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- 2008_日本代表チームについての雑感・・守備意識こそが生命線・・才能に恵まれているからこそ・・(2008年11月18日、火曜日)
- 以前、サッカーダイジェストに下記のような文章を発表しました。テーマは、守備意識の高揚。
もっと言えば、才能があるからこそ、しっかりと、攻守にわたる「汗かき」もやらなければならないというテーマ。
組織プレーと個人勝負プレーのバランスという視点では、やはり日本は、組織プレーに重きを置かなければならない・・その絶対的バックボーンは、全員が一体となって「ボール奪取勝負」を仕掛けつづけること・・そんな優れた守備意識こそが、後ろ髪を引かれないリスクチャレンジあふれる組織的なダイナミック攻撃を生み出す・・それがあってはじめて個の才能を最大限に活かすことができる・・
そして文章の流れは、前述の「才能があるからこそ守備を!もっと運動量を!」というポイントに収斂していくわけです。
小野伸二、松井大輔、大久保嘉人・・。天賦の才に恵まれた選手たち。まあ、他にもいるよね。
たしかに彼らは局面でのボールコントロールは上手いけれど、攻撃の目的である「シュートを打つ」ことに対する「実質的な貢献度」という視点で、本当に役に立っているのかい? ボールをもったら、どんな状況でも相手をドリブルで置き去りにできるかい? 相手2-3人に取り囲まれても、まっくた動じることなく余裕でボールをキープすることで効果的な「タメ」を演出し、最後は、鳥肌が立つような決定的スルーパスを繰り出したりできるのかい? それが出来ていれば(私も含めて)誰も文句も言わず、彼らのために(彼らの感覚に従って)プレーするさ。でもネ・・
「それ」が出来ないにもかかわらず、全力で守備をしない、(攻撃でも)ボールがないところで全力で動かない。そのことが問題なんだよ。才能あふれるテクニックは、監督にとっては「麻薬」みたいなものだからね。彼らの「現実」が見えていても、どうしても欲しくなる・・。でも日本の「才能」のほとんどは、攻撃の目的達成プロセスに対して、「才能ベースの個人勝負」をうまく活かし切れていない。
才能に恵まれているからこそ全力でディフェンスしろ!、(攻撃では)ボールがないところでも全力で走り回れ!(そう、中村俊輔のように!?)・・
そのテーマが明確に進展すれば、おのずと、岡田ジャパンに対する期待が高まりをみせるようになるだろうし、日本サッカーに対する貢献度も、相乗的に高揚していくに違いないと確信する筆者なのです。
前置きが長くなった。それでは、サッカーダイジェストに今年の5月に発表した文章です。
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「あのチームでは、ヨハン(クライフ)も含めて、一人の例外もなくしっかりと守備につくことが大前提だったんだよ。オマエは、しっかり守備をするということの意味は分かっているよな。それがあったからこそ、チャンスを見つけた誰もが最終勝負シーンまで絡んでいけたし、次の守備で大きくバランスが崩れることもなかった。まあ、今でも、あのサッカーが出来たことを誇りに思っているよ」
オランダ伝説のスーパーコーチ、故リヌス・ミケルスが、私の目を正面から見据えて言った。私も登録しているドイツ(プロ)サッカーコーチ連盟が、彼を国際会議に招待したときのことだ。それからも何度か、教えを請う機会があった。
1974年ドイツワールドカップで光り輝いたオランダ代表を率い、世界サッカーの潮流を変えた男。全員守備、全員攻撃のトータル・フットボールを現実のものにした。今でも、世界の名だたる名将が「あのサッカーから目指すべき方向が見えてきた」と言う。
後に「ボール狩り」と表現されるほどダイナミックな協力プレス守備がフル回転で機能しつづけた。それがあったからこそ、「ポジションなし」とまで呼べるような、縦横無尽のポジションチェンジを駆使したアグレッシブでリスキーな攻撃を繰り出していけたのだ。
彼らのメインテーマは、岡田武史率いる日本代表にも通じるものがある。効果的な攻撃のバックボーンは優れた守備にあり。
日本の個人能力レベルは「世界」と比べて高くはない。たしかに、中村俊輔に代表される「局面でのボール扱いの上手さ」ではかなりの水準に達してはいるけれど、単独ドリブル突破に代表される、個の勝負による局面打開という点では、アジアに対しても四苦八苦するなど限界は明白だ。
やはり今の日本は、攻守にわたって「組織」を前面に押し出す方が得策であり、それ故、一人の例外もなく、相手よりも多く動き回ることで数的に優位なカタチを作りつづけなければならないのである。
単独ドリブル勝負にしても、人数の揃った相手に対して強引に仕掛けていくのでは簡単に潰されてしまうだろう。それに対し、人とボールのシンプルな動きを連動させることで相手守備の薄いゾーンやウラのスペースを突いていけたらハナシは別。そこでボールを持てば、より有利にドリブル勝負を展開できるはずだ。
攻撃でのサポートを極限まで活性化させるというテーマ。そこでは、前方にチャンスを見出した誰もが、後ろ髪を引かれることなく全力で押し上げていけるだけの心理的バックボーンが必要だ。ボールを奪われても味方がカバーしてくれるという安心感。全員の守備意識が高まり、苦しい状況でも全力で戻る汗かきディフェンスが当たり前という心理環境が整えば、おのずと相互信頼が醸成され、組織プレーも深化していくはずだ。
優れた守備意識は、運動量をアップさせ、攻撃での優れた組織プレーや、より効果的な単独ドリブル勝負を引き出す。そして、攻撃での自信の深まりが、守備意識をより発展させる。それこそが、目指すべき「ポジティブ心理サイクル」なのである。
ただ実際には課題も多い。特に、優れた才能に恵まれた選手の守備における実効レベルを上げる作業は重要だ。一人でも、守備の流れに全力で乗れない(乗らない)選手がいれば、極限の組織プレーを志向する日本代表だからこそ、チームのモラルダウンも含め、その悪影響は計り知れないほど大きいのである。
限られた天賦の才だからこそ、前戦からのチェイス&チェックといった汗かきアクションも含む「ホンモノの守備プレー」にも全力で取り組むように導かなければならない。それも、岡田武史が取り組むべき重要なテーマなのだ。自分の欲望さえ満足すれば・・という利己的な姿勢を許せば、それは確実にチームの闘うマインドを蝕んでいく。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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