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- 2008_ヨーロッパの日本人・・稲本潤一と小野伸二・・(2008年3月10日、月曜日)
- やっぱり、局面でのボール奪取勝負では、稲本潤一はアジアのレベルを超えている。この試合(フランクフルト対ボーフム)でも、目の覚めるようなパワー&スピード&テクニックの迫力ボール奪取アタックを魅せてくれました。
昨年11月ころから出場機会が減りつづけていた稲本。私にとっては、さもありなん・・というプレー内容ではあったわけです。自分からチェイス&チェックを仕掛けていくという積極的な「守備の起点プレー姿勢」が見えてこないというのは確かな事実だったからね。
もう何度も書いている通り、チームメイトとのポジショニングバランスを調整するというイメージでプレーしているのは分かるけれど、そのバランスをしっかりと取りながらも、それを「超越」して「守備の汗かきプレー」を繰り出していくことに対する積極性がまだまだ足りないというのが私の評価でした。
自分自身がボールを奪い返すチャンスを狙い過ぎて「様子見」になってしまう!? まあ、そういう側面も多いと思いますよ。ただしそれには、眼前の「忠実な仕事」に十分に取り組んでいかないことへの言い訳的なニュアンスも含まれているだろうから、「擬似のアリバイ姿勢」とも言い換えられる。多分フランクフルトのフンケル監督も、同じような不満を抱いている(た!?)に違いない・・。
そんな稲本が、ここのところの二試合で、中盤の底としてフル出場をつづけています。そこでは、守備のポジショニングバランス網から飛び出していくような積極的なボール奪取勝負も魅せるようになったし、守備の起点プレー(汗かきのチェイス&チェック!)や、味方のカバーリングだけではなく、味方のカバー状況を明確にイメージしながらの攻撃への押し上げや、しっかりとしたボールコントロールからの効果的な展開パスなどでも存在感が上がってきているように感じる。
味方にボールを「奪わせる」というニュアンスも含む勝負のツボをしっかりと押さえた効果的なディフェンスプレー。そして、攻撃での確実なバックアップ(リンクマン的な)プレー。ちょっと稲本のプレー内容が好転してきたように感じられたことで、自然とキーボードへ手が(指が)伸びてしまったというわけです。
まあ、環境こそが人を育てるということでしょう。強力なライバルを押しのけてスターティングラインアップに名を連ねるのは簡単じゃないからね。とにかく稲本潤一には、傑出した個の能力を「もっと活かしていく」ためにも、ボールがないところでの「忠実プレー」の量と質を充実させていって欲しいと願って止まない湯浅なのです。
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さて、ボーフムへ移籍した小野伸二。基本的には「二列目」。要は、チームのなかで、もっとも自由を与えられたポジションということです。まあ今のところは、守備にしても、インターセプトを狙う程度・・という基本姿勢で許されているようだし。
よく動いてボールに触ろうとしています。そして、流石のボールコントロール(ボールキープ力)から繰り出される展開パス。良いですよ。でも「それだけ」じゃ、これから生き残っていける保証はありません。
シュートシーンを演出しなければならないチャンスメイカーというタスクを与えられているからね(だからこそ自由度も高い!)、もっと危険な「タメ」を演出したり、ドリブル勝負で局面を打開するような本物のチャンスメイクプレーが求められるようになるでしょう。今のところは、中盤の後方と最前線を「リンク」するボールのディストリビューター(ボールのデヴァイダー≒ボールの分配役)とか、後方の選手を前戦へ「送り出す」ような、タテのポジションチェンジの演出家といったイメージだけれど・・。
とはいっても、当時のフェイエノールトのように、周りに「オレが!・・オレが!」というチームメイトがひしめいているだろうから、彼のような「確実なボールのデヴァイダー」の存在は大事かもしれない・・なんていう発想もある。
もっとも重要なことは、「あるチーム戦術的な理解」を、チームメイト全員が確実に共有することなのですよ。
「オ〜ノにボールが入ったら(いや・・パスが入る前の段階から)誰でもチャンスのある者は、前方のスペースへ飛び出していく!」・・そんな共通の仕掛けイメージが共有されたら、フェイエノールトのときのように、小野伸二の特異な能力が、チーム戦術の中で上手く機能するかもしれないよね。さて・・
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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