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- 2008_ヨーロッパの日本人・・中村俊輔・・(2008年3月29日、土曜日)
- スゲ〜〜な〜、肉弾戦とは、まさにこの試合のためにある表現だね。両チームのスピリチュアル(&フィジカル)エネルギーが強烈にぶつかり合う。とにかくグラスゴー・ダービーでは、いつもギリギリの闘いが展開されるよね。
それは、それでエキサイティングで興味深いけれど、中村俊輔にとっては、ちょっと苦手なゲーム展開に違いない。
彼がセルティックに移籍して最初のグラスゴーダービーを鮮明に思い出しますよ。そのゲームでの俊輔は、ホントに何も出来なかったからね(途中で交代させられた!?)。ボールは、彼のアタマの上を行ったり来たりするばかり。そんな大雑把な展開に対して、中盤で「オレを中継しろよ!」と手を広げてアピールする中村俊輔。それでも、パスが回ってきたら、それを狙っていた複数のレンジャーズ選手が、強烈なタックルを見舞うのです。フ〜〜ッ・・。ゲームを観ながら、そんな俊輔のため息が聞こえてくるような気がしたものでした。
もちろん、当時と比べたら状況は大きく好転しています。セルティックのサッカーも、よりスムーズに(素早く、広く)ボールが動くようになっているからね。そのポイントに関して、中村俊輔の貢献度が大きいことは言うまでもない。まあ、ゴードン・ストラカン監督が期待していた中村俊輔の影響が、そのままカタチになったということでしょう。その意味では、ストラカン監督のウデを高く評価しなければいけません。
またレンジャーズが展開するサッカーの質も、以前とは比べものにならないくらい高揚していると感じます。そんなこともあって、ゲーム内容の「肉弾戦レベル」は以前ほど高くはない。全体的に、グラスゴー・ダービーが洗練させてきているということかな。もちろん局面では、肉がぶつかり合う音が響きわたっているけれどね。
さて中村俊輔。例によっての十分な運動量を基盤に、攻守にわたって、効果的に組織プレーをリードしています。いつものように、しっかりと守備からゲームに入っていけていたし、アリバイではなく、実効あるディフェンスも出来ていた。
後方からのタテパスをピタリとコントロールし、相手のアタックをエレガントに「かわして」タテ方向への展開パスを送る。そして間髪を入れずに次のタテのスペースへ抜け出していく。やはり中村のボール絡みのプレーは一流です。
ただこの試合に限っては、そんな彼のプレーが、チームのスムーズな組織パスプレー(人とボールの動き)を高揚させるキッカケとして効果的に機能しているというわけでもなかった。
それは、チカラの差が拮抗しているレンジャーズのディフェンスが、忠実で素早く、そしてパワフルだからに他なりません。その守備については、もちろんセルティックも同様にダイナミック。それが、両チームともに上手くスペースを使えないことの背景にあったということでしょう。まあ、それこそがグラスゴー・ダービーであることの証なわけだけれどね。
そんな厳しいディフェンス網をかいくぐるように、何度かフリーでタテパスを受けることができた俊輔だったけれど、相手ディフェンダーの寄せが早くパワフルなこともあって(それも複数の相手が同時にボール奪取アタックを仕掛けてくる!)そのプレスの勢いをうまく「抑え」られない。普通だったら、ボールを「スッと晒(さら)してタメる」ことで、相手のプレスのアクションを(相手のアタックの意志)を減退させられるけれど、この試合での(ディフェンダーの)気合いレベルは尋常じゃないからね。
とはいっても、やはり俊輔のフリーキックは素晴らしい。セルティックにとって(また日本代表にとっても)かけがえのない武器です。
とにかく正確だし、カーブが掛けられたボールの軌道も、ディフェンダーやゴールキーパーにとって守りにくいことこの上ないものです。
直接ゴールを狙うのではなく、味方に合わせるフリーキックの場合、それは基本的には「スペースへ!」という発想。この試合でも、サマラスを「おとり」に、その動きによって出来たスペースへ走り込んできたフェネホールのアタマにピタリと合わせるという決定的シーンがあった。スペースが空くことを予想した正確なフリーキック。それに対する信頼があるからこそ、チームメイトの、ゴール前でのアクションが大いに加速していくというわけです。
「あそこに走り込めば、必ず、俊輔が合わせてくれる・・」「あそこには、必ず誰かが飛び込んでくれる・・」
そんな信頼関係があると感じます。フリーキックからの(動きに合わせるを前提にしたスペース勝負の)ダイレクトシュートでは、相手よりも「アタマ一つ」出ていれば勝てるわけだし、そこでは「高さ」が決定的要素になるというわけでもないからね。だからこそ日本代表でも・・
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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