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2007_ヨーロッパの日本人・・組織プレーと個人勝負プレーの「バランス」・・中村俊輔・・(2007年8月12日、日曜日)

「それは・・やっぱり状況を正確に判断するということですよね・・もちろん行けるところは勝負していきますよ・・」

 アジアカップ準決勝、サウジアラビア戦の前日、代表が宿泊するハノイ・シェラトンホテルで共同記者会見がありました。そこで、オシム監督と同席した中村俊輔選手に質問したのですよ。

 「(これまでの質問に対して)中村さんは、ボールがないところでの空ける動き(味方が使えるスペースを作る動き)だとか、組織プレーを強調しているけれど、こちらは、それと同じくらいのウェイトで、中村選手には個人勝負プレーも繰り出してもらいたい。例えば、ベトナム戦での同点ゴールを演出した左サイドでの勝負プレーとか、オーストラリア戦での三人抜きとか。中村さんは、組織プレーのなかで個人勝負プレーを絡めていくことに対してどのようなイメージを持っているか・・」

 要は、組織プレーの流れを阻害することなく、どのように効果的な個人勝負をミックスしていくのかというテーマ。何といっても、すべてのスタートラインは守備であり、組織プレーだからね。それを大前提に(組織プレーの流れに対する選手たちのイメージを阻害することなく)いかに効果的な個人勝負プレーを繰り出していくのかという普遍的なテーマのことです。このことについては、昨日の「J」、レッズ対レイソル戦レポートでも軽く取り上げました。また、アジアカップ総括レポートでも触れました。まあ、難しいテーマではあります。

 スコットランドリーグの開幕マッチ。キルマーノック戦(ホームゲーム)での中村俊輔は、後半18分に交代出場しました。そして、すぐにゲームのリズムを変えてしまう。それまで、まったく噛み合わなかったセルティックの攻めに、確固たるリズムをもたらしたのです。素晴らしいリーダーシップでしたよ。

 セルティック選手たちは、俊輔を捜してボールを預ける。それに対して中村も、あくまでもシンプルな組織パス(パス&ムーブ)を繰り返すことで、セルティック全体の「組織プレーのリズム」を高揚させていった。そして、そのリズムがある程度高揚したところで、タイミングよく、勝負ドリブルやキープドリブル(タメ)を繰り出していくようになった。

 結局は引き分けに終わってしまったけれど、俊輔がグラウンドに登場してから、明らかにセルティックのサッカーコンテンツが良い方向へと変容していったのですよ。とにかく中村俊輔が、抜群の存在感を発揮したゲームではありました。

 そして昨日おこなわれた、第二節、アウェーでのフォルカーク戦。ここでも中村俊輔は、全てのスタートラインである守備と組織プレーをベースに、攻撃における塩と胡椒とも言える個人勝負プレーをタイミングよく繰り出していくのですよ。

 味方のボールなしの動きを(味方の意志とイメージを)阻害することなく、軽快なタッチでシンプルなパス&ムーブを繰り返す中村俊輔。そして右サイドで相手と1対1になったら躊躇することなく個人勝負を仕掛けていく。また自らも、ボールがないところでの勝負の動きも積極的に繰り出していく。スッ、スッと、最前線を追い抜いて決定的スペースへ抜け出し、パスを受けて勝負ドリブルを仕掛けていくのですよ。ターゲットは、もちろん最終勝負パスや自らのシュート!

 そのメリハリは、本当に素晴らしい。セルティックの全体的な組織プレーイメージを高揚させながらも、要所では、自らの才能をしっかりと(勇気と決断力をもって)表現していく。もちろん、マクギーディーというスーパーなドリブラーの才能も、しっかりと活かすようなイメージでも攻撃の流れをリードする。

 とにかく、あのような「上手いタイプ」の選手にしては、攻守にわたる組織(汗かき)プレーは本当に素晴らしい実効レベルにあると思います。

 例えば守備。まあたしかに、ボール奪取勝負シーンでは、パワーやスピードでやられてしまうケースもあるけれど、例によっての「スリのようなボール奪取プレー」は上手いし、ボールがないところでの忠実マーキングも確実ですよ。それがあるから仲間から信頼される。

 自分がボールを奪い返せる状況にだけ全力を出すという怠惰な姿勢ではなく、ボールがないところなど、まんべんなく、進んで苦しい仕事もこなすという姿勢が大事なのです。そんなフェアな感性は、当然チーム内に深く浸透していくからね。そう、相互信頼の深化というカタチでね・・。

 そんな高質なプレー姿勢に舌鼓を打っていたから、中村俊輔が起点になった勝ち越しゴール場面や(勝負ドリブルからの決定的クロス・・そこでこぼれたボールをミラーが決めた!)、例によっての魔法のフリーキックで決めた三点目シーンでは、思わず「よしっ!」なんて声が出た。まあ、拍手だね。

 さて15日の水曜日には、欧州チャンピオンズリーグ3次予選ラウンドが行われる。セルティックの相手は、ロシアの強豪、スパルターク・モスクワ。相手にとって不足なし。それもアウェー戦だからね。いまから楽しみで仕方ありません。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。

 




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