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2008_ユーロ08決勝・・素晴らしく美しいサッカーで順当に頂点に立ったスペイン・・これからの立ち直りプロセスが五里霧中のドイツ・・スペイン対ドイツ(1-0)・・(2008年6月30日、月曜日)

「フ〜〜、まあ仕方ない・・それにしても、ドイツの内容は悪すぎたよな・・スペインは、技術的にも戦術的にも完全にドイツを上回っていたし、世界中がそのことを目撃してしまった・・この結果は尾を引くかもしれないな・・ドイツサッカーのイメージダウンという意味でもな・・」

 「確かにそうだな・・負けるにしても、あれだけスペインに内容で凌駕されたら、後遺症は深刻かもしれないし、もしかしたら、これで、この世代が終焉を迎えるということになってしまうかもしれないな・・」

 ゲームが終了してから、ドイツの親友と長電話していました。あっと・・、ハナシのなかで彼が情報をくれました。「何だ、日本のテレビ中継では把握できていなかったのか・・フィリップ・ラームが前半だけでヤンゼンと交替したのは、足を、何針か縫わなければならない大けがをしたからだったんだよ・・」

 さて、この試合でのテーマ。それは、何といっても、サッカー内容で完全に凌駕され、勝負の流れでも、まったくノーチャンスだったドイツといったところでしょうかネ。逆から言えば、本当に強かったスペイン・・今大会で最高のチームが、まさに最高のカタチでタイトルをゲットしたということです。世界のサッカーにとっては、内容と結果がフェアに合致したという意味で、良いフィナーレだったと思います。

 それにしても、立ち上がり10分のドイツは本当に素晴らしいサッカーを展開した。

 とにかく、人とボールが(タテ方向へ!)夢のように大きくスムーズに動きつづけ、そのコンビネーションの流れのなかで、ラームが、ポドルスキーが、はたまたクローゼが、何度もスペイン守備ブロックのウラに広がる「決定的スペース」へと侵入していったのですよ。ドイツに攻略されつづけたスペイン守備ブロック・・といった立ち上がりのゲーム展開ではありました。

 守備がうまく機能しないスペインだから、攻撃の流れが好転するはずがない。スペインの攻撃では、横パスばかりで、ドイツ守備ブロックの「懐」へチャレンジしていく縦パスが、まったくといっていいほど出てこないのです。たまに縦パスが飛んでも、それは「逃げの」縦パス(ロングパス)だから通るはずがない。

 タテ方向にボールが動かず、ドイツ守備ブロックに仕掛けの流れが潰されつづけるスペイン。最前線のフェルナンド・トーレスが、焦燥の表情を浮かべていたモノです。

 そんなゲーム展開を見ながら、『スペインはドイツを怖がっている・・レスペクトし過ぎだ・・やはり(ドイツの勝負強さという)歴史に支えられた心理が、スペイン選手のマインドに重くのし掛かっているということかな・・なんてことを考えていたものです。

 ただ、そんな、スペインチームに立ちはだかっていた「心理的なカベ」が、前半14分に自ら作り出したチャンスによって霧散してしまうのです。それを境に、心理的なカベを突き崩したスペイン。そのチャンスは、こんな感じでした。

 左サイドでのイニエスタのタテへの抜け出しフリーランニングに(勇気をもった!)タテパスが送り込まれたのです。誰もが息を呑む決定的チャンス。最後は、ドイツ選手に当たってコースが変わったシュートをレーマンが指の先ではじき出したけれど、まさにそれは、起死回生のスペインの決定的チャンスだったのです。

 そしてそこから、スペインが息を吹き返し、自信を取り戻していったと感じたわけです。ボールがより「タテ方向」へ動きはじめるなど(スルーパスも通りはじめた!)上手い個の局面プレーをスムーズに積み重ねていく「スペイン的」な組織の流れに、彼ら本来の、相手のウラを突く創造性があふれ出してくるようになったのですよ。そしてゲームの流れがガラリと変容していく。

 この変換点は、ドラマチックでもありました。そんな劇的なゲームの変容プロセスを観察しながら、こんなことを思っていました。やっぱり、ボールがないところでの人の動き(パスを呼び込む動き)が出てこなければボールが動くはずがない・・やっぱり人の動きこそがすべてのスタートラインだよな・・。

 そこからのゲーム展開は、皆さんもご覧になったとおり、スペインの独壇場ということになりました。

 ラームがケガで退場したことは確かに痛かった。(彼と交替した)ヤンゼンでは何も起きないことは誰の目にも明らかだったからね。それだけではなく、ドイツ代表ロェーヴ監督の采配が、ことごとく裏目に出てしまうのですよ。

 ヒッツルシュペルガーに代わって出場したクラーニーは、攻守にわたって役に立たないたけではなく、逆にヒッツルシュペルガーが去ったことで、バラックが少し下がり気味になり、彼の存在感(中盤での攻守にわたるリーダーシップ)が大きく減退するなど、マイナス効果の方が目立ってしまうのです。またドイツベンチは、ダメの烙印を押されていたマリオ・ゴメスをもクローゼに代えて投入するのですよ。フ〜〜

 とにかく、追いかけているドイツが、監督の采配も含め、まったくといっていいほど「追いつける可能性」を感じさせられなかったことは厳然たる事実です。サッカーの歴史のなかで恐れられていたドイツの勝負強さ。それを、まったくといっていいほど表現できなかったのです。

 その勝負強さは、例えば、相手を完全に凌駕する運動量と闘う意志を前面に押し出すダイナミックな守備や、それを基盤にした、前後左右の激しいポジションチェンジを繰り返す圧倒的な迫力の(終わる気配がまったくしない!)組織プレーからの危険な仕掛けの繰り返しなどに現れてきます。それが・・

 一度だけ、フリングスが最前線へオーバーラップして縦パスを受けたシーンがあったけれど、そこでもフリングスは、チカラなくトラップミスをしてしまった。消極ビールスが蔓延するドイツ代表。そして無為なミスパスを繰り返すなかで、どんどんと足が止まっていく。

 結局ドイツは、見るも無惨な低級サッカーに落ち込んでしまったわけだけれど、とにかく「あんな無様な負け方」は久しぶりです。これは、立ち直るには、かなりの時間とエネルギーが必要になりそうな予感がする。何せ、バラックやクローゼ、はたまたフリングスといった、2002年から2006年までのポジティブな発展の流れをリードした主力プレイヤーたちが、明らかに下り坂に入っているからね。

 それに、ラームやポドルスキー、シュヴァインシュタイガーやトロホフスキーといった「中堅」と融合すべき若い世代が台頭してきているというハナシも聞かない。このことについては、7月の末にドイツのヴィースバーデンで開催される、ドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟主催の「国際会議」で、ドイツのコーチ仲間とディベートするなかで情報を収集したいと思います。

 とにかく今大会は、スペインが素晴らしく美しいサッカーで順当に頂点に立ったという意味で、大成功のうちに幕を閉じたとすることが出来そうです。サッカー人として、素直に良かったと思っています。もちろん、そんな吹っ切れた心理になれた背景には、ドイツが、スペインに追いつけるような雰囲気さえ演出できず、サッカーの内容で完膚無きまでに叩きのめされたという事実もあるわけですがネ。

 それでもサッカーはつづく・・のです。ドイツ代表では、そろそろ「マティアス・ザマー」の出番ですかネ。今のドイツには、カリスマ性こそが必要だからネ。とにかく、これからも(日常と非日常の両方で!)お互いに、とことんサッカーを楽しみましょう。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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