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2007_最高にエキサイティングだった入れ替え戦と、順当な結末になった天皇杯・・(サンフレッチェ対サンガ、0-0)(ガンバ対トリニータ、3-1)・・(2007年12月8日、土曜日)

フ〜〜・・ホントに手に汗握る接戦だった。そして、サンフレッチェが二部に降格してしまった。実力からすれば、決して降格すべきチームじゃないのに・・。まあ、それも、偶然と必然が交錯するサッカードラマの為せるワザっちゅうことか。

 1300時から天皇杯の5回戦(ガンバ対トリニータ)をスタジアム観戦し、記者会見の直後に東京へとって返して入れ替え戦をテレビ観戦しました。両ゲームを簡単にレポートするつもりだけれど、やっぱりギリギリのエキサイティングドラマになった入れ替え戦から書きはじめることにした次第。それにしても、自然と身を乗り出してしまうようなホンモノのドラマでした。

 前半は完全にサンフレッチェのペース。第一戦を「1-2」で落としていることで、とにかく勝たなければならないからね。前掛かりになるのも道理なのです。でも、チャンスをゴールに結びつけられない。

 彼らの徹底した攻めには、それなりの危険度がともなっていました。右サイドを支配する日本代表の駒野友一を最大限に活かした仕掛け。クロスばかりじゃなく、クロスと見せ掛けたスルーパスを送り込んだり、中へ切れ込んでシュートを放ったり。そこには、明確な意図と意志がありました。でも・・。

 そして後半、立ち上がりはサンフレッチェのペースだったけれど、サンガの加藤久監督が、ミッドフィールドの斉藤大介に替えてフォワードのアンドレを投入したところから流れが変わりはじめます。スリーバックのサンフレッチェに対して、サンガが(田原、アンドレ、パウリーニョで構成する)スリートップ気味にしたことで(前戦が厚くなったことで)、サンガのプレーゾーンが上がり気味になっていったのです。それは、加藤監督の意志が、ポジティブに回りはじめた時間帯でした。

 ただ、田原に替わって徳重隆明が入ったところから、再び流れがサンフレッチェへと傾きはじめるのです。再び、ギリギリのスピリチュアルエネルギーに突き動かされるように、前へ前へと勝負を仕掛けはじめるサンフレッチェ。

 そしてそこから、ホンモノのシリアスドラマがスタートする。中盤で繰り広げられる、ものすごいエネルギーが放散される競り合いの応酬。そんな潰し合いでは、ややサンガに軍配が上がる。とにかく、サンガ守備の「忠実な寄せ」はレベルを超えた迫力だったのです。まったくといっていいほど、フリーでボールを扱える選手(=攻撃の起点になる選手)を作り出せないサンフレッチェ。

 それでも、J1に残留したいという選手たちの強烈な意志によって、再びゲームの流れを引き寄せるサンフレッチェなのですよ。それは、ちょっと感動的なプロセスでした。そこでも、主役は駒野友一。後半から左サイドへ移動したのですが、そこでも抜群の存在感を発揮するのです。もちろん駒野のゾーンには、柏木や盛田、森崎兄弟などが次々と顔を出し、駒野との鋭いコンビネーションを繰り出していく。

 それは、試合終了まで15分といった時間帯。サンフレッチェにとっては、どんなに泥臭いゴールでも一点さえもぎ取れば・・、逆にサンガにとっては、どんなことをしても一点さえ与えなければ・・という緊迫した状況がつづいたのです。そんななかで、駒野や佐藤寿人の惜しいシュートが飛び出したり、残り数十秒というタイミングでは、槇野のオーバーヘッドシュートが右ポストに当たって弾かれたりする。そりゃ、手に汗握るよな。何てったってこの試合は、天国と地獄の境目なんだから・・。フ〜〜

 そしてタイムアップ。観ていて、こんなに緊張するゲームは久しぶりでした。あっ・・と、そりゃそうだ、その試合は、天国と地獄の分水嶺ともいえる入れ替え戦だった。めくるめく歓喜と、奈落の落胆が交錯するドラマ。サンフレッチェにとっては厳しい現実だけれど、それでもサッカー(人生)はつづくから・・。ガンバレ・・

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 さて天皇杯。フクアリで行われたガンバ対トリニータをスタジアム観戦しました。結論から言えば、両チームの実力に見合った結果になったということですが、そこに落ち着くまでには、ちょっとした紆余曲折もありました。

 「ということは、それは、ガンバにとって起死回生の失点だったということですかネ・・」

 西野監督の、「あそこで失点したことでチームがよみがえった・・」という発言を受けて、起死回生の失点・・ってな発言から質問に入りました。わたしの質問の骨子は、「ガンバの場合、良い流れのときと悪い流れのときのギャップが大きすぎると思うのだが・・まあそれは、良いときのサッカー内容が素晴らし過ぎるということもあるのだろうが・・」というものです。そして、「もしその意見にアグリーの場合、その背景はどこにあると思うか・・私は、リーダーシップの欠如にあると思うのだが・・」と質問を結びました。

 それに対する西野監督の発言だけれど、私はそれを、このように理解しました。

 ・・たしかに、アタッキングサッカーが出にくくなってきているかもしれない・・とはいっても、我々の絶対的なコンセプトは守備の安定にある・・シーズンを通して着実に積み上げていった結果、守備に対する自信は上がった・・でも、それが攻撃にうまくつながっていかないことも事実・・それには、相手に研究されている部分もある・・でも我々には、そんな相手でも打ち破っていけるだけのチカラがあるはず(打ち破ることにチャレンジしていくことが大事!?)・・とにかく、守備の着実な発展に対して、攻撃の調子は上がっていかなかったということはあった・・それが、終盤に勝ち切れなかったことの要因かもしれない・・リーダーシップの欠如というテーマだけれど、我々は「個」ではなく、あくまでもチームワークが大事だという視点だ・・ガンバの場合は、チームコンセプトが大事だという考え方がベースになっている・・

 この一連のコミュニケーションの背景は、ガンバが、前半12分に先制ゴールを入れてから、プレーのテンポが遅くなった(ちょっとプレーが消極的になっていった)という現象だったのですよ。誰もが、そのことを感じていた。ハーフタイムでの西野監督のコメントも、「先制ゴールの後テンポが遅い・・全体的にもっとスピードアップしよう・・セーフティーに過ぎたら、ここ3試合と同じになるぞ!・・点を取りに行こう!・・」というカツ入れが主体だったようです。

 そして、タイミングのよいことに、後半立ち上がりにトリニータの高松が同点ゴールを叩き込んだというわけです。ガンバのスピリチュアルエネルギーが高揚しないはずがない。そして本来の実力に応じたサッカー内容で、ガンバが順当に勝利を収めたという次第。

 最後に、トリニータの梅崎司についてショートコメント。

 「梅崎司ですが、あれほどの才能に恵まれているのに、プレー内容は最低だと思う・・守備はやらないし、ボールがないところでのプレーも鈍重・・あんなプレー姿勢だったら、ボールを持ったらマラドーナくらいの活躍が出来なければ、クビになっても当然だと思う・・我々は、日本サッカーのためにも、彼が正しい方向へ行くように、シャムスカさんの指導に期待しているのだが・・」

 そんな私の質問に対し、シャムスカ監督は、あくまでも冷静に、そして微笑を浮かべながらこう答えてくれました。

 ・・梅崎司は想定外のプレーができる選手・・必要なところで、仕掛けのスピードを急激にアップさせられる優れた能力を持っている・・戦術的な発想にも優れている・・徐々にディフェンスでも発展している・・彼のポテンシャルは高い・・とはいっても、彼はまだまだ若い・・出来上がった一人前の選手と捉えるのはまだ早急・・とにかくこれから、もっともっと伸びていかなければならない・・

 まあ・・そういうことだよね。いつ梅崎司が「世界へつながるホンモノのブレイクスルー」を果たすのか。シャムスカ監督のウデも含め、これからも注目していこうと思っています。とにかく、若い才能が、守備の実効レベルとか、攻撃でのボールがないところでのプレー内容も含め、組織的なところで「停滞」するのを見ることほど辛いことはありませんからね。頼みますよ、シャムスカさん・・

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま四刷り(2万数千部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。またサボティスタ情報ですが、最近、「こんな」元気の出る書評がインターネットメディアに載りました。

 




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