トピックス


2008_CWC・・ボールのないところで勝負を決めるガンバ!?・・(ガンバvsアデレード, 1-0)・・(2008年12月14日、日曜日)

ギョエ〜〜ッ!? その瞬間、心の奥底から頓狂な声が沸き上がった。ロスタイムに飛び出した、唐突な「神様ドラマ」。もちろん、アデレードが放った決定的シュートのことですよ。

 最初は、ユーニスのボレーシュートが僅かにガンバゴールの左ポストを外れていったシーン。そしてその直後、カウンターからのアーリークロスを、ドッドが決定的ヘディングシュートを放ったシーン(まさに紙一重で右サイドへ外れた!)。

 キャプテンのドッドといえば、前半にも、カウンターから抜け出してフリーシュートを放ったり(右へ数センチ外れた!)、アデレードのスーパー左サイドバック、14番のジェーミソンが送り込んだ正確なクロスボールから、ガンバゴールのバーを直撃するヘディングシュートを放ったりしたっけ(そのうち一本でもゴールを割っていたら、まったく違ったゲーム展開になったよな〜〜・・まあタラレバのハナシだけれど)。

 とにかく、ロスタイムの決定的シュートには、ホントに肝を冷やしたのですよ。こちらは、(組織的でスマートな!)美しさとギリギリの勝負強さが高い次元でバランスしているという意味でも、日本を代表する(我々に誇りさえも抱かせてくれる!)チームの一つだと思っているガンバが、「あの」マンチェスター・ユナイテッドに「吹っ切れたマインド」で挑みかかっていくエキサイティングマッチをイメージしているわけだからネ、そのピンチの瞬間、まさにフリーズしてしまったのですよ。でも事なきを得て、ホントによかった・・

 「この試合での我々は、アジアチャンピオンズリーグ決勝から大きく発展していることを証明できたと思う・・皆さんも、我々がACLとは戦い方を変え、進歩したことを認識されていたはずだ・・」

 アデレードのヴィドマー監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。そう・・たしかにサッカーの内容は積極的になった。要は、より高い位置からボールを奪いにいった(より積極的なプレッシングサッカーを展開していった)ということです。「それでも、個の能力に優れた選手を多く揃えているガンバに、そんなチャレンジを効果的につづけていくことは難しい・・最後は、どうしてもフォーカスがブレてしまう・・」

 要は、アデレードが、ボール奪取勝負において出来る限り数的に優位なカタチを作りつづけるというイメージで試合に臨んでいたということです。ただ、局面の競り合いに人数を掛けようとすればするほど、よほど統制の取れた組織アクションをつづけない限り、必然的に、技術的に優れたガンバに「いなされる」シーンも増えてきてしまう。そのことをヴィドマー監督は、「フォーカスがブレる・・」と表現していたのでしょう。

 たしかにアデレードの「ハードワーク」は、ある程度は機能していたと思う。前からの積極的な(そして組織的な)ボール奪取勝負は、特に前半の半ば過ぎまでは素晴らしい実効レベルを魅せつづけ、彼らがゲームを支配するというゲーム展開のベースになっていた。だからこそ次の攻撃でも、効果的にボールを動かすことができていたし(≒スペースをうまく活用できていたし)前述したドッドの決定的チャンスも演出できた。

 それでも、ヴィドマー監督が言うように、疲れによって集中力がダウンしてきたことで、そんなプレッシングが「プレ気味」になっていったのも確かなことだった。要は、チェイス&チェックや協力プレスといった組織的な守備アクションの「連動性」に問題が出はじめたということです。

 たしかにボール奪取の機能性はある程度は保てていたけれど、徐々に、その後の攻撃での集中力は落ちていき、それが、本当にイージーなミスを誘発するようになっていったと感じた。そう、アジア・チャンピオンズリーグ決勝の再現・・

 攻め上がる流れのなかでミスパスをしてしまったり、あまりにも稚拙なパス出しアクションをガンバ選手に予測されてインターセプトされてしまったり。そりゃ、ダメだ。攻め上がろうと「前へ重心がかかっている」状況で、まさに「逆モーション」のようなタイミングでボールを失ってしまうのだから・・

 後半は、そんなシーンの連続でした。一点を追う展開ということで、攻守のバランスに対する「意識」が少し(攻めに)偏ったカタチで仕掛けていくアデレード。

 そんなだから、途中で「例によっての」イージーなパスミス等でボールを失ったが最後、すぐに決定的なピンチに見舞われてしまう。そして続けざまに、播戸やルーカス、遠藤といった、ガンバが誇る特異な才能連中が決定的チャンスを迎えるのですよ。でも決められない。それは、徐々に「神様のドラマ」に対する(イヤな)予感が首をもたげてきた時間帯でもありました。そしてロスタイムに飛び出した、神様ドラマになりかけた決定的ピンチ・・。フ〜〜ッ、ホントに良かった。

 とはいっても、実力で、ガンバに一日以上の長があったことは明白でした。

 たしかにアデレードも、ボールをしっかりと止めて蹴ることはできるけれど(ボールをしっかりと動かすことは出来るけれど)それでも、二軸動作ベースの「トット〜ン」というプレーテンポに代表される、局面でのボールコントロールの「微妙な質」だけではなく、全体的な組織プレーの「量と質」でも、明らかにガンバに軍配が上がるのですよ。

 ・・ボールコントロールに余裕があるからこそ、パスを受ける前のタイミングでも、ボールを持ってからでも、しっかりと周りを見ることが出来る(余裕のアイコンタクト=明確なイメージシンクロ)・・だからこそ、相互信頼ベースのフリーランニング(ボールがないところでの動き=パスレシーブや味方にスペースを作り出す動きなどなど)の量と質を限りなく高揚させられる・・そして、それこそが、ガンバが志向する組織的な(パスベースの)攻撃サッカーの絶対的バックボーン・・ボールのないところで勝負を決めるガンバ!?・・ってなコトかな西野さん?

 最後に、見事な決勝ゴールを決めた遠藤保仁(ヤット)にも登場してもらいましょう。

 「遠藤さんに質問なんですが・・決勝ゴールのシーン・・あれは、遠藤さんが展開の起点になり、そして最後にはフィニッシャーにもなった素晴らしいゴールでした・・最初は、遠藤さんが、左サイドから中央ゾーンへ展開パスを回した・・そして明神が二川へタテパスを通す・・そして二川から播戸へ・・そして最後が、播戸がバックヘッドで落としたボールを遠藤さんが蹴り込んだ・・私には、遠藤さんが、最初からフィニッシュまでのプロセスをしっかりとイメージして最終スポットへ入り込んでいったように思えるのですが・・それについてコメントいただけませんか?・・それともう一つ・・あの股抜きシュートは狙ったんですか?」

 そんな私の質問に対し(記者会見には、西野監督だけではなく、遠藤保仁選手も参加していた!)、ポーカーフェイスの遠藤選手が、「まあ・・イメージはできていましたね・・だから、二川がボールをもったときには(そのボールの持ち方を見て!?)既に(自然と!?)身体が動き出していました・・あそこが最終勝負スポットだとイメージできましたからネ・・」といったニュアンスのことを言っていた。

 そして最後に(例によってクールに)「あのシュートで、相手GKの股抜きを狙ったかどうかという質問もありましたが・・・・・・・・・はい、狙いました・・」だってサ。

 また遠藤選手は、他のジャーナリストの質問に対して、「アデレードのプレーには迫力を感じた・・あれが本来のアデレードなんだろうなと思っていた・・」とも語っていた。フムフム・・。相手に対するレスペクトも忘れない、フェアで聡明な遠藤ヤットではありました。

------------------

 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

=============

 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]