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2008_U23日本代表・・最後の20分間に魅せたダイナミック組織サッカーの確立こそがメインテーマ・・(日本vsアンゴラ、1-1)(2008年3月27日、木曜日)

「そのポイントについては、アジアカップのときにオシムさんと何度もディスカッションを繰り返した・・まあ簡単に言えば、やはり日本には組織的な仕掛けが合っているということだ・・いや、組織的に仕掛けていくしかないとも言える・・豊富な運動量を基盤に、数的に優位なカタチを作りつづける・・それをベースに日本独自のものを作っていくというのがイメージターゲットだ・・」

 「たしかに組織的には日本に一日の長がある・・ただ局面での勝負では、凌駕されるシーンも多かった・・アジアカップでもそうだったが、個のチカラでは、やはり彼ら(サウジアラビア)に一日以上の長があると感じる・・もし反町さんが、そのことにアグリーの場合、その課題を克服していくためには、どのようなことが必要だと思うか・・」

 そんな私の質問に、反町監督が、冒頭のように答えてくれました。昨年の11月21日に行われたオリンピック最終予選。サウジアラビアとの決戦を「0-0」で乗り越えた後の記者会見でのことです。

 私は、アンゴラ戦を観ながら、当時の反町監督のコメントを反芻していました。たしかに、長友佑都を中心にしたサイドアタックは効果的だったし、後半から登場した(飛び級の)香川真司も大いに存在感を発揮した。また細貝萌も、中盤で、攻守にわたって全力の実効ファイトを展開した。それでも日本代表は、「個人勝負による崩し」というテーマではやはり限界があると感じていたのですよ。

 だからこそ、人数をかけて組織的に仕掛けていかなければならないわけだけれど、後半の半ばを過ぎるまで、どうも、後方からのサポートも含む全体的な「人の動き」が中途半端だったと感じられたのです。

 ボールはある程度動くし、最前線の豊田陽平や李忠成にクサビも入る。でも、ボールの動きがスムーズではないし、肝心のウラスペースへの飛び出し(要は、決定的な人の動き)もままならない。だから、仕掛けの流れが最終勝負シーンまでうまく「連鎖」していかない。そして結局は、寸詰まりの「人とボールの動き」が原因で、局面での個の競り合いに持ち込まれて潰されてしまうというわけです。

 ちょっと歯がゆかったですね。まあ、仕掛けに人数をかけないのは両チームに共通していたけれど、アンゴラは、強引なドリブルから吹っ切れた爆発ロングシュートをブチかますだけの「個のチカラ」を備えているから、後半の半ばを過ぎるまでの停滞したゲーム展開では、明らかにアンゴラの方が有利だったと感じられました。

 日本は、先制ゴールを奪ったにもかかわらず、その後もうまくテンポアップできないでいたしね。一点リードしたのだから、もっと吹っ切れてもよかったのに・・なんて歯がゆい思いにかられたものです。

 そんな日本オリンピック代表だったけれど、後半25分を過ぎたあたりから、彼らの組織的な仕掛けが風雲急を告げていきます。人とボールの動きが格段に増幅しつづけただけではなく、それによって、香川真司や長友佑都といったドリブラーが勝負を仕掛けていくのに有利な状況を作り出せるようにもなっていったのです(スペースでパスを受けられるからこそ、ドリブル勝負を仕掛けていくのに有利なカタチを演出できる!!)。

 確かにその背景には、アンゴラの(守備での)運動量が減退したこともあるだろうね。でも私は、日本オリンピック代表の若武者が、主体的に「意志レベル」を高揚させていったからに他ならないと思いたい。だからこそ、人とボールの動きが大幅にアップし、それがアンゴラ選手の足を止めた・・とね。

 そして日本代表は、流れのなかから、何度も、決勝ゴールを奪い取るチャンスを作り出してしまうのですよ。まさに、ダイナミックな組織サッカー。それこそ、日本サッカーのイメージターゲットじゃありませんか。

 ということで、試合後の記者会見は、「終わりよければすべてよし・・」といったポジティブな雰囲気に支配されていました。でも私のなかでは、全体的なゲーム展開に対する不満の方が先行していた。

 日本オリンピック代表は、主体的にプレーのテンポをアップさせたり落ち着かせたりすることに、もっと積極的にトライすべきだったと思うのですよ。もちろん難しいけれど、一度落ち着いたら、誰もリスクへチャレンジして行かなくなる(アリバイ的なプレー姿勢に逃げ込む!?)というのでは、決して世界に抗していけない。

 落ち着いた(安定した)ゲーム展開から、急にチーム全体が動き出すことで(相手にとっては唐突に!)統一された組織的なリスクチャレンジをスタートさせられる・・ということです。もちろんそこでは、強烈なリーダーシップも必要になってくるだろうけれどね(理想は、自己主張のぶつかり合いによるチーム全体の活性化!)。

 リスクチャレンジのないところには進歩もない・・。組織的な仕掛けを標榜する日本サッカーの場合、リスクチャレンジのニュアンスは、数的に有利なカタチを演出するアクションの(ボールがないところでのクリエイティブなムダ走りの!?)積み重ねということに限りなく近いものだとすることができるだろうね。

 その意味合いも含め、私は(この試合での)最後の20分間に魅せた、攻守にわたるダイナミックな組織サッカーを、主体的にゲームのなかに「散りばめられる」ことをイメージターゲットとして設定することには意義があると思っているのですよ。

 要は、チーム一丸となって積極的に仕掛けていく時間帯と、逆に、守備ブロックを安定させるような「落ち着く」時間帯を、確固たる意志をもってコントロール出来るようになるということです。もちろん、ものすごく難しい課題です。でも、だからこそやり甲斐がある。

 まあ最初は、沈滞した雰囲気を(心理的な悪魔のサイクルを)主体的にブチ破れるようになるという目標イメージを設定することになるでしょう。もちろん、消極ビールスに冒されたチームメイトに対する強烈な叱咤も含めてね(自己主張のぶつかり合い!)。

 ちょっと、アタマが回らなくなってきている。昨日も、バーレーン戦を朝方まで書いていたからね。そんなだから、あっちこっちにハナシが錯綜してしまったように感じる。でも、まあいいや。このままアップしてしまえ。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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