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2008_ナビスコ・・FC東京の素晴らしい「Moving Football」とヴェルディの前戦トリオ・・(FC東京vsヴェルディ、3-0)・・(2008年5月25日、日曜日)

今日中に済ませなければならない所用が重なっていたため、早朝に名古屋を発って帰京しました。でも、かなり時間を取られるはずだった用事だけれど、殊のほかスムーズに済ませることが出来たのですよ。だから、午後からナビスコカップをスタジアム観戦することにした次第です。もちろん、FC東京vsヴェルディ。

 最初は、自分の脳内データベースに彼らのチーム戦術の情報を蓄積しておくだけにしよう・・なんて思っていたのだけれど、ゲームを観ているうち、その興味深い内容に刺激されたこともあって、簡単にレポートをアップしておく気にさせられたというわけでした。

 いくつかのテーマがあるけれど、やはり最初は、ヴェルディーの強力トップトリオ。もちろん、フッキ、レアンドロ、そしてディエゴの三人です。前回のエスパルス戦(J第13節)では、ドリブル突破だけではなく、軽快なコンビネーションまで魅せてくれたからネ。その試合では、まさに「ノリノリ」のトリオだったのですよ。

 それは、エスパルスが積極的に仕掛けてきたからに他なりません。それに対して、城福監督率いるFC東京は、今野泰幸と長友佑都を日本代表に、そして梶山陽平をU23オリンピックチームに招集されていることもあって、よりソリッドに守備ブロックを組織してきました。

 城福監督は、新しい選手にチャンスを与え、彼らもしっかりと期待に応えてくれたと胸を張っていたけれど、基本のアイデアは、やはりヴェルディの前戦の三人に自由に仕事をさせないということだったに違いありません。そして、そのプランがうまく回りつづけた。そう、椋腹やブルーノ・クアドロスといったチャンスを与えられた選手が、十二分に期待に応えたのですよ。

 特に、ブルーノ・クアドロスの出来は秀逸だった。中盤ディフェンスで高い実効性を魅せつづけただけではなく、チャンスとあらば、最前線のスペースへ抜け出して決定的なシュートを打ってしまう。そう、まさに消えるプレー・・。セレッソ大阪時代は、最終ラインのリーダーだったけれど、城福監督は、彼のことを守備的ハーフとして機能させることをイメージしているらしい。ということは、ブルーノ・クアドロスは、FC東京のトゥーリオっちゅうことか!? あははっ・・

 「ブルーノ・クアドロスは、チャンスの臭いを嗅ぎ分けられる選手だと思う・・体力的な課題が解決されれば、相手にとってもっと危険な選手になるに違いない・・」。そう城福監督が言っていたように、前半のFC東京の決定機のほとんどに、後方からタイミングよくオーバーラップしてきたブルーノ・クアドロスが絡んでいたのですよ。

 そんな神出鬼没のブルーノ・クアドロス、中盤の底として守備の「穴埋めプレー」に徹する浅利悟、そして攻守にわたる究極の汗かきプレイヤー羽生直剛。その三人が組む守備的ハーフトリオが、攻守にわたって殊の外うまく機能しつづけたことが、この試合のキーポイントでした。あっと・・、それに前戦のエメルソンも積極的にディフェンスへ戻ってきていたしネ。

 そしてFC東京は、八人で守備ブロックを形作り、その構成員一人ひとりが、アナタ任せになったり、アリバイプレーに奔ることなく、見事なほど「主体的」に守備での仕事を探しつづけていたのです。まさに、有機的なプレー連鎖の集合体と呼べる、ハイレベルな組織ディフェンスでした。

 ヴェルディのディエゴやフッキ、はたまたレアンドロがボールを持ったら(もちろん彼らがパスを受ける前のタイミングで狙いを定めた)忠実なチェイス&チェックが掛かる。そして、その「守備の起点プレー」に正確に連動するように、周りの味方が「ボール奪取アタックや協力プレスの輪」を作り上げ、絞り上げていくのですよ。もちろんヴェルディが別のゾーンへボールを展開したら、すぐさま「新しい組織チェーンアクション」が起動し、忠実なチェイス&チェックが繰り返される。ホント、素晴らしかった。

 FC東京が魅せつづけた組織ディフェンスは、まさに、優れた守備意識の証といったところ。互いに使い使われるという(不確実な要素がテンコ盛りの)サッカーのメカニズムを深く理解し、その発想をベースにして主体的に(汗かきの)仕事を探しつづける選手たち。城福監督のプロコーチとしてのウデを感じる。

 この試合では、ヴェルディの前の三人が「マンマーク的」に抑制されたというよりも、より組織的に、彼らの機能性が抑制された・・といった表現の方が適当だと思う。そう、ヴェルディの才能が、FC東京が秘める優れた守備意識によって包み込まれて無力化されてしまった・・。そんな東京のクリエイティブ(創造的)でダイナミックな(力強い)組織ディフェンスに対して、心からの拍手をおくっていた筆者でした。

 ところで外国人トリオ。ヴェルディばかりを注目したけれど、FC東京のトリオ(ブルーノ・クアドロス、エメルソン、カボレ)だって勝るとも劣らない。まあ、個のチカラではヴェルディ・トリオに一日の長ありだけれど、攻守にわたる組織イメージでは、FC東京トリオの方が(この試合では!)数段上だったね。

 最後に、ブラジル人トリオの(攻守にわたる組織的な)機能性をアップさせるという課題についての柱谷監督のコメントで締めましょう。

 「もちろん、彼らと粘り強く話し合いながら課題を解決していくつもりだ・・ブラジル人はプライドも高いから、そんなに簡単な作業ではないが、とにかく彼らの才能を最大限に活かすために粘り強くマネージしていかなければならないと思っている・・そこでは、個人ブレーの良さを犠牲にすることなく組織プレーの質を上げていくという難しい仕事と対峙することになる・・要は、個と組織のバランスを高揚させていくということだ・・」

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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