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2008_全日本大学サッカー決勝・・ホンモノの「バランス感覚」と、相手の「心理コントロール」・・法政vs早稲田(0-2)(2008年1月13日、日曜日)

この試合に限ったことかもしれないけれど(聞くところによれば、リーグでの早稲田は法政に連敗をつづけていたとか)、内容的には、明確に早稲田に一日の長がありました。特に攻撃において・・。

 両チームとも、守備意識の高さも含め、組織ディフェンスという視点では、よくトレーニングされている。だから、局面でのつぶし合いの応酬といった展開になるのも道理だと思っていました。まあ、タテパスを受けた状況で相手のマーク(プレッシング)を上手くかわせない(いなせない)というのが現実だろうから、ミッドフィールド局面での「潰され合い」っちゅう方が適切な表現かもしれないけれどね。

 そんな展開のなかで、ツボにはまったときの早稲田が、ハッとさせられるほど素早くスムーズな「人とボールの動き」をみせていたのですよ。要は、ボールがないところでの動きに「しっかりとした意志」があるということです。だからこそ、うまくスペースを使えていた(相手守備ブロックのウラスペースを突けていた)。そして、そんな展開から、直接シュートを放ったり、タイミングよく右サイドの松本怜(ベストMF受賞)まで大きくボールを動かし、そこから危険なドリブル突破を繰り出したりする。なかなか危険な早稲田なのです。

 とにかく前半は、「潰され合い」のなかでも、まあ、早稲田のペースかな・・と言えるようなゲーム展開だったのですよ。それが・・

 後半の立ち上がり2分というタイミングで、唐突に、法政が右サイドを完璧に攻略して絶対的チャンスを作り出したのです。鋭いタテパスが、右サイドのタッチライン沿いスペースへ抜け出した選手にピタリと合い、そこから持ち込んで折り返されたラストクロスを、10番のエース市川雅彦がダイレクトシュートを放つ。それは、まさに「どうしてゴールにならないの?」といった絶対的チャンスでした。

 一瞬、その「刺激」がゲームの流れを大きく転換させるはずだ・・と思ったわけですが、その直後の後半5分には、(例によって)ダイナミックな勝負ドリブルで右サイドからセンターゾーンへ切れ込んだ松本怜がソフトにセットアップした横パスを、走り込んだ兵藤慎剛がダイレクトで法政のゴールへ叩き込んでしまうのです。早稲田の先制ゴール。そしてその5分後には、コーナーキックから、ヘッドで流したボールを3番の藤本渉が蹴り込み、早稲田のリードが2点に広がってしまう。

 わたしは、勝負ありかな・・なんて安易に思っていたのですが、さにあらず(然に非ず)、そこから何度も「神様ドラマ」が本格的にスタートしそうになるのです。法政が、レベルを超えたエネルギーの逆襲を繰り出しはじめたのです。

 要は、守備での組織プレスの勢いと、その後の攻撃における「ボールがないところ」でのプレーの量と質が大幅に高揚したということです。リスキーなチャレンジプレーのオンパレード。そこから早稲田は、何度も、決定的ピンチに陥ることになります。そんな展開をみりゃ、誰でも「神様ドラマ」を期待するよね。でも結局は、何事も起きることなくタイムアップということになってしまった。

 もちろん私は、あんなにダイナミックな仕掛けができるんだったら、どうしてもっと早い段階からそれにチャレンジしていかなかったんだよ!!なんて文句タラタラです。一発勝負という「考え方のバックボーン」を前提にしても、もっと積極的に仕掛けていけたはずだと思っていたのですよ。

 いつも書いていることだけれど、仕掛けていった方が負ける(危険なカウンターを喰らう=味方が全力で戻ってこない≒体力的に戻れない!?≒サボッて戻らない!?)という「勝負の構図」を意識し過ぎたゲーム戦術を採るようなチームは、決して発展しないということです。リスクチャレンジのないところに発展はなし・・。

 攻撃でも守備でも、リスクを取れば、人数的なバランスやポジショニングバランスなど、どこかでバランスが崩れるものです。でも、それがなければ「サッカー」になりゃしない。サッカーでは「バランス感覚が大事」だというけれど、まさにそれは、クリエイティブな発展サッカーをするためには、危急の状況で、様々なバランスを、素早く、効率的に「再構築」できることが要求されるという意味なのです。

 もっと言えば、だからこそ、ミッドフィールドに、リーダーシップに長けた、本当の意味での「バランサー」が必要になるということ。グラウンド上での「監督のエクステンションハンド(見えざる右腕)」としてのリーダーがね。

 そんな、積極的にバランスを崩していくことへの「前向きな取り組み」こそがサッカーを発展させるのですよ。もちろん、積極的にバランスを崩していくことで、相手のプレーイメージを悪魔のサイクルに陥れることができれば最高ですよ。そんな、相手のプレー姿勢を、受け身で消極的なモノへと落ち込ませてしまう心理コントロールこそが(相手に状況を誤認させることで、逃げの心理ビールスを繁殖させることこそが!)究極の目標イメージということですかね。

 たしかに早稲田は、俯瞰(ふかん)した実質的なサッカー内容としては、この勝利を「順当に勝ち取ったモノ」だと胸を張ってもいいでしょう。とはいっても、後半になって何度も守備ブロックのウラを突かれたり、押し込まれつづけたり(全体的に受け身に下がり過ぎてしまう!)などといった危険なシーンがつづいたからネ、そんなネガティブ状況が膨れ上がらなかったというラック(幸運)に恵まれたことも否めない事実でした。

 最後に大榎監督のコメント。なかなか面白かったですよ。その骨子だけを短くまとめましょう。

 ・・リーグでは、得点は53ゴールあったが、失点も29あった・・昨年、駒大に1-6の大敗を喫したことが(問題点の掘り起こしと改善のための!?)全てのスタートラインになった・・そして守備意識を引き上げるという課題を設定した・・そのことで失点が少なくなったことが、今回の優勝に結びついたと思う・・

 ・・ポゼッションという発想を導入したが、そのことで前へ行かなくなってしまった・・だから、しっかりとボールをキープしながらも、タテにチャンスがあれば、積極的にタテへ仕掛けていくというイメージを植え付けることに取り組んだ・・

 ・・個の判断を大事にする・・ボールホルダーが主体的に考え、行動することの大事さをしっかりと理解させた・・それこそが個の発展のベースになる・・

 ウチはゾーンで守るのが基本(マークの受け渡し)・・ただし勝負シーンでは、しっかりとマンマークをつづける・・そんなメリハリの効いた守備をしっかりと実行することに努力した・・などなど・・

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(二宮清純さんが、昨年のベスト3に選んでくれました・・記事を参照)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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