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2008_日本代表・・岡田ジャパンは(実質的なプレー内容でも)正しいベクトル上を進んでいる・・(日本代表vsパラグアイ、0-0)・・(2008年5月27日、火曜日)

「日本代表だが、前半と後半ではまったく違うチームになったという印象だった・・その変化に(後半は少し調子を上げた!?)パラグアイのサッカーがどのくらい関係していたのかは分からない・・とにかく、日本代表は、前半は素晴らしいサッカーを披露し、後半は悪くなったというのは確かなことだと思う・・(印象的には!?)後半の日本代表は自滅したと言えるかもしれない・・」

 パラグアイのマルティノ監督(アルゼンチン)が、記者会見の冒頭で、立ち上がり25分間の日本代表のサッカーは素晴らしかった・・それに対してパラグアイは手も足も出なかった・・ただそれ以降はパラグアイも良くなり、後半は互角の展開になった・・まあ引き分けはフェアな結果だったと思う・・という発言をしたことで、それに触発された私が、彼の言う前半と後半の差異というポイントを深掘りする質問を投げかけました。それに対してマルティノ監督が、冒頭のように(真摯に!)答えてくれたというわけです。ナルホド、ナルホド・・

 私にとっては、そのマルティノ監督の言葉だけで十分でした。それこそが、このゲームにおけるもっとも重要なテーマだったのですよ。

 前回のコラムで、岡田武史監督率いる日本代表は「正しいベクトル上を進んでいる」と書きました。そこでの「進んでいる」という言葉のニュアンスは、チームに浸透させるべき攻守のやり方(その考え方)に言及したものでした。

 それに対して、同じタイトル(正しいベクトル上を進んでいる・・)にした今日のコラムでのニュアンスは、そのチーム戦術的な考え方を、しっかりとグラウンド上の現象としても表現できていたというものでした。

 要は、コートジボワール戦での日本代表がやろうとしていたことは、たしかに正しいベクトル上にはあったけれど、(ある程度は機能した前半の立ち上がりも含めて)実際の機能という視点では、満足いくものではなかった・・それに対して、この試合の前半に展開したサッカーは、岡田監督が志向する(!?)サッカーが、非常に高い次元で表現されていた・・ということです。

 岡田武史監督が志向しているに違いないサッカー(攻守のやり方についての考え方)については「コートジボワール戦のコラム」を参照してください。

 ただ、そんなマルティノ監督の(正しい)分析コメントに対して、岡田武史監督が、記者会見の冒頭でこんなニュアンスのことを言ったのです。

 「前半のポゼッションは良かった・・ただウラスペースを突いていくという視点では十分ではなかった・・それに対して、松井が入った後半は、より良い展開になったと思う・・とにかくこの大会では、様々なテストが出来た・・そこでは、どんな選手が出ても最低限のサッカーはできるということを確認できた・・選手の交替については交替するタイミングも含めてプラン通りだった・・」

 その発言には、ちょっと納得いかなかったけれど、岡田監督にしても、公式の場で(前後半の)サッカー内容について比較評価することは避けたかったんだと思う。もちろん私は、そんな彼の意向はよく分かっていた。だから、そのテーマに関する質問は止めにした。とにかく、私の評価として、このコラムで書けばいいだけのハナシだから。

 ということで、私の見立て。簡単に書けば、こんな感じ。

 前半は、決してポゼッション「だけ」じゃなかった・・素晴らしい組織ディフェンスを絶対的なベースに、次の攻撃では、しっかりとボールを保持しながら、人とボールの活発な動きをベースにパラグアイ守備ブロックを振り回し、効果的にウラのスペースを活用してビッグチャンスを作り出していた・・それに対して後半は(個人プレーが組織的に機能せず!)どんどんとサッカーが縮こまっていったという印象の方が強い・・たしかに前半よりも個の才能(選手)は増えたけれど、結局は「諸刃の剣」のネガティブ要因ばかりが目立つことになってしまった・・

 日本代表が前半に作り出した「組織的な仕掛け」からのビッグチャンスは、本当に意義深い「グラウンド上の現象」だったと思いますよ。そのことについては、観戦した誰もがアグリーするに違いありません。

 もちろん、その絶対的ベースは、素晴らしくダイナミックな組織守備。チェイス&チェック(守備の起点プレー)をベースに、夢のような集散(協力プレスと次の守備アクションへの移行)を繰り返す日本代表なのです。そしてボールを奪い返した日本代表は、クリエイティブな攻撃を仕掛けていくのですよ。そう、こんな感じで・・

 立ち上がり4分の(完全にパラグアイ守備のウラスペースを攻略した!)巻から山瀬へのラスト横パス(最後の瞬間にボールがイレギュラーしたことで、山瀬のダイレクトシュートは正確にヒットせず!)・・そこでは、まず右サイドで憲剛から俊輔、俊輔から憲剛へとボールが素早く動き、そして憲剛から巻への決定的タテパスが出される・・本当に、夢のような人とボールの動きだった・・また、左サイドのスーパーマン長友佑都も、しっかりと左サイドの「ウラスペース」を攻略できていた(タテのスペースを狙う長友に、積極的なタテパスが送り込まれていた!)・・

 ・・また、左サイドで遠藤ヤットと長友佑都が絡んだコンビネーションから俊輔にボールがわたり、そこから、逆サイドの(ファーポストスペースへ入り込んでいた)トゥーリオへ正確なサイドチェンジ・ラストクロスが送り込まれるという絶対的チャンスもあった・・そのシーンでは、トゥーリオの爆発ヘディングシュートが相手GKの正面に飛んでしまうという不運に見舞われた!・・

 ・・また、素早いタテ方向のコンビネーションから、最後は、逆サイドスペースへ走り込んだ巻へのラストクロスが通ったシーン(ここでも、パラグアイ守備ブロックのウラスペースを攻略!)・・阿部から中村俊輔へのウラスペースへのロングパスが通ったシーン(そこでは、俊輔のファーポストスペースへのクロスボールによって決定的カタチを演出した)・・

 前半では、中村俊輔や中村憲剛の中距離シュートチャレンジも含め、そんな危険なチャンスメイクのオンパレードだったのですよ。でも後半は、たしかに局面では惜しいシーンもあったけれど、どちらかといったら個の勝負が空回していたというニュアンスの方が強かった。逆に、個のプレーが「不規則に、実行を伴わないカタチで」出てきたことで、組織プレーの「イメージの流れ」が阻害されたとも言える。

 要は、松井大輔と大久保嘉人に代表される「諸刃の剣プレイヤー」のことです。前回のコラムでもちょっと触れたけれど、彼らのプレーは、攻守の目的を達成するための「実効」という視点で、決して役に立っていたわけじゃないと思うのですよ。彼らの才能には疑う余地はありません。だからこそ残念なのです。

 二人とも「待ちの姿勢」が強すぎるのです。もっとボールがないところで「組織的なプロセス」にも絡んでいかなければいけません・・そして、もっとシンプルにプレーし、爆発的なパス&ムーブも繰り返さなければいけない・・それがあってはじめて「良いカタチ」で個人勝負を仕掛けられるようなシーンを演出できる・・動かないで足許パスをもらったって、相手に取り囲まれてしまうだけ・・そして「逃げパス」を出すだけといった体たらくになってしまう・・

 ・・タメにしても、振り返って相手と正対する(相手ゴールを向いてボールをキープする)わけじゃないから(要は、背後からのプレッシャーを身体でブロックするのに精一杯!)相手の視線と意識をフリーズさせてしまうような本物のタメとは言い難いし、ドリブル突破にしても、やっぱり限界がミエミエ・・もっと良いカタチで勝負できたら、もっと効果的に才能を表現できるのに・・

 要は、もっと守備にも実効あるカタチで参加すべきだし、もっとダイナミックに(ボールがないところでも)動けということです。最終勝負シーンで「のみ」動くのでは、高い確率でコンスタントにチャンスを作り出せるはずがない。強烈な意志が込められた「全力ダッシュ」の量と質こそが、才能を秘めたストライカーに対する「もっとも大事な評価基準」なのです。

 それにしても、中村俊輔は素晴らしかったネ。セルティックの試合コラムでは、日本代表に戻ってくれば、俊輔がやりたい組織プレーを思いっきり出来るはず・・なんていうニュアンスを書くのが日常になってしまったわけだけれど、だからこそ、この試合での俊輔は、水を得た魚ってな感じだった。

 とにかく運動量が多い・・そして、ボールがないところでのマークなど、守備も忠実だし、ボール奪取勝負にしても格段に進歩していると感じる・・攻撃では、立ち上がりから、続けざまに決定的な仕事をする・・流れのなかからのダイレクトパス・・正確なサイドチェンジ・・正確で危険なクロスボール・・常に味方とのイメージがシンクロしつづける・・とにかく味方の信頼度は抜群・・だから、彼がボールを持ったら周りが走る・・ダイレクトパスのタイミングでも、タメからのパスのタイミングでも・・素晴らしい・・

 最後に、岡田監督の言う「テスト」について。

 彼は、「タイミングも含め、はじめから交替は決めていた・・」と言う。また、「最初のメンバーだったらどんなサッカーになるのか分かっていた」とも言った。たぶん彼は、後半のメンバー構成だと「こんなサッカーになるはず」ってなことも明確に見えていたに違いない。でもそのポイントは、『この段階でのチームマネージメントという視点』では公にするのは得策じゃないよね。もちろん、場合によっては、メディアを活用した選手の(心理)マネージメントという高度なテクニックあるわけだけれどネ・・。

 とにかく、岡田監督が、どんなメンバー構成(ゲーム戦術イメージ)でオマーン戦に臨むのか、興味の尽きないところではあります。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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