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2008_ヨーロッパの日本人・・そろそろ中村俊輔は、中盤でのリーダーシップというテーマにも取り組んでいかなければならない・・(2008年4月18日、金曜日)

ちょっと遅れてしまいましたが、セルティック対レンジャーズのグラスゴー・ダービーを簡単にレポートします。

 それにしても、スゲ〜ッ先制ゴールでしたね、中村俊輔。完璧に、イメージした通りの美しい軌跡を描いてレンジャーズゴールの左上角を突き破った。レンジャーズGKにしても、あれだけボールが変化したら届きっこない。もちろんこのシュートは、無回転ボールではなく、俊輔が意図した変化球だったわけだけれどね。

 この頃のボールは「真球度」が高いことで、無回転ボールを蹴れば、「カルマン波」という渦巻きがボールの表面に出現してくることで、ボールが予期せぬ変化をします。だから、無回転シュートは危険なのですよ。要は「揺れるボール」ということ。野球で言えば、ナックルボール。有名なのは、松坂のチームメイト(ボストン・レッドソックス)のウェイクフィールドといったところですね。

 でも俊輔の先制ゴールは、強烈な意図が込められた(はじめから回転を掛けられた)変化球でした。後方からのカメラは、右から左へ、まさに魔法のように曲がっていくボールの軌跡が明確に捉えていた。以前(たしか2002年ワールドカップ前にパリで行われたフランス対ブラジルのトレーニングマッチ!?)ロベカルが決めたフリーキックのような美しい変化球。まさに目の覚めるスーパーゴールでした。

 でも、そのシーン以外の俊輔は、うまくセルティックの攻撃を(組織プレーの流れを)リードすることが出来なかった。

 中村俊輔は、もちろんボールに絡みはするけれど、ハードなマークをされていれることもあって、シンプルに(安全・確実に)横パスをつなぐというシーンばかりが目立ってしまう。もちろん、パス&ムーブで動きながら「次のパス」をもらおうとはするけれど、一度ボールを手放したら最後、そのまま味方が、ドカンッ!と一発ロングボールを放り込んでしまうか、マクギーディーやロブソンといったドリブラーが、ゴリ押しのドリブル勝負を仕掛けていってしまうのですよ。まあ、今シーズンのセルティックは、そんな流れのゲームがほとんどということも確かな事実であるわけだけれど・・。

 そんな流れだから、俊輔が「オレにボールを戻せ!」といったって誰も聞きゃしない。まあ、「ダービー」という非日常テンションもあっただろうし、セルティックにとっては、絶対に勝たなければいけない試合でもあったわけだけれど、だからこそなおさら、しっかりと組織プレーをベースに組み立て低下泣けばならなかったのに・・。とにかく、落ち着いた組織プレーという視点では、明らかにレンジャーズの方が優れたサッカーを展開していましたよ。

 ちょっとフラストレーションがたまり気味の中村俊輔。それでも後半25分には、この試合2本目のスーパーシュートを放ち、それを手で止めた相手が退場させられるという素晴らしい勝負シーンを魅せてくれたし、前半では、フェネホールへのスルーパスや、後半でも、ヒンケルへの抜群に正確なサイドチェンジパスから決定的チャンスを演出した。

 そうそう、後半の最後の時間帯では、俊輔にボールが集まりはじめたことで、セルティックの仕掛けが、明らかに危険なモノへと発展していったことにも触れなければならなかった(まあそれには、相手が一人退場になったこともあったけれど・・)。

 やはり、中村俊輔の「アイデア」が主導するコンビネーションが機能しはじめたら、セルティックの仕掛けコンテンツに広がりと深みが出てくるよね。要は、組織コンビネーションが効果的に機能することで(ボールがないところでの動きが活性化することで)、うまくスペースを使えるようになったということだけれど、それがあったからこそ、単独ドリブル勝負やクロス攻撃が、より効果的にもなったということです。

 まあ、日本代表でプレーすれば、中村俊輔のアイデアが、よりスムーズに組織プレーをリードしていくことは確かだと思うけれど、わたしは、(現状の)セルティックのなかでこそ、組織プレーを引っ張っていって欲しい(リーダーシップを発揮して欲しい)と思っているのですよ。

 たしかに、あれだけの個性的な選手が(個人事業主が)集まったグループだから、それは、ちょっとしたチャレンジだろうけれど、だからこそやり甲斐があるだろうし、俊輔にとっても、次のステージへ「ブレイク」していく(次の段階へステップアップしていく)ための良い機会のはずだから。

 肉を切らせて骨を断つというワールドカップ地域予選。そこでのギリギリの勝負を着実に勝ち抜いていくためには、中村俊輔が、中盤でリーダーシップを発揮することが必要なのです。そろそろ、その意味でも「ブレイク」しようぜ。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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