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2008_「ユーロ08」・・徐々にダイナミズムを高揚させはじめたドイツ・・オーストリア対ドイツ(0-1)・・(2008年6月17日、火曜日)

どうも皆さん、昨日の早朝に帰国しました。おはよう成田便。そして帰宅してからすぐに、たまっていた仕事や所用を一つひとつ片付けていったのですが、ある程度目処がついたのは夜になってからでした。飛行機のなかではほとんど寝られなかったこともあって、ちょっと意識がもうろうとした状態。

 でも頑張って、ビデオ録画してあったトルコ対チェコ戦を、軽く流すという感覚で観はじめたのですよ。翌朝には、オーストリア対ドイツの大一番もありますからね。あまり気を入れず、どうせチェコがトーナメントに進出するだろう・・ってなノリだった。でも実際には・・

 すごかったですね、大逆転劇を完遂してしまったトルコの執念。まだまだ、個の勝負が前面に押し出され、それを積み重ねていくという感じのサッカーではあるけれど、ツボにはまったら相乗効果を発揮する。要は、局面での勝負が効果的にチェコ守備ブロックを「引きつける」ことで、フリーになった別のゾーンにいる選手の足許へ鋭くボールが動かしていくという発想。

 人とボールが動きつづけ、局面での「身体接触」を極力避けるというイメージの組織プレーに対し(まあ・・チェコ)、局面での個人勝負を強調することで「そのゾーン」に相手ディフェンダーを集中させ、そして「逆に相手ディフェンスが薄くなったゾーン」を突いていくという「個の勝負」を前面に押し出していく発想。もちろん、最初のステーションで「そのまま」ドリブル勝負を仕掛けてシュートまでいってしまうことだって可能なわけです。

 要は、組織プレーという基調イメージのなかに、効果的に個の勝負を「挿入」していくという組織ベースのサッカー(要はチェコのことです)。そして、個の局面勝負を積み重ねていくという発想を基調に、最終的な仕掛けプロセスに入ったら急激なテンポアップでボールを相手守備の薄いゾーンへ動かしたり(緩から急へ!)、そのままドリブル勝負やワンツーコンビネーションで仕掛けていったりという「個の勝負を積み重ねていくという発想」のサッカー。

 その対比は、なかなか興味深かったけれど、それにしても、スーパーGKのチェフも含めたチェコの守備ブロックが、あれほど振り回されたことにはビックリしていました。

 圧倒的なゲーム支配から2点のリードを奪ったチェコの気の緩み(!?)と、逆に、吹っ切れた仕掛けの勢いが極限まで高揚したトルコ(ボールがないところでのサポートの動きも倍増した!)という「減退と高揚」が織りなしたドラマ・・といったところですかね。やはりサッカーはホンモノの「心理ゲーム」。フムフム・・

 そんな興奮のドラマによって眠気が吹っ飛んでしまったけれど、それでもやっぱり少しは寝なければもたないとベッドに横になったのですが、そのとき目覚ましの「ON」ボタンを押すのを忘れてしまったのですよ。そして目が覚めたときには、すでにオーストリア対ドイツは終わった後。テレビのスイッチを入れたとき最初に画面に登場したのは、キーちゃん(北沢豪)が事後解説しているシーンだったという体たらくでした。

 まあ、ということで、簡単にゲームを振り返ってみましょうかね。まず何といっても、ヨアヒム・ロェーヴ監督が、チームを大きくいじらなかったということ。サイドバックのヤンゼンをアルネ・フリードリッヒに代えただけでした。

 巷では、うまく機能していないフリッツをサイドバックへ戻し(要はヤンゼンを外し)そこにトロホフスキーを入れるだけではなく、調子が上がらないマリオ・ゴメスを外してポドルスキーを上げることで空いた左サイドハーフにトーマス・ヒッツルシュペルガーを入れるというメンバー構成の調整が行われるというもっぱらの噂だったのですよ。わたしも、特にトロホフスキーには期待していたから(トーマス・へスラーの再来をイメージ!?)先発メンバーを見て、ちょっとガッカリしたものでした。

 それでも、ドイツは、好調に立ち上がりました。まず前半の5分、ミロスラフ・クローゼが、右サイドを疾風のようなドリブルで駆け抜け、相手ディフェンダーを上手い切り返しで翻弄してゴール前のゴメスへピタリと合うグラウンダーのラストパスを通したのです。ただ、そのパスは、ゴメスの足に届く直前で軽くイレギュラーバウンドしてしまうのですよ。

 ゴメスの足に「当たり」ポーンと大きく弾んでしまうボール。誰もが目を疑った瞬間です。そして誰もが思ったに違いない。「マリオ・ゴメス・・オマエはもう用なしだ!」

 とはいっても、それは、単にゴメスに「ツキ」がなかっただけ。あの「軽く弾んだイレギュラー」がなければ、観ている誰もが「ゴ〜〜ル!!!」と叫び、そしてこう思ったことでしょう。「マリオ・ゴメス・・やっと本来のゴールゲッターの感覚が蘇ってきたな・・頼りにしてるゼ!」

 サッカーは理不尽なものなのですよ。ただその後のマリオ・ゴメスは、やる気を何倍にも増幅させ、ドリブル勝負トライや中距離シュートチャレンジなど、本来のスピードやパワーを感じさせるダイナミックなプレーを披露しました。でも「そんなやる気」は、クロアチア戦でこそ前面に押し出すべきだったよね。そこでは「待ち」の姿勢が目立つばかりだったからね。この試合のように、まずスペースへのスタートを切ることで、パスを「呼び込む」ような積極プレーにもトライしなければならなかったのですよ。

 結局は、ヘディングでの「高さ」にしても「ドリブル勝負」にしても、はたまたゴール前での巧みさにしても、ストライカーとしての目に見える価値という視点で、同僚のクローゼの後塵を拝するばかりだった。わたしは、ゴメスが「爆発」すれば、他の誰よりも頼りになるストライカーだと思ってはいるのですがね。

 それにしてもミヒャエル・バラックの決勝フリーキックは強烈だった。まさにキャノンシュート。オーストリアゴールの右上隅にブチ込まれたシュートは、まさに無回転ボールだったわけで、あれだったら、ゴールキーパーの正面に飛んでも、GKは抑え切れなかったに違いない。

 テレビ画面上でも、そのボールが「軽く振れている」ことが十分に視認できたからね。要は、真球度が高まったことで、飛んでいるボールの表面に起きる「渦巻き状のカルマン波」によってボールの表面が「引っ張られ」、ボールの飛び方が微妙に変化するということです。それにしても、眠気を吹き飛ばすような、本当にすごい決勝ゴールだった。

 この日のドイツは、まだまだ本調子ではないにしても(まあ・・引き分けでもトーナメント進出という状況では仕方なかったかな・・)徐々に調子は上向きになりつつあると感じられた。もちろんそこには、相手のオーストリアが積極的に仕掛けてきたという背景もあります。攻撃的なオーストリアに触発され(特にボール奪取勝負シーンでのせめぎ合いが選手の攻撃マインドを刺激する!)自らも、攻守にわたって積極的に仕掛けていけるようになったということです。

 次の準々決勝では、優勝候補のポルトガルと激突します。2006ドイツワールドカップでは、3位決定戦で完勝を収めた相手だけれど、状況がまったく違うからね、試合展開もまた違ったモノになるでしょう。

 そこでは、ドイツが、クリスチアーノ・ロナウドに代表されるポルトガルの「上手さ」に翻弄されるかもしれないし、逆に、個を前面に押し出すポルトガルの「局面勝負」を完全に掌握することで彼らの「やる気を完璧に減退」させてしまうかもしれない。とにかく、この試合は「組織vs個」という構図になることこと請け合い。わたしも、まずは「その視点」で観戦しようと思います。

 とにかくお互いに、とことんサッカーを楽しみましょう。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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