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2008_北京オリンピック_その6・・「なでしこ」の、究極の組織プレーへのチャレンジはつづく・・(アメリカvs日本、4-2)・・(2008年8月18日、月曜日)

フ〜〜・・。私がサポートしていたドイツと日本が準決勝で負けてしまった。

 まあ、ドイツは、サッカーの内容で(結局は)ブラジルに凌駕されてしまったわけだけれど、アメリカと対峙した「なでしこ」は、攻守にわたる究極の組織プレーという志向する持ち味を存分に発揮したうえでの敗北だったから、ちょっと残念だった。

 ドイツだけれど、前半の終了間際に同点にされるまでは、彼らの「強み」の方が存分に存在感を発揮していた。フィジカルの強さと守備での忠実さによってブラジル選手の積極マインドを抑え込むドイツ。協力プレスを機能させることで、個の上手さという武器を効果的に活かそうとするブラジルの「個」にスペースを与えず、しっかりとゲームの流れを掌握していたのですよ。そして、そんな流れのなかから、エースのプリーツが先制ゴールまでも挙げてしまう。

 リーダした後も、忠実なチェイス&チェックや寄せの鋭さなど、相手にスペースを与えない効果的なディフェンスを積み重ねることでブラジルの上手さを「出させない」という、相手の良さを消すサッカーで主導権を握りつづけるドイツ。これは完全にドイツペースだ・・このまま(ドイツに対するトラウマ的コンプレックスに苛まれる!?)ブラジルの個の才能を抑え込んでしまうに違いない・・。

 そんな確信が芽生えてきた前半の終了間際のことです。ブラジルが、左サイドでの「足の裏を使った上手い「股抜き」から、ドイツ選手二人を置き去りにしてグラウンダーのクロスボールを送り込むのですよ。そして、こぼれたボールを、中盤のフォルミガがドカン!と同点ゴールを決めてしまう。そしてそこから(コンプレックスから解放された!?)ブラジルが、(マークが甘くなりはじめスペースを得たことで)どんどんボールを回して効果的なドリブル勝負につなげるなど、本来の実力を発揮していく。

 その後のドイツは、まさに顔色無しという状況に陥ってしまいました。サッカーの内容で、完全にブラジルに圧倒されてしまうのです。組織プレーでも個人勝負プレーでも。そして前後のバランスを崩して攻め上がったことで、カウンターからどんどん加点されてしまう・・。それにしてもブラジルのマルタとクリスティアーネの「個の才能」は本当に素晴らしかった。まさに男子顔負け。

 まあそれは、シャンハイの厳しい気候条件によって運動量が落ち、守備が甘くなったドイツに対し、スペースが空きはじめたことで(マークが甘くなりはじめたことで)ブラジルが個の才能を存分に発揮できるようになったということです。そしてブラジルが、本当の意味で「ドイツに対するコンプレックス」からの解放された。

 ところで、このゲーム展開って、今年のヨーロッパ選手権でのドイツ対スペインに似ていると思いませんか!? ある「刺激」をキッカケにして、それまでの「ドイツに対するトラウマ」から解放され、本来の実力を存分に発揮できるようになる・・。それこそ、サッカーが、不確実要素がテンコ盛りであるからこその「ホンモノの心理ゲーム」であることの証明!? フムフム・・

 さて日本対アメリカ。

 内容では、決して得点ほどに差があったわけじゃありません。いや、中盤のせめぎ合いでは、アメリカを圧するような時間帯も作り出した「なでしこ」だったのですよ。でも結局は、可能性の高いシュートチャンスを作り出すまでには至らなかった。

 特に最終勝負シーンにおいて、明らかに個のチカラが至らなかったのです。もちろん(このことは前回コラムで触れたけれど)最後まで組織パスで攻め切るような(相手とのフィジカルコンタクトが無い!)プロセスでチャンスメイクが出来ればよかったのだけれど、実際には、やはり難しい。だから彼女たちは、局面での個の勝負にも打ち勝っていかなければならなかったわけです。でも・・

 中盤での攻守にわたるせめぎ合いでは互角以上の展開を魅せる場面も多かったけれど、仕掛けプロセスの実質的な内容では、やはりアメリカに一日以上の長があった。

 前半41分の同点ゴールの場面では、(アメリカ側からみた)右サイドを、オライリーに「ブチ抜かれ」、余裕を持ったラスト・グラウンダー・クロスを通されてしまった。またその3分後の勝ち越しゴールを奪われた場面では、アメリカ左サイドバック、チャラプニーのドリブルを止められずに決定的シュートを許してしまった。

 まあ後半にアメリカが挙げた追加ゴールは偶発要素が多かったし、丸山と荒川が入ってからは、局面における個の勝負の「効果レベル」をアップさせられ、二点目ゴールも奪えたことで、ゲーム内容の評価ニュアンスとしては、決して圧倒されたということではなく、限りなく「惜敗」に近いものだったと考えています。

 もちろん、サッカーが、局面での「個のせめぎ合い」の積み重ねである・・という解釈に基づいたら、この試合についても、ゴール数に則った「差」を認めざるを得なくなるかも知れないけれど、日本が志向するのは「攻守にわたる究極の組織プレー」だからね。

 その「究極」といったニュアンスの底流にあるのは、常に数的に優位な状況を演出するという発想と、相手とのフィジカルコンタクトをゼロにするチーム戦術的発想なのです(決してフィジカルコンタクトを『避ける・逃げる』というニュアンスではない!!)。

 もちろん、究極とはいっても、大野や、後半から登場した荒川、丸山、もちろん澤穂希といった才能による個人勝負「も」組織プレーに効果的にミックスしていけるのが理想であることについては論をまたないけれどネ。

 アメリカと対峙した「なでしこ」は全力を尽くして闘い尽くしました。チームに対し、そして佐々木監督やチームスタッフの皆さんに対しても、世界に抗して強烈に日本サッカーをアピールしたという意味で、心から感謝している筆者なのです。

 さて、ということで、次は「銅メダル」をめぐってドイツと勝負することになりました。

 フィジカルと組織力のドイツ。厳しい闘いを強いられるでしょう。とにかく「なでしこ」には、最後まで、究極の組織プレーを志向し『強い意志に支えられた主体的な』チャレンジをつづけて欲しいと思います。

 ドイツ相手だからこそ、究極の組織プレーの実現にチャレンジしつづけることの意義は大きい。意志さえあれば、おのずと道が見えてくる・・のです。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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