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2008_「J」入れ替え戦の1・・さすがに緊張感あふれるエキサイティングマッチになった・・(ベガルタvsジュビロ, 1-1)・・(2008年12月10日、水曜日)

ジュビロにアウェーゴールを奪われてしまったことも含め、ゲームの実質的な内容をフェアに評価した場合、ベガルタにとって「悔しい引き分け」ということになるんだろうね。

 それほど、この試合でのベガルタは、攻守にわたって積極的で効果的なプレーを展開していたのですよ。とはいっても、前半の立ち上がりにおけるサッカー内容は、明らかにジュビロの方が上回っていた。

 ジュビロは、局面の競り合いで、ベガルタよりも自信をもってプレーしていたという印象があったのです。だから、個のチカラの差が、より鮮明に浮き立っていた!?

 イレギュラーするボールを(身体のなかで比較的ニブい!)足で扱うというサッカーは、まさに本物の心理ゲーム。だから、「J1の方が、基本的なチカラで勝っているはずだ・・」なんていう「単なる表面的な思いこみ」も含め、気持ちにアドバンテージを持つ方が、より積極的なプレーを展開できるということかな。

 もちろんベガルタも攻め上がってはいたけれど、どうしても、ジュビロ守備ブロックを崩すところまでいけない。それに対してジュビロは、前田遼一、ジウシーニョ、松浦拓弥の「個の勝負プレー」や両サイドバックのオーバーラップ(そこからのクロス)を前面に押し出しながら、何度か惜しいチャンスを作り出すところまでいってしまう。

 ただ、そんなジュビロ優位の流れに、徐々に変化の兆しが見えはじめていくのですよ。

 ジュビロのやり方に慣れ(ジュビロの仕掛けプロセスをより明確にイメージできるようなった!?)より効果的に彼らの攻めを抑制できるようになったことで、次の攻めにも勢いが乗るようになったということですかネ。そしてそのことで、中島裕希や梁勇基の、勇気を振り絞った個人勝負からのシュートなど「ホンモノ感」のあるチャンスを生み出せるようにもなっていった。もちろん、そんな「発展」が、ベガルタの自信レベルを引き上げないはずがない。そう・・「心理的な善循環サイクル」が回りはじめたのですよ。

 どうだろう・・、私には、ゲームの流れが変化していった背景に、タテのポジションチェンジを極力抑えるというハンス・オフトの「イタリア式サッカーの発想」があったと思えてならない。

 要は、守備ブロックを「常にバランスよく整えておく」ために(攻撃での)仕掛けに人数を投入するリスキーな押し上げは極力避けるというハンス・オフトのチーム戦術によって攻撃が単調になり(だからこそ攻撃では、イタリアサッカーのように個の勝負を前面に押し出した仕掛けばかりが目立つ!)それを効果的に受け止めるベガルタ守備ブロックに「余裕」が生まれ、それが、次の攻撃にポジティブに波及していった・・!?

 まあ、そういうことだろうね。そしてベガルタは、まさに「勝ち取った」と呼べるような素晴らしい先制ゴールを奪ってしまうのですよ。

 その後のゲーム展開は興味深かった。リードされたジュビロは「リスク」を冒して同点ゴールを奪いにいかなければならなかったわけだけれど、仕掛けの流れを、うまくチャンスに結びつけられないのですよ。そりゃ、そうだ。選手たちのアタマのなかにあるイメージタンクの(特にボールがないところでの!)自由で積極的なリスクチャレンジの動き(=組織的な攻撃の変化!)という発想を去勢してしまった(!?)んだからね。

 それじゃ、後方から押し上げてくる三人目のオーバーラップといった実効ある(ワンツーを重ね合わせるような複合的な)仕掛けコンビネーションなど出てくるはずがない。そしてジュビロは、肝心な最終勝負シーンでは、個のドリブル突破チャレンジばかりを繰り返すのですよ。もちろん、たまには両サイドバックから効果的クロスが入ったりするけれど、「中」の人数が足りないわけだからね・・

 とはいっても、後半8分に(ジュビロ)松浦拓弥がブチ込んだ目の覚めるような同点ミドルシュートは、ジウシーニョの「静かに置くようなラスト(ファウンデーション)パス」も含め、見事の一言だった。まあ、これもサッカー・・

 その後も、何度かの惜しいシュートや、バー直撃のフリーキックなど、勇気ある攻めを魅せつづけたベガルタだったけれど、守りを固めたジュビロの牙城を崩せなかっただけではなく、逆に、このゲームでは最も決定的と言えるカウンターシュートチャンスを作り出されてしまった(前田遼一が抜け出してフリーシュート・・それを、ベガルタGK林卓人が、勇気ある飛び込みセービングで防いだ!)。フムフム・・

 なかなか微妙な「状況」だね。もちろんアウェーでの「1対1」という引き分けだから、一般的にはジュビロの方が有利ということになるのだろうけれど、二戦目のホームゲームを「0対0」の引き分け狙いというのでは、究極の心理ゲームであるサッカーの場合、ネガティブな現象を「引き寄せて」しまうことだって大いに考えられるわけだからね。

 まあ「一般的」には、ハンス・オフトが「イタリア式サッカー」を徹底させていることもあって、ジュビロの、しっかり守ってカウンターというやり方(ゲーム戦術)が有利なことは動かせない事実だけれど、もちろんベガルタにしても、そんなジュビロのやり方を明確にイメージしながら、そのウラを突く作戦を練ってくるでしょう。そんなゲーム戦術的なせめぎ合い(騙しあい)も含め、とにかく、ギリギリの勝負であるからこその素晴らしい学習機会ということだよね。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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