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2007_天皇杯準々決勝の1・・ガンバの小さな集中切れ・・ホンダFCが魅せた感動的な組織サッカー・・(2007年12月22日、土曜日)

さて、今シーズン最後のビッグイベント。その天皇杯準々決勝で、ガンバがエスパルスと、そしてアントラーズがホンダFCと対戦しました。両ゲームともにテレビ観戦ということで簡単にレポートをまとめます。

 あっと・・天皇杯は、例によって、ラジオ文化放送で決勝を解説する予定です。

 まずガンバ対エスパルス。最小点差のガンバ勝利だったけれど、純粋にサッカーの内容を比べれば、ガンバに一日以上の長がありました。その「差」のもっとも大きなバックボーンは、攻守にわたる組織プレーの量と質。たしかに個人的なチカラでもガンバにアドバンテージがあるけれど、それ以上に、攻守にわたる組織プレーのイメージがしっかりと確立しているガンバだと感じるのですよ。

 優れた才能にめぐまれた選手が、攻守にわたって組織プレー(汗かきプレー)にも精進する。それこそが、トップレベルサッカーでのメインテーマなのです。バルセロナにしてもレアルにしても、マンUにしてもアーセナルやチェルシーにしても、はたまたバイエルン・ミュンヘンにしても、現場のテーマは、いかに才能あふれる選手たちに、攻守にわたる組織プレーをやらせるのかというところに集約されるわけです。彼らは、その課題をしっかりとクリアできているからこそ、美しく、勝負強いサッカーを展開できるというわけです。もちろんビッグクラブは、「ライバル関係」を常に演出できるような経済的なバックボーンも備えているからね。

 また、ガンバの西野監督は、先日のリーグ戦の記者会見で「今シーズン我々が取り組んだ大事なテーマは守備にあった・・」といったニュアンスの発言もしていた。たしかに、守備こそがすべてのスタートラインだからね、そこでの「有機的なプレー連鎖」がうまく機能すれば、そこでの「積極マインド」が、次の攻撃イメージにポジティブに反映していくことは言うまでもない。要は、ガンバでは、優れた才能に恵まれた選手が、攻守にわたって、しっかりとした組織プレーも展開できているということです。まあ、様々な視点で、いまもっとも「バランスの取れたサッカー」を展開しているのはガンバだという評価に異論を唱える人は少ないに違いありません。

 とはいっても、純粋に「勝負」という視点では、ガンバは、まさに薄氷を踏んでいた。決勝ゴールを入れてからの30分間、いったい何度、エスパルスが決定機を演出したのだろうか。西沢の二度のヘディングシュート・・西沢の右足シュート・・原や枝村のシュート・・などなど。どれをとっても、「エッ!? どうしてゴールにならないの?」といった絶対的チャンス(ガンバにとっては絶対的ピンチ)でした。

 リーグ戦でも、何度もあったよね、全体的にはゲームを支配し、得点でも安定したリードを奪っているのに、最後の最後に同点ゴールを叩き込まれて貴重な勝ち点を失ってしまったという試合が。このゲームでも、相手がクロスボールを上げられる状況であるにかかわらず「寄せ」が甘いとか、中央ゾーンで待つ西沢の一瞬の動きにマークを離してしまうといったシーンが続出していた。

 全体的な流れでは、内容的に圧倒していても、肝心の最終勝負シーンで、一瞬、集中が途切れてしまう!? それは、優れた「個の能力」を有しているからこその一瞬のスキ(思い上がり)!? まあ、それがガンバの課題ということか・・。そんな微妙なテーマを克服するためには、やはりイメージトレーニングしかない。同じようなシーンになったときに自然と身体が動くようになるまで、繰り返し、繰り返し、集中切れシーンを「集中して」ビデオ観察するのですよ。

 それこそが、まだ厳然と横たわる「世界との最後の僅差」を縮めていくための決定的なツールなのです。何せ、最後の僅差には、サッカーで為される全てのプレーでの「小さなコト」が内包されているのだからね。

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 さて次は、アントラーズ対ホンダFC。

 この試合のレポートテーマは、何といっても、ホンダFCの感動的な組織プレーでしょうね。そのことについては、誰もがアグリーなはずです。とにかく、ホンダFCが展開した、攻守にわたる吹っ切れたチャレンジプレーには、観ている方の感動を呼び覚まさないはずがないと確信できるだけの魅力にあふれていたのです。そう・・やはり全力のチャレンジプレーほどの感動リソースはないのですよ。

 それにしてもすごかったね、ホンダの守備での「寄せ」。要は、素早く忠実な全力チェイス&チェックを繰り返すことで、グラウンド全面で、常に「守備の起点」を演出しつづけていたということです。

 ここでは、「常に」というのがキーワード。そこでは、チーム全体に、相互信頼の心理パワーがみなぎっていると感じました。どんなシーンでも、絶対に仲間がチェイスしていく(ボールへ寄せていく)・・だから自分も、次のボール奪取勝負を明確にイメージしてチャレンジしていく・・。ホンダのプレーからは、そんな積極マインドのオーラがビシバシ放散されつづけていた。ホントに感動しましたよ。

 それに彼らは、守備だけではなく、ボールを奪い返してからも、しっかりとした攻撃を展開できていた。ビビることのない確実なボールコントロールと、素早く大きな展開。パスをした選手は、脇目も振らずに次のスペースへ抜け出していく。そして、チャンスだと感じたら、勇気をもってドリブル勝負を仕掛けていく。それも、大変に危険で魅力的なドリブル勝負を・・。本当に、アントラーズは面食らっていただろうね。

 もちろん個のチカラでは(少し)劣る部分もありますよ。それをホンダは、攻守にわたる組織的な機能性で十二分に補っていた。要は、しっかりと(主体的に)走り続けていたということです。もちろん面食らっていたアントラーズも、徐々に本来の動きを取り戻していったけれど、「あの退場」がなければ、本当に勝負はどうなっていたか分からない。とにかくテレビ画面に釘付けになっていた120分間でした。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。またサボティスタ情報ですが、最近、「こんな」元気の出る書評がインターネットメディアに載りました。

 




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