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2008_ナビスコ__レッズにはまだ時間が必要・・私はゲルト・エンゲルス監督のウデを信じています・・(レッズ対ヴィッセル、0-1)・・(2008年3月20日、木曜日)

「動き」が出てこないね〜〜・・。前半のゲーム展開を観ながら、そんなフラストレーションが沸き上がってきました。

 対するヴィッセルの活きの良いこと。もちろん、全てのスタートラインとなるディフェンスが彼らの勢いの源泉です。守備の起点を演出するための忠実なチェイス&チェック(それも常に複数がレッズ選手を全力ダッシュで追い込んでいた!)。そして、そんな忠実な汗かきアクションに連動しつづける味方の守備プレー(実質的なボール奪取勝負プレー)。複数の選手のアクションが美しく「有機的に連鎖」しつづけていました。

 それは、まさに、ヴィッセル選手の「パワフルな意志」の証明でした。選手一人とひりの「オレがやったる!」という意志がほとばしる。ボールを奪い返すための守備のプロセスでも、シュートを打つための攻撃のプロセスでも。心のなかで、ヴィッセル松田監督の意識付け(モティベーション=心理マネージメント)に拍手していました。

 またレッズは、勢いを盛り返した後半にしても、うまく決定的スペースを突いていけないなど、ヴィッセル守備ブロックを崩し切るところまでいけませんでした。相手の「眼前」で、個人勝負を主体にしたゴリ押しの仕掛けを繰り出していくばかりじゃ、ヴィッセル守備も怖くなかったに違いありません。

 たしかに前への勢いはあったけれど、ヴィッセル守備を振り回したわけじゃない。それは、ボールがないところでの動きが緩慢だからに他なりません。また、たまに最前線でパスレシーブの動きが出てきても、そこへタイミングよくタテパスが通るといったシーンも希でした。だから、危険なコンビネーションをスタートできない・・だからスペースを使えない・・だから攻撃の変化を演出できない・・。

 とにかく、前半から、パス&ムーブがあまりにも少なすぎると感じていました。パスを出して止まってしまうという緩慢シーンのオンパレードなのですよ。これじゃ、効果的なコンビネーションを繰り出していけるはずがない。誰も「コンビネーションの演出家」になろうとしないんだからネ。

 たしかに前への勢いが乗りはじめた後半には、危険なコンビネーションが出かかったシーンは何度かあったけれど、その「動き」が有機的に連鎖しない。局部的には「ボールがないところの動き」は出てくるけれど、それが「後方からの追い越しフリーランニング」を誘発しないのですよ。そんな単発のドリブル勝負やコンビネーションじゃ、相手の守備イメージを凌駕してしまうようなウラ取りなんて出来るはずがないし、ドリブルでゴリ押しするイメージが強すぎるから、中距離シュートとかアーリークロスといった「攻撃の変化」を繰り出すというアイデアも出てこない。フムフム・・

 やはり、まだまだ「ボールがないところでの動き」に対する「意志」が足りない。もちろん、シーズン開幕戦や第二戦ほどひどくはなかったけれど、それでも、まだまだ足りない(梅崎もそこそこ頑張ったけれど、それでも、守備も含めてまだまだ足りない!!)。その意志を活性化するためには、チーム全体が、一つのユニットとして(心理・物理の両面で!)活発に「動き」はじめることが必要なのです。だからこそ「ストロングハンド」としての監督のウデ(戦術&心理マネージメントの優れた能力)が必要になってくる。

 わたしは、ゲルト・エンゲルス監督を、プロコーチとして高く評価しています。知識はもちろんのこと、人心を掌握するパーソナリティー、チームを「一つの戦術で徹底させる」ドライブフォース(コーチング&ファシリテイト能力)など、彼のウデを高く評価しています。

 それでも、彼がチームをテイクオーバーしたのは本当に難しい状況だったから、心配の種は尽きない。彼が、チームの「和の雰囲気」のなかに、個人事業主のグルーブが優れたパフォーマンスを発揮できることに対して不可欠な「緊張感や闘う意志のエネルギー」を本当の意味で注入できるまでにはまだ時間が必要だと思うのです。

 難しい状況だと言ったのは、ホルガー・オジェック監督が解任されたときの「雰囲気」が良くなかったから。

 ある新聞が、「選手がオジェック監督を追い出した・・」などといったニュアンスの報道をしたわけだけれど、クラブマネージメントからは、そんな雰囲気を完璧に払拭してしまうような(誰もが、その報道ニュアンスが間違っていたと確信できるような!)大パワーの「告知や報道アクション」があったとは思えない。その報道は、ある意味で、レッズがプロ集団であることを完全否定されたも同然のニュアンスだったにもかかわらず・・。

 良いサッカーは、クリエイティブな「ムダ走り」の積み重ねでしか実現できない。だからこそ監督の本質的な仕事は「人間の弱さとの闘い」にあると言える。周りがサボりまくっているのに(そのような行為が安易にまかり通っているにもかかわらず)そんな雰囲気のなかで自分だけがリスクを冒して闘うのは難しいからね。だからこそ、チームのマインドを一つのベクトルへ向かわせる監督の「ストロングハンド」が必要なのです。

 そこには、外部の者には決して分からない錯綜した背景事情があるはずだから、ここでホルガー・オジェック監督の解任劇についてコメントしようとは思わない。それは「プロビジネスの日常」だし、昨シーズンにホルガー・オジェック監督が為した大きな成果を否定するモノじゃ決してない。

 ただし、前述したように、その解任劇の「雰囲気」が、プロにはあるまじきモノだったことだけは言っておこうと思った。そのこともあって、ゲルト・エンゲルス監督の就任記者会見でも、ことさらに(表面的な!?)チームの和を強調するニュアンスが伝えられたのかもしれない。監督の本質的な仕事が、それとはまったく「違うところ」にあるにもかかわらず・・。

 もちろんゲルト・エンゲルス監督は、そこで使われた「和」のニュアンスを、個人事業主で構成されるグループが、一つの目標へ向けて、前向きに(自分の主張に対する!)様々な妥協を繰り返しながら、全力で、汗かきプレーやリスクにもチャレンジしていくこと(闘う意志を高揚させていくこと)に対する「本音の合意」だと解釈しているはずだけれどね。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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