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2008_CWC_三位決定戦・・ガンバが為した、素晴らしい日本サッカープレゼンテーションに乾杯!!・・(ガンバvsパチューカ, 1-0)・・(2008年12月21日、日曜日)

たしかに後半は攻め込まれ、何度か同点機も作り出された。西野朗監督も、後半の最後の時間帯は、イッパイイッパイだったと言っていた。そして試合後のロッカールームも、憔悴しきった(それでも爽快な!?)雰囲気が支配していたと言っていた。

 そんな疲れ切ったガンバだったけれど、今回のCWCで彼らが為した成果には、本当に素晴らしいコンテンツが詰め込まれていました。彼ら自身にとってだけではなく、日本サッカー全体ににとっても。決勝の後で、ファーガソン監督も、ガンバは本当に良いサッカーを展開したと反芻していた。そんな「小さなコト」の積み重ねが、世界での日本サッカーの評価をアップさせ、国内では、本物のサッカー文化を浸透させるのですよ。

 ところで後半だけれど、西野監督にはこだわりがあったそうな。守り切ろうするのではなく、とにかく二点目をとりにいくことでゲームを勝ち切ろうという積極的で前向きなマインド。だからこそ、中盤の支配を強めようという意図の選手交代を敢行した。

 まあ、それが「西野美学」ということなんだろうね。受け身に守ろうとしても、マンU戦でブチかまされたセットプレーのように「防ぎようがない失点」の可能性はあるわけだからね。それだったら、『攻撃こそ最大の防御なり』という前向きな大原則を踏襲した方がいいに決まっている。そんなことを言いながら、「それでも、決定機を外し過ぎたけれど・・」だってサ。あははっ。

 前半のガンバは、本当に素晴らしかった。たしかにボールは支配されているけれど、決して守備ブロックが下がり過ぎることなく、とにかく積極的にボール奪取を狙いつづけていたのですよ。そう、前からのプレッシング守備。もちろん、その「ボール奪取勝負イメージ」が、次の素早い仕掛け(攻撃)までも内包していることは言うまでもありません。守備(ボール奪取)こそが攻撃のスタートポイントなのです。

 そんな「強烈な意志」が込められたガンバの守備。忠実なチェイス&チェック(ボールの追い込み)と、その周りでの「ボール奪取勝負狙いプレー」が有機的に連鎖しつづける。

 それにしても、播戸竜二と山崎雅人が繰り広げた(相手の最終守備ラインとGKとの間にある猫の額のような!?)決定的スペースを攻略するプレーは見事としか言い表しようのないほど抜群の「切れ味」だった。

 一人が下がってボールを受ければ、もう一人は、スッとパチューカ守備の視界から「消え」、次の瞬間には、パチューカ最終守備ラインの背後に広がる決定的スペースへ、まさに「爆発」という表現がピタリと当てはまる勢いで「抜けだしフリーランニング」を繰り出すのです。

 そのコンビネーションの糸を引くのは、ルーカスであり、橋本英郎であり、遠藤保仁であり、たまには両サイドバックや明神智和もスッと上がってくる。

 それにしてもガンバ攻撃陣は、繰り返し、見事な最終勝負コンビネーションを披露しつづけてくれた。一発ロングスルーパスや、一発浮き球ロングパス、はたまた、タテにボールを素早く動かしながら、タイミングを見計らった必殺スルーパスを通したりする。そんな「最終勝負パス」に対し、例外なく、ツートップのどちらかが、相手最終ラインの背後に広がる決定的スペースへ抜け出しているのです。

 ボールはキープされていながらも、決して「引く」ことなく、自分たちが描くイメージそのままの攻撃サッカーを仕掛けつづけたガンバ。本当に素晴らしかった。また後半でも、カウンターから、何度か決定的チャンスを作り出した(西野監督のいう、外しまくったチャンスのことですね)。

 この試合では、前述した山崎の播戸の「抜け出しフリーランニング」が目立ちに目立っていたけれど、本来のガンバのコンビネーションイメージでは、素早く広い人とボールの動きを基盤に、三人目、四人目の「消える動き」からの決定的フリーランニングをうまく活用して決定的スペースを攻略していくというのがベースです。まあ、その意味では、西野監督も言っていたように、まだまだ課題が山積みだということかもしれない。

 まあ、たしかに成功裏に最終勝負をフィニッシュできるシーンが少なかったとは言っても、彼らが展開した組織パスプレー自体は、非常に魅力的なモノだったことは確かな事実でした。だからこそ、日本サッカーのプロモーションとしても大いなる価値があったということです。

 対するパチューカだけれど、やはり、やろうとしていることは難しすぎると思う。しっかりとキープしながらボールを動かしつづけることで相手守備ブロックを振り回し、チャンスを見計らって、ワンツーの小さなコンビネーションを繰り返して決定的スペースを突いていくというイメージ。たしかに何度かは成功したし、決定的スペースからの最終勝負クロスやスルーパスで(ガンバ守備にとって)危ないシーンも作り出した。

 それでも、どうも、本当の意味での「危険な臭い」がしない。要は、ガンバ守備がまったく「届かない」状態で決定的シュートを打たれるというシーンは、ほんの数えるほどしかなかったのですよ。やはりパチューカは「つなぎ過ぎ」だと思うのです。

 それに対して、こんなシーンがあった。後半21分のこと。パチューカGKが、左サイドでボールを持ち上がり、最前線の決定的スペースへ「シンプル」なロングパスを送り込んだのですよ。まさに、単純なロングパス。ただ、それを受けたクリスティアンが、マークする中沢聡太を身体で押さえながらボールをキープして決定的なチャンスを作り出してしまうのですよ。

 そのシーンを観ながら、そうそう・・そういう単純な放り込みもミックスすれば、パチューカのポゼッションベースの仕掛けが、何倍にも危険なモノになるのにね・・なんて思っていた。パチューカの強面GKも、「まったく同じテンポとやり方」で攻撃を仕掛けていくチームメイトに業を煮やしたということなのかもしれないね。フムフム・・

 とにかく、ボール保持率ではパチューカに圧倒されながらも、実質的な「仕掛け合いコンテンツ」では、ガンバに一日以上の長があったことは確かな事実でした(互いにボールをしっかりと動かすパスサッカーを展開したけれど、ガンバの方が、守備の内容と、攻撃での人の動きで一日以上の長があった!?)。

 ガンバが為した、素晴らしい日本サッカーのプレゼンテーションに乾杯!

 どうも疲れ気味。これから決勝戦もレポートするつもりだから、この試合については、こんなところにしておきます。悪しからず・・。それにしてもガンバは素晴らしかった。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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