勝負の内容では、守備にしても攻撃にしても、確かな「差」があると感じました。ギリギリの勝負では、たしかにボカに一日の長があったと思うのですよ。

 まあ、ボカとサヘルの対戦だからね、ピックアップするのは、世界トップとの「最後の僅差」というテーマしかないでしょう。たしかにサヘルも、2-3度はチャンスを作り出した。それでも、チャンスの量と質では、セットプレーでの抜群の危険度なども含め、確実にボカに軍配が上がるのですよ。また守備でも(要はボール奪取の内容でも)、次の攻撃への素早く効果的な「切り替えのベースになる」という視点も含め、たしかにボカに軍配が上がる。

 たしかに「僅差」ですよ。でも、ボカの方が「上」だということは確かな事実。最後のところで雌雄を決してしまう「そこ」にこそ、重要なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されていると思うのです。

 もちろん、ボカが必死になったら、この「僅差」は確実に「大差」になるはずです。この試合では、その「必死さ」が十分ではなかったと感じたことが、わたしの質問のモティーブだったわけです。アンヘル監督は明確に分かっていたはずです。選手たちが、最高レベルの闘う意志でゲームに臨んでいなかったことを・・そしてだからこそ、試合中でのペースアップがままならなかったことを・・。

 同じように、サヘルのベルトラン監督にも(同根のテーマについて)質問をしてみました。「いま監督は、ボカが、ビッグチームだとか強いチームだとおっしゃいました・・サヘルとボカとの間には差があるということですが、その差の本質的なことを、一つか二つのキーワードで表現してくれませんか?・・こちらは物書きですからネ・・何かキッカケになるようなキーワードが必要なんですよ・・」

 そんな私の質問に、出てきましたよ、キーワードが。

 「ビッグチームはウチにないものを持っている・・経験・・それに、個人のポテンシャルの差もある・・それは、ビッグチームしか持つことができない、決定的な仕事ができるような個の才能・・我々は、インザーギとかカカーといった(レベルを超えた)個の才能を持ち合わせていない・・我々は、集団で(組織プレーを主体に)攻めるけれど、ビッグクラブは(組織力にプラスして)個のチカラでも攻めることができる・・それが上のクラスであることの証明でもある・・ドログバにしても、ボールを持ったら、自分一人のチカラでゴールを決めてしまう・・」

 戦術的に同じようなレベルだったら、最後は「個のチカラ」が勝負を決める・・。よく言われることだけれど、まあ、まさにそういうことですかね。たしかにボカは、人の動きについては不満も大きかったけれど、ボールはしっかりと動かしていたからね。そしてそのなかで、しっかりと効果的な個の勝負を織り交ぜていたのですよ。

 決勝ゴールにしても、決めたカルドーソは、意図的にゴール内の「天井」を狙っていたからね。下から急激に蹴り上げられるシュートは、ゴールキーパーにとっては取り難いコースなのですよ。それを知っているからこその意図的なシュートコース。また、(14番の)パラシオの意を決したドリブルシュート(僅かにバーをかすめた!)や、セットプレーで上がってきたボカ最終ラインディフェンダーの強烈なヘディングシュートなど。たしかに、局面勝負で個のチカラが光っていた・・!?

 それにしてもエトワール・サヘルは、攻守にわたって素晴らしく積極的なサッカーを展開した。準々決勝のパチューカ戦よりもワンランク上のサッカーだったと思いますよ。何せ相手は世界のボカ・ジュニアーズですからね、「我々はビッグクラブに対して、臆することなく全力でぶつかり、我々が優れたサッカーを出来ることを証明した」と、ベルトラン監督が胸を張るのも当然です。

 これでレッズは、準決勝のACミラン戦に勝っても負けても、次の試合では(決勝でも三位決定戦でも)これ以上ないという経験を積み重ねられることになった。もちろん、その経験を有意義なものにするためには(最高の学習機会にするためには)持てるチカラを出し切るような吹っ切れた闘いを展開しなければいけません。あっと・・もちろんミラン戦もね。とにかく明日が楽しみで仕方ありません。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。またサボティスタ情報ですが、最近、「こんな」元気の出る書評がインターネットメディアに載りました。

 




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