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- 2008_「ユーロ08」・・互いにレスペクトする同士の一発勝負だからこそ、地力の差が出た・・スペイン対ロシア(3-0)・・(2008年6月27日、金曜日)
- フムフム・・なるほど。ゲームの展開を追いながら、何度もうなずいていました。
スペインは、ロシアが秘める実力の高さを認め、地に足の着いたゲーム戦術イメージを徹底してきたのです。だから、リスクチャレンジをロジカルにコントロールするような「注意深い仕掛け合い」になった・・だからこそ「地力の差」が出た・・。
ところで、ロシアの(もちろんフース・ヒディンクの!)ツボが爆発したオランダとの準々決勝。そのゲームの(戦術的&心理的な!?)構図は、こんな具合だったと思っています。
・・オランダは、自分たちのサッカーをやろうとしていた・・積極的な組織ディフェンスでボールを奪い返し、人数を掛けた(人とボールがよく動く)組織プレーと個人勝負プレーがハイレベルにバランスする美しい仕掛けを繰り出していく・・そのようにオランダが積極的に仕掛けてきているからこそ、ロシアの協力プレス(守備こそが全てのスタートライン!)がツボにはまり、高い位置でボールを奪い返すという彼らのチーム戦術的な意図が効果的に機能した(ツボにはまった)・・
・・オランダが攻め上がっていたからこそ、ボール奪取から間髪いれずに繰り出される次のカウンター(気味の)仕掛けが最高の実効レベルを発揮した・・その流れには、後方から何人ものロシア選手が参加していった(ボールがないところでの人の動き=オーバーラップ!)・・だからこそロシアは、多くの仕掛けシーンで数的に優位なカタチを演出し、相手ディフェンスブロックを攻略できた・・そんなロシアの仕掛けをコントロールできず、徐々に足が止まったオランダは、心理的な悪魔のサイクルにはまり込んで自己崩壊していく・・
・・オランダは、何度も「イメージを修正する」チャンスはあったけれど、結局は、それを司るリーダーシップに欠けていた・・そして最後は、ロシアのツボの炸裂によって完膚無きまでに叩きつぶされてしまった・・フ〜〜
ただスペインは、そんなオランダの失敗から、しっかりと学習していたのですよ。
だから、決して安易に攻め上がり「過ぎ」ず、前後左右のポジショニング&人数バランスをしっかりとマネージするように仕掛けていった。そして、ロシアが「全体的」に下がり気味になった状況を見計らい、今度は、嵩(かさ)にかかって人数をかけていった。それもまた「地力の差が出た」という現象だったわけです。
開幕戦でロシアと当たったスペインは、積極的にボールを奪いにくるロシアを意図的に「来させていた」なんていうフシがあった(まあ、相手の積極的な勢いに自然と注意深くなっていったという表現の方が妥当かもしれないけれど・・)。そして蜂の一刺し(必殺カウンター)を見舞った。
その失敗もあって、この試合でのロシアは、スペインの必殺カウンターに対し、前後左右の人数&ポジショニングバランスを取るように気を遣っていた。前からプレッシングを仕掛けていく「ロシアのツボ展開」を、イメージ的に(要は、フース・ヒディンクによるゲーム戦術として)できる限り安定方向でコントロールしようとしていたということなのかもしれない。
とはいっても、後半の立ち上がりなど、ロシアが前から(ボール奪取勝負を)仕掛けはじめた時間帯もあった。
ここが「地力の差」の本質かもしれないけれど、ロシアの「前からのボール奪取勝負(仕掛け)」をしっかりとイメージしているスペインは、素早く人とボールを動かすことで「ロシアのプレス網」を振り回し、逆に、ロシアの前へ仕掛けていくエネルギーを利用してウラスペースを突いてしまうのですよ。そんなゲームの流れを意図的に演出してしまうところが「地力の差」っちゅうことです。素晴らしい。
途中で、抜群のシャドー・ストライカー振りを誇示しつづけていたダビド・ビジャがケガで退場し、代わりにセスク・ファブレガスが出てきた。わたしは、そのことで、スペインの攻撃が、より変化に富むモノになったと感じていました。
フェルナンド・トーレスを「最前線のアクセント」に(要は、相手守備を引きつけるポイントとして活用しながら)シルバ、セスク、シャビ・エルナンデス、そしてイニエスタが、ダイナミックにポジションをチェンジしながら、シンプルタイミングの組織パスプレーと抜群の個人勝負プレーを効果的に組み合わせながら決定的スペースを突いていくのです。
この組織プレーと個人プレーのバランス(要はメリハリ)についてのイメージシンクロレベルは本当素晴らしい。だからこそ、人とボールの動きが停滞しない。フムフム・・
そんな抜群の攻撃の絶対的なベースは、もちろん「優れた守備意識」。スペインには、『積極的に攻守の仕事を探しながら互いに使い・使われる』というメカニズムに対する深い理解があると感じます。
あっと・・。中盤の底で(要は、前気味リベロとして)抜群の存在感を誇示しつづけている『マルコス・セナ』にも注目だね。彼こそが、「勝負強さが格段に高揚したスペインチーム」の隠れたヒーローだからね。もちろんアラゴネス監督のウデにも拍手です。
さて、これで決勝のカードは、ドイツ対スペインということになりました。ものすごく深くて広い「学習コンテンツ」が満載の勝負マッチになりそうな予感です。
もちろん一発勝負だから、互いに注意深く(ミスをしないように)プレーすることになるけれど、それでも見方によっては様々な発券があるはずです。
まあ、取り敢えず想像できるのは・・優れた組織と個のバランスプレーを誇るスペインが、全体的にはゲームをコントロールする・・ただ、ドイツの守備ブロックを崩し切るというところまではいけない・・それに対し、カウンターと高さのセットプレーで対抗していくドイツ・・もちろんスペインも、ドイツのカウンターとセットプレーには出来る限りの戦術的な対抗策を練ってくるだろうけれど・・ということで、勝負を分ける究極のポイントは「フィジカル」に収斂される!?・・なんていう「構図」かな〜〜。
さて、どうなるか。スペインが、美しさと勝負強さが高い次元でバランスしたサッカーで世界の賞賛を浴びるのか。それともドイツが、2006年ドイツワールドカップのような「クリエイティビティー(創造性)」も併せ持つような「力強さ」によって、サッカー世界地図のなかにおいて(サッカー内容という意味も含めた!)復活を「再」アピールするのか。
それとも、ドイツが、勝負に徹するサッカーでスペインをねじ伏せ、世界から「また、ドイツのパンサー(戦車)サッカーが勝っちゃったゼ・・フ〜〜・・」なんて揶揄されることになるのか・・。
とにかくお互い、サッカーをとことん楽しみましょう。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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