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2008_ナビスコ決勝・・内容でも結果でもエスパルスを凌駕したトリニータ・・彼らには「意志のチーム」という称号が相応しい!・・(トリニータvsエスパルス、2-0)・・(2008年11月1日、土曜日)

オオ〜〜ッ!! そのとき、トリニータの素晴らしいプレーに対し、思わず感嘆の声が出た。それも、三度もつづけて。

 まず、前半17分から18分にかけての一連のプレー。トリニータが、右サイドでボールを回す。その流れのなかで最後にボールを持った右サイドバック高橋大輔が、間髪を入れずに、センターゾーン前気味にポジション取っていたエジミウソンへ「ワンのパス」を出し、脇目もふらずに全力でタテの決定的スペースへ飛び出していく。そう、爆発的な「ワンツー」コンビネーション・・

 ここでのキーワードは、何といっても、高橋大輔が魅せた「最後まで走り切るフリーランニング」。その勢いがあったからこそ、エジミウソンの「ツーのスルーパス」がプレることはなかった。それは、トリニータに、明確なコンビネーション(タイミング)イメージが浸透していることの証明でもありました。それはまさに、相手のウラを突くイメージシンクロプレーでした。

 残念ながら、高橋大輔がダイレクトで送り込んだクロスボールはエスパルス守備につかまってしまったけれど、その流れるような「全力ダッシュ」のコンビネーションに舌鼓を打っていましたよ。それが最初の「オオ〜」・・

 それだけじゃなく、そのクロスボールを拾ったエスパルスGKが送り出したタテパスからのカウンターをめぐる攻防も見応え十分でした。いや・・、エスパルスのカウンター攻撃ではなく、そのカウンターを全力で抑え切ったホベルトの守備の方です。

 そのシーンは、こぼれ球を拾ったエスパルスGKの山本海人が、右サイドを駆け上がる山本真希の前のスペースへ素晴らしいスローイングパスを送ったところからはじまる・・まさに願ってもないカウンターチャンス・・でも、そこには、そのカウンターの流れを「読んで」いたトリニータ選手がいた・・ホベルト・・彼は、エスパルスGKから山本真希へスローイングパスが送られた瞬間(その直前!?)には、自分のマークを放り出して山本真希のマークへ急行した・・まさに全力ダッシュ・・そして最後は、爆発的なスライディングで山本真希の突進を止めた・・それだけではなく、上手いスライディングだったら(最後は山本真希の足に当てることで)トリニータのスローインにまでしてしまった・・それが二つめの「オオ〜」・・

 そして最後が、その数分後の前半24分に、ホベルトと高橋大輔のコンビが魅せた、イメージシンクロ・コンビネーション。

 高橋大輔からの横パスを受けたホベルト・・ちょっとタメを演出する・・次の瞬間、高橋大輔が爆発した・・タテの決定的スペースへ全力で飛び出したのだ・・そこへ、正確なタテパスを送り込むホベルト・・本当に見事な「ウラ取りコンビネーション」ではありました・・あまりにも見事だったから、ちょっと鳥肌が立った・・それが三つ目の「オオ〜」・・

 この一連のプレーには、この試合で完勝したトリニータが魅せつづけた強さのバックボーンが詰め込まれていました。

 「ココゾ!」の勝負フリーランニング・・脇目も振らず、とにかくタテのスペースへ全力で走り切る・・その動きに、徹底的に全力でいくという意志が込められているからこそ、守備にとってもっとも怖い「ボールがないところでの仕掛けの動き」になる・・そして、その「走り抜けるフリーランニング」を明確にイメージできているからこそ、確信のスルーパスがスムーズに送り込まれる・・フムフム・・

 たしかにトリニータは、仕掛けに十分な人数を常に掛けつづけるというわけではありません。それでも「ココゾ!」という状況での徹底した全力ダッシュ(オーバーラップやスペースへの走り抜けなど)は本当に「忠実」。メリハリの効いた守備と攻撃。だからこそ、チャンスの量と質でエスパルスを凌駕できた・・

 たしかにトリニータのディフェンスは忠実で強力。でも彼らは、決して「引いて守りながら必殺カウンターを狙う」というイメージではありません。あくまでも(チーム全体が)コンパクトに上下するなかで積極的なボール奪取勝負をイメージしつづけ、そして(味方の前後左右の人数&ポジショニングバランスを取りながら!!)チャンスを見計らって「徹底した攻撃アクション」を仕掛けるという全体イメージなのですよ。

 彼らについては、チーム全体に深く浸透した「徹底サッカー」という表現がもっとも適当だと思いますよ。そう、そこにこそ、シャムスカ監督のウデの本質があるのです。

 あっと・・。ハナシが前後するけれど、トリニータの強さのバックボーンについてつづけます。前述した「徹底的なフリーランニング」は、そのごく一部にしか過ぎませんからね。まあ、まず何といっても守備だよね。その象徴が、前述した、ホベルトのアクションだったというわけです。正確な判断力と、勇気ある「徹底した」実行力と継続力・・などなど。

 トリニータの守備は、本当によくトレーニングされていると思いますよ。その象徴は、何といっても忠実でエネルギッシュなチェイス&チェック。それ(要は守備の起点の演出)がうまく機能しているからこそ、次のボール奪取勝負や協力プレスもうまく機能する。そんな「考えつづけ、主体的に行動しつづけるダイナミックディフェンス」の象徴が、ホベルトだと思うわけです。

 何度あっただろうか。危ない(危なくなるかもしれない)状況を察知したホベルトが、(その時点でマークしていた相手を放り出してまでも!)全力で急行し、そこに立ち上りそうになった火を消してしまうシーンを。もちろんエジミウソンもしかり。このボランチコンビが展開する攻守にわたるダイナミックな自己主張プレーを観ているだけで入場料にお釣りがくるってなものです。

 とにかく、エジミウソンとホベルトの攻守にわたる全力プレーは、トリニータが魅せつづける「プレー姿勢」を象徴していると思いますよ。これからは、トリニータのことを「意志のチーム」と呼ぶことにしよう。意志さえあれば、おのずと道が見えてくる・・。そう、まさにトリニータのようにネ。

 やっている選手は、やり甲斐と楽しさに満ちあふれているに違いない。本当に素晴らしい。

 あっと・・ウェズレイと高松大樹が魅せつづけた実効あるポストプレーも秀逸だったね。特にウェズレイ。たしかに運動量は落ちたし守備もおざなり。それでも、後方からのタテパスを正確&パワフルにコントロールし、効果的に「次」へ展開してしまうウデは、代替は効かないと感じますよ。もちろん、シュートシーンでの危険度については語るまでもありませんよね。

 そして、若武者、金崎夢生。素晴らしい未来を感じさせてくれる若者じゃありませんか。私が言うまでもないけれど、彼が魅せつづける、攻守にわたる(ボール絡み&ボールなしに関係なく)全力で展開される「自信あふれる」クリエイティブプレーは、素晴らしいの一言です。「今の」彼が展開するプレーコンテンツは「良い選手」のスタンダードといっても過言ではありません。もちろん課題はまだまだ多いけれど、とにかく、明るい希望を感じさせてくれる金崎夢生に「乾杯!」です。

 さて、今回のナビスコカップ「でも」、次につながる可能性を秘めたチームに、自信や勝者メンタリティーのリソースとなる「タイトル」がもたらされました。今回は「意志のチーム」大分トリニータ。シャムスカ監督とともに、彼らもまた、しっかりと「次の」ブレイクスルーを果たしてくれるに違いありません。あっと・・リーグでも、優勝争いの主役としてしっかりと存在感を発揮しているんだっけ・・。失礼しました。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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